親が長男を優遇する「長男教」によるモヤモヤ。生まれる順番で学歴や所得に差がつき、大人になっても格差が続くという。

【映像】「財産は全てお兄ちゃんに」長男教を描いた漫画

 ニュース番組『わたしとニュース』では、この「長男教」の実態について、エコノミストの崔真淑氏とともに深掘りした。

◾️教育や環境で優遇される「長男教」の実態

 きょうだいなど家族構成が人の幸福に与える影響について研究している拓殖大学政経学部の佐藤一磨教授によると、「長男教」は研究者の間で「長男プレミアム」と呼ばれているそうだ。要素としては「親が長男に多くの教育費や時間を投資して、他のきょうだいよりも勉強や習い事など様々な環境が優遇される傾向があり、現在も依然として存在している」という。

 実際にそういった経験がある人はどれくらいいるのか。街の人に聞いた。

「お金とか自分が一番かけてもらった。学費とかも妹や弟・2番目3番目になると入れる塾とか値段が違ったりとかあった」(長男・30代)

「(長男が優遇される)傾向はある。よく言われるのが写真の枚数。長男は子どもの頃の写真の枚数が圧倒的に多くて、下の次男・三男はだんだん少なくなる話は聞きます。(Q.ご自身は?)多分そうだと思います。そういう傾向はある。第一子なのでそう扱われるのは当然というか普通」(次男・30代)

 長男や次男なりに感じ取る環境の違いはあったものの、きょうだいの仲は良いという。長男教を感じるのは実体験のほかにも…。

「自分たちの家族の中で感じることはなかったけど、部活の応援の場で息子を溺愛するお母さんみたいなのは…。女の子の子どもを持つお母さんよりは感じるかも」(長女・20代)

「例えば友達が結婚したりして、旦那さんが長男だとお母さんの愛情が大きくてトラブルになっていたり、それくらいの感覚はある。干渉って言ったら言い過ぎですけど、そういうことが起きる悩みは女子会の話題としては出たり出なかったり…。(Q.家庭の中に親が入ってくる)そんな感じ。(長男が)大事なんだねみたいなのが伝わってくる」(長女・30代)

 この問題について、崔氏は自身の実体験を交えて次のように語った。

「私は地方出身の長女で、長男と年が6歳離れている。なので6年間は蝶よ花よだった。長男が生まれた瞬間に全てが変わったことは今でもすごく覚えている。親の視線がそっちに行って、私はどこに行くのだろうと当時思ったので長男教はすごくわかる」(崔氏、以下同)

「長男には絶対に言わないのになんで私には言うんだろうとか。それを誰にも相談できない状況だと、『自分が悪いんだ』という方向にいってしまう。『私がダメな子だからお母さんからひどいことを言われてしまうんだ』となっていた。いろいろな人に相談などもして、大人になってからは、客観的にお母さんも完璧じゃないからそういう偏りは起こるよねという目線で見られるようになった」

 さらに、親族の中で長男教の連鎖を見たという崔氏は、これからの世代で止めなければならないと警鐘を鳴らす。

「実際親族の中で見ていてすごく感じたのは、長男教で『長男、長男、長男』と言っていたおばあさんがいて、最終的に困ったことがあった。それを見ていた娘さんも『そうならないようにね』と周りから言われていたのに長男教になって、同じことが起きているのを見た。これからの世代で止めなきゃいけないとすごく感じた」

◾️孫の代まで続く格差…「距離を置く」という選択肢

 孫の代になっても長男優遇が続くケースもある。進学に際して、長男は好きな大学を受験できたが、長女は「お金がかからない地元の国立なら」という条件付き。その後、長男と長女に子どもが誕生した際、長男の子どもにはお祝いがされる一方で、長女の子どもにはお祝い会が開催されず、お祝い金にも差があったという。

 この事例について、崔氏は次のように語った。

「ものすごく傷つくし、私も全く同じことがあった。でも、同じことが起きた時にすごく感じたのは、私自身も愛されたい気持ちがあるけど、愛してくれる家族がいるし、そこから愛をいただこうとか思わずに距離を置いた方が自分の心は平和なのではないかと思った。だからこういうことが起きた時に、話し合って、全く違う世界線に生きているなと感じたら、距離を置くのもすごく重要なのではないか」

 また、世代を超えて孫にまで影響する切ない現状については「孫たちの成長にも決して良くない影響は出てくるだろう」と指摘した。

◾️同居と相続を狙う長男…「終活は早い段階から」

 さらに、同居と相続を狙う長男のトラブル事例もある。長男(40代)は父親に反発して実家を飛び出したが、裏で母親が送金をしていた。父親が病気を患った際は母親と次女が看病を担当。そんな中、長男が実家に出戻った。そして父親が他界すると、長男が葬式などを取り仕切って母親から感謝される構図になったという。その後、父親の遺産問題が浮上し、長女と次女の説得で母親が相続することになったものの、今後長男と揉めるのではないかと不安を抱えているそうだ。

 このケースに踏まえ、崔氏は次のように語る。

「こうしたケースもよく聞く。何もしなかったのに、戻ってきて財産を総取りっていう…。いろいろな人のケースを見ていて思うのは、やはり遺産や相続の話は、親や祖父母に『お願いだからちゃんとして』と言っても、自分が早く亡くなってほしいと思われてるのかなとか。自分自身も、もし今の時点で家族から言われたら『何言ってんの』ってなると思う。だから自分自身の死についても自分で考えるしかないと思うところもある」

「ただ、自分の終活は早い段階から考えておくべき。知り合いにすごくお金を持っている経営者の方がいて、まだ50代だが、常に遺言書を書いていると言っていて、そうして準備したものを常に持っておくのもいいなと思った」

(『わたしとニュース』より)