夜道の「目潰しライト」なぜ急増? LEDだけじゃない「眩しさ」の複合的要因とは(画像はイメージ/PhotoAC)

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夜道の「目潰しライト」なぜ急増? LEDだけじゃない「眩しさ」の複合的要因とは

 夜間の運転中、対向車のヘッドライトが「眩しい!」と感じる瞬間はありませんか。

 単にLEDライトが普及したからだけではありません。そこには、クルマの形状変化や「ハイビーム原則」というルールの変更、さらに意外な「機能の落とし穴」など、複数の要因が絡み合っていました。

【画像】ええぇぇ! これが「“まぶしい車”」が増えた理由です!(20枚)

  ドライブ中、対向車の強烈な光に思わず目を背けた経験をした人は少なくないかもしれません。

 この不快な眩しさは「グレア現象」と呼ばれ、深刻な事故を誘発する恐れもあります。

 近年、特に「ライトが眩しい」との声が増えていますが、その犯人は単に「明るいLED」だけではないようです。

 近年、夜道ですれ違うクルマのライトが以前よりも強烈に感じる背景には、まずハードウェアの進化が挙げられます。

 かつて主流だったハロゲンランプは暖かみのある黄色っぽい光でしたが、2000年代にHID(ディスチャージ)が登場し、現在ではLEDが主流となりました。

 LEDヘッドランプは、フィラメントを発熱させるハロゲンとは異なり、素子が直接発光するため、エネルギー効率が良く非常に明るいのが特徴です。

 さらに色温度が高く、白く鋭い光を特定の方向に集中して照射する特性があるため、対向車からは突き刺さるような眩しさを感じやすくなっています。

 また、クルマの形状トレンドの変化も見逃せません。かつてはセダンが主流でしたが、現在はミニバンや、悪路走破性を高めたSUVが新車販売の上位を占めています。

 これらの車種は車高が高く、必然的にヘッドライトの搭載位置も高くなります。

 そのため、車高の低いセダン軽自動車のドライバー、あるいは歩行者の目の高さに光が直撃しやすくなり、「眩しい」と感じる頻度が増加しているのです。

 また「ライトそのもの」の変化に加え、「使い方のルール」が変わったことも、眩しいクルマが増えた大きな要因です。

ルールの変化も要因?

 2017年の道路交通法改正に伴い、「交通の方法に関する教則」が変更されました。

 これにより、夜間の走行は「ハイビーム(走行用前照灯)が原則」という方針が明確化。

 その意図として、ハイビームはロービーム(すれ違い用前照灯)より照射範囲が広いため、歩行者の早期発見につなげることが挙げられます。

 この方針転換により、教習所などでもハイビームの使用を積極的に指導するようになりました。

 しかし、ここには重要な条件があります。対向車や先行車がいる場合、あるいは交通量の多い市街地では、ロービームに切り替えることが義務付けられています。

 問題なのは、ハイビームのまま漫然と走行し、対向車が来ても切り替えを忘れてしまうドライバーが増えている可能性です。

 これを怠ると「減光等義務違反」となり、悪質な場合はあおり運転とみなされるリスクも。

信号待ちの対向車…めちゃ眩しいコトも(画像はイメージ/PhotoAC)

「原則ハイビーム」という言葉だけが独り歩きし、こまめな切り替えというマナーが追いついていない現状もあるようです。

 さらに、最新のクルマに搭載されている便利な機能が、皮肉にも眩しさを助長している側面も。

 現在販売されている新型車にはオートライトの義務化に加え、自動でハイ・ローを切り替える「オートハイビーム」などの機能が普及しています。

 これにより、ライト操作を「クルマ任せ」にするドライバーが増えましたが、システムによる対向車の検知が遅れたり、状況によっては反応しなかったりすることで、意図せずハイビームのまま相手を幻惑してしまうケースがあります。

それでも眩しい…メカニカルな要因も?

 また、意外と知られていないのが「光軸(こうじく)」のズレです。

 ヘッドライトの角度は、荷物をたくさん積んだり、後部座席に人が乗ったりして車体後部が沈むと、相対的に上を向いてしまいます。

 これを補正するために「レベリング機構」という調整機能がついていますが、現行車でも一部のモデルやグレードには手動のダイヤル式が採用されています。

 本来は積載量に応じてドライバーが調整すべきものですが、この機能の存在自体を知らないユーザーも多く、光軸が上を向いたまま走行しているケースも少なくありません(※2027年以降、新型車へのオートレベリング機構の義務化が予定されています)。

 くわえて、ヘッドライトのレンズ汚れによる光の乱反射や、ドライバー自身の加齢による水晶体の濁りも、眩しさを強く感じる要因として指摘されています。

ハンドル周辺にヘッドライトの角度を調整するダイヤルが付いている(画像はダイハツ・ムーヴ)

 信号待ちでのライト操作にも変化が見られます。

 以前は対向車への配慮として消灯(スモールランプのみ)する慣習がありましたが、最近は「安全確保」「つけ忘れ防止」の観点から、点灯したまま待機するクルマが増えました。

 オートライトの普及により、そもそもスイッチを触らない習慣が定着しつつあることも影響しているのかもしれません。

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 より明るい光源、人気のSUVスタイル、そして安全のためのハイビーム原則。

 これらすべては本来、自動車の進化や安全のためにあるものですが、それが組み合わさることで「眩しい」という新たなストレスを生んでいます。

 技術が完全に自動化される過渡期にある今、ドライバーは、周囲の状況に合わせて手動で操作する「配慮」と「想像力」が、これまで以上に求められているのかもしれません。