1991年12月のソ連邦消滅宣言を受けて、ロシアが中核となってCISを創立させたわけですが、それは相互の領土保全であり、核の共同管理であり、集団安全保障の仕組みだったわけです。

 ところが、その仲間であるウクライナは微妙な立場にあって、2018年にペトロ・ポロシェンコという当時の大統領が、CISの関連組織から代表者を引き揚げたわけですが、ウクライナはCISから正式に脱退したわけではない。それなのに、かつてソ連邦の一員であり、CISの一員であったウクライナにこういうことをするのかと、一番震え上がったのがベラルーシを除くCISの加盟国だということです。

 そういう意味合いにおいて、注目しなければいけないと思うのはロシアの親衛隊、あるいは一番の同盟ゾーンであるCISの独立国家共同体の国々が、国連のロシア非難に「反対」ではなくむしろ「棄権」に回ったということが、ロシアがいかに孤立しているかという現実を象徴しているということです。

 CISの加盟国は何もロシアにアゲインストしているわけではなく、怯えながらも様子見に出ています。

 つまり、ロシアを支持していない、というところにロシアの孤立を見るわけです。


ロシアを経済的にも
産業的にも飲み込みんでいく中国

 ─ 中国がロシアとウクライナの仲裁の可能性を示唆していますが、中国の動きはどう解釈すればいいですか?

 寺島 外交において、本当にすごいのは中国で、中国の〝微妙性〟に気を付けなければいけません。

 ここへきて、中国の王毅外相が「仲介も厭わない」と言い始めている理由でもあるのですが、中国は沈黙しているかのように見せているけれども、内情をみると本当はものすごく微妙なものがあります。

 ソ連邦が崩壊したとき、ウクライナという国は世界第3位の核保有国でした。要するに、ソ連から独立したものの、核をたくさん持っていたのです。それを国際社会の合意形成でウクライナに核放棄させました。

 その核放棄のプロセスこそ、国際社会では、北朝鮮の核放棄のモデルケースになるだろうと言われています。

 その核放棄のプロセスの中で、1994年に、あくまでも理論的建前の話ですが、中国がウクライナに「核の傘を提供する」という約束をしているのです。

 このあたりの中国とウクライナの極めて緊密な関係を見抜いておかなければいけない。

 というのは、『遼寧(りょうねい)』という名前の中国の航空母艦はウクライナが中国に売ったものです。それぐらい密な関係を持っているわけです。

 さらに、2011年には、中国とウクライナは、いわゆる戦略パートナーシップというものを結んでいます。なぜかというと、ウクライナは中国がグローバルに進めるパートナーシップの『一帯一路』の中核点だからです。現に17年にウクライナは『一帯一路』に参加を表明しました。

 要するに、戦略パートナーとして、もし例えばロシアがウクライナに対して核による恫喝をしたら、本当は約束事として、中国がウクライナを守ってやらなければいけない立場なのです。

 ─ それほどの親密な関係でありながら、中国はロシアとの関係も維持していると。

 寺島 はい。中国は現段階で、ロシアとの親密度を高めている状況にあります。

 中国はしたたかな戦略思考を持っていますから、ここでロシアへの影響力をむしろ高めて、恩を着せようとしている。ユーラシアのダイナミズムを考えたらわかりますが、中国がロシアを経済的にも産業的にも飲み込んでいく勢いの中にあるわけです。