学校の水泳授業用として男女のデザインを同一にした「ジェンダーレス水着」。胴体から手首まで覆われた上着のまま泳ぐことができる

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 「LGBTQ+」に配慮したジェンダーレス制服が注目されている中、学校の水泳授業用として男女のデザインを同一にした「ジェンダーレス水着」が開発された。学校用水着大手「フットマーク」(本社・東京)による「男女共用セパレーツ水着」で、今夏に発売される。性別を意識せずに水泳授業に参加でき、従来の水着に対する不安を払しょくする狙いがある。同時に、ジェンダーの問題に限らず、「体形や肌をあらわにしたくない」という生徒の声も反映されている。選択は自由であり、あくまで選択肢の一つとなる。開発担当者にその背景などを聞いた。

【写真】1970年から2022年まで 変遷するスクール水着の歴史

 「男女共用セパレーツ水着」は長袖の上着とハーフパンツの上下に分かれたセパレーツ型で、体形の違いが目立たないデザインになっている。上着は、胸、腰、尻など男女の身体的な違いが表われる部位をゆったりしたシルエットになるような素材で調整。必要な人のためには「パッド」が差し込めるポケットもある。パンツは体に密着しない生地を使用。小売希望価格はサイズによって6380円から6820円。今年度に3校が導入予定で、来年に向けて10校が導入を検討中という。

 LGBTQへの理解や関心が高まり、学校現場でも「ジェンダーレス」への取り組みが進んでいる背景を受け、同社は「スクール水着においては、昭和から平成、令和へと男女それぞれ形の変化はあるものの、男女別のデザインが根強く、性差による違いが露わになるようなものが多いのが現状」と指摘。性別ごとに違う形で、男女で兼用できる上下セット水の着がないとして、「男女同じ形にすることで性別による水着の選びにくさを払拭し、内面と外見で性の異なる生徒も迷わず選び着ることができるジェンダーレス水着を開発した」と経緯を振り返る。

 一方で、開発の背景には「水着になって体形や肌を露出すること」に抵抗を覚える生徒の声もあった。

 同社は「2010年頃から発売を始めた長袖や半袖型の上着は主に紫外線対策を目的としていますが、露出を軽減したいという理由で着用する生徒も増えていました。15年に実施した中学生との商品企画で、男子生徒がデザインしたものは上下に分かれ、パンツは足首まである、肌の露出を控えた、まるでダイバーが着るような形の水着でした。実は男子も肌を隠したい、体形が見えてしまうのは恥ずかしいという思いからでした」という。

 体形にコンプレックスがあったり、何らかの理由で皮膚などを見せたくないという男子生徒の場合、長袖で上半身全てを包む上着のままでいられることで、その不安が解消される。

 現場からは、どのような声が届いていたのだろうか。

 同社の担当者は、よろず~ニュースの取材に対して「これまでのスクール水着の変遷から見てもそのような声はありました。女子は股下が長くなる傾向にあり、ラインをあらわにしないキュロットのような商品を企画したこともあります。また、男子生徒の中でも『肌の露出を控えたデザインがよい』という声もあり、性別問わず同じような悩みがあると感じるようになりました。ここに来て、水着選びに悩む問い合わせのご相談が学校や販売店を通じて個別にポツポツとくるようになり、このたび開発に至りました」と明かす。

 スクール水着を取り巻く変化について、同社は「以前は学校生活における制服や水着などは『指定され、着用を強制されるもの』という認識が当たり前でしたが、近年はスクール水着においても自由化が進み、地域や学校によって『自由に選べるもの』へと認識も変わりつつあります。実際、紺色であれば指定はないという学校も全体の半数くらい存在しており、選択肢が増えています。従来の水着と男女共有水着を選択できる形にする学校が多いとのことです」という。

 その上で、担当者は当サイトに「導入、もしくは検討いただいている学校の背景としては、基本的に義務化(指定)ではなく、選択肢の一つとしてジェンダーレス水着があります。学校を通じてとは限らず、販売店などで購入するケースもあります。いずれにしても水着は自由に選び、購入してよい前提です。選択権は生徒自身にあります」と補足した。

 ジェンダーレス制服の場合、その象徴的な存在となる女子生徒のスラックスは、性差への問題意識だけでなく、防寒や動きやすさといった利便性など多様な選択理由があった。スクール水着にも「選択肢の拡大」という流れが波及している。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)