160キロ超えを連発する大谷と、突出したストレートを持つ藤川

 10月5日、日本ハムの大谷翔平が公式戦自己最速となる、162キロを記録した。今季最後のリーグ戦登板となった大谷は、当初から短いイニング限定だったこともあり、立ち上がりから全力でのピッチング。先頭の銀次に対する2球目に、いきなり162キロを投げ込んだ。

 クライマックスシリーズへの調整の意味合いが強く、2イニングでマウンドを降りた大谷だが、結果的に12球の160キロ超えを記録。改めてポテンシャルの高さを見せつける登板となった。しかし一方で、銀次には162キロをファールされ、榎本にはヒットを打たれている。球速だけでは抑えられない、そんなプロの底力も同時に認識させられたシーンだった。

 今季、大谷が何度も自己記録を塗り替えていったことで、過去の球速ランキングを目にする機会も増えてきている。スポーツコメンテーターの飯田哲也氏に、自身が対戦した投手の中で、印象に残っている投手を聞いた。

「僕が対戦したことがある投手だと、伊良部や与田剛さんのストレートが印象に残ってます。ただ、突出していたのは、やはり藤川球児ですね」

 伊良部秀輝氏は1993年に、当時日本人最高となる158キロを記録した。与田剛氏はルーキーイヤーの1990年に157キロを記録。どちらも球界を代表する剛速球投手だ。そして現在シカゴ・カブスに所属する藤川球児は、日本球界では最速156キロと、2人の速度を上回ったことはない。なぜ、藤川のストレートが突出した印象を残しているのだろうか。

「全盛期の藤川は、もう本当にボールに当たる気がしませんでした。タイミングが取れないんです。よく“ボールがホップする”という表現をしますが、まさにそれが当てはまりました。

 技術的には、ボールをリリースする最後の最後まで指先に力が入っていて、ギリギリまで長く持ってボールを押し出して投げています。そして腕を縦に振り、リリースポイントでボールを切るように投げてくるので、スピン量が圧倒的に多かった。

 藤川のストレートは高めに来ることが多くて、一般的には高めは危ないと言われますが、彼の場合は高めからさらに浮き上がってくるイメージで、打てる気がまったくしませんでした」

「大谷のストレートはまだまだ成長の余地がある」

 藤川が阪神在籍時、女房役を務めていた矢野燿大氏は「球児のストレートは変化球ですから」という名言を残している。一般的なストレートとは異なり、浮き上がるかのような印象を打者に与えていたからだろう。

 飯田氏は、大谷のストレートについてもこう語っている。

「大谷は身長がありますし、ストレートを低めに投げ込むことが多いので、角度が付きます。打者からすると、どれだけ速くても低めにくると、当てることはできると思います。ただそれでも、これだけの球速を当たり前に投げられるのが、どれほど凄いことか。

 大谷の投球に我々もファンも少し慣れてきた部分はあると思いますが、彼はまだ高卒2年目の選手なんですから」

 大谷は今季、投手として24試合に登板し、11勝4敗、防御率2.61と先発としてチームトップの成績を残した。155回1/3を投げ規定投球回にも達し、奪三振は179。そして打者としても、打率.274、10本塁打、31打点と、二刀流として圧巻の数字が並ぶ。飯田氏は続ける。

「球速は圧倒的ですし、変化球もどんどん良くなってきている。制球力も、かなり改善されてきました。今後も研鑽を続けていけば、近いうちにダルビッシュと肩を並べるような存在になると思います。そしてストレートも、まだまだ成長の余地があります」

 観る者の度肝を抜き、プロ野球界の一般常識をことごとく突き崩してきた大谷翔平。彼がもし、藤川球児のようなストレートの球質を手に入れたとしたら……。そんな空想も、大谷であれば可能になってしまうのではないかと思わせてしまう。そして飯田氏は、最後にこう付け加えた。

「繰り返しますがまだ2年目ですし、今後、日本を背負って立つ投手になるのは間違いありません。紛れもない“日本の宝”ですから、上手く育っていって欲しいですね」

飯田哲也プロフィール
スポーツコメンテーター。1968年東京都出身。1987年に捕手としてヤクルトスワローズに入団、主に外野手としてヤクルトの1番バッターを長く務めた。2005年からは2年間楽天イーグルスに在籍。2006年に現役を引退すると、古巣ヤクルトで2013年まで守備・走塁コーチを務めた。
飯田哲也オフィシャルブログ