寺島実郎氏が分析! 孤立するロシア【ウクライナ侵攻後の国際秩序】はどうなるのか?
しかも、ロシアの産業構造にも弱点があります。プーチンは22年間もロシアを率いてきていますが、彼は産業を育成してこなかった。
結局、ロシアの産業力といったら輸出の85%が一次産品で、しかも〝モノカルチャー国家〟という言葉で言われるように、石炭も含めて、石油やLNGの輸出など、化石燃料の輸出で食いつないでいる姿が見えてくるわけです。
─ 豊かな国のように見えて、経済の実態は脆いと。
寺島 そうです。プーチンは2000年の沖縄サミットで初めて国際舞台に登場したのですが、その時、メディアでは「プーチン Who?」という言葉が使われていました。 要するに、当時のロシアは経済的にもヨレヨレで、こんな若者がロシアを引っ張れるのか、と疑問を持ちました。
ところが、その後、プーチンに追い風が吹いてきた。これは21世紀に入って最初の10年間のエネルギー価格の動きを見るとわかります。
2000年初のWTIは25ドル60セントでした。それが08年、忘れもしない洞爺湖サミットの年ですが、1バーレル=145ドルまで跳ね上がった。この右肩上がりの原油価格の高騰が、石油モノカルチャーのロシアを救ったわけです。
わかりやすくいえば、9.11が起きて、一番得をしたのはロシアだったというようなことなのです。
「9.11」を機に
エネルギー大国に
─ 9.11以降、イスラム原理主義の資金源を断つ目的から、中東への石油依存度を下げたことが、相対的にエネルギー国家としてのロシアを押し上げたと。
寺島 そうです。
プーチンは、その間、エネルギー産業の国有化を進めました。ソ連邦解体後、ロシア経済は建前上は市場化して民主化したということになっていますが、エネルギー産業を国有化し、それを追い風にして長期政権の布陣を敷いていったわけです。
そして、政治で経済を支配し、軍事大国であれば、国際的にも政治的な圧力をかければ、自分たちの思いどおりになるという考えを強めていく。しかし、そう思ったところに、プーチンの大きな誤算があったというわけです。
それは、KGBという政治の権力を謀略によって展開していくことを習性とした人間の性(さが)とも言えます。
さらに、プーチンはハードパワーしか理解できず、ソフトパワーの怖さを理解できなかった。
相互依存の過敏性という言葉がありますが、経済とは世界の相互依存のネットワークに成り立っている。プーチンは今、そのことのバックファイヤーを思い知らされている。それを、まず正しく認識しておく必要があります。
─ プーチンの誤算には、まずロシア経済の弱さを自覚していなかったと。
寺島 そうです。
それから、もう1つがロシアの孤立ということです。
先日の国連決議で、ロシア非難決議が成されたときの結果は、141対5で棄権が35でした。決議に反対した5とは、ロシア、シリア、ベラルーシと北朝鮮、それにエリトリアという、エチオピアの北にある国です。早い話がロシアの息のかかった国々です。
ここで、わたしが注目するのは35の棄権です。中国やインドの棄権が指摘されていますが、わたしが一番重要だと思っているのは、カザフスタンやウズベキスタン、アゼルバイジャンなどCIS(独立国家共同体=加盟国9カ国)の国々、要するに友好国というよりも同盟国の国々の動向です。
ソ連邦崩壊後、ロシアを中心に今後どうしていくかを考える中で立ち上がったのがCISです。
