精液を飲み込むことで「一人前の男性」になれる…「同性愛」がルール化されたサンビア社会の“常識を揺さぶる性教育”
〈未婚女性は「娼婦」と呼ばれ、夫を亡くすと「代理夫」が与えられる…子作りでも快楽でもない“第3のセックス”が盛んな部族の性生活〉から続く
7歳になった少年は、年長の若者にフェラチオを施し、精液を飲み込む。これは性的逸脱ではなく、「男性性を獲得するための儀礼」だ。パプアニューギニアのサンビア社会では、この行為なしに男性は一人前の戦士になれないとされる。やがて彼らは結婚し、父親になると、異性愛者となる――。常識を揺さぶる性の人類学を『人類学者が教える性の授業』(ハヤカワ新書)より一部抜粋してお届けする。
【写真】この記事の写真を見る(2枚)
◆◆◆
7歳頃から結婚するまで続く“特別な儀礼”
人口2000人以上のサンビア社会は絶え間なく戦争を繰り返しており、これを通じて他の集団との関係が成立していて、そのような社会では、男性は戦士としての役割を期待されます。そこでは、戦士集団としての結束を最大限に高める父系社会・父方居住の暮らしが営まれています。このような父系社会では父から子へと義務や権利の継承がなされます。

写真はイメージ ©アフロ
サンビアにはこうした男子の紐帯を組織する男子秘密結社があり、そこで儀礼的同性愛に基づくイニシエーション儀礼が行われます。おおむね、少年が7歳から10 歳の間に始まり、結婚するまでの長期間続くとされています。
少年を「一人前の男性」にするために儀礼を行う
サンビア社会では男子に対する長期にわたるイニシエーション儀礼が施されます。女性が完全なものとして生まれるのに対して、男性は生まれたままでは不完全なものであり、儀礼を受けることで初めて生殖能力を備えた一人前の男性になると信じられています。
少女たちは女性器・産道・子宮、そして経血を溜める機能を持つティングと呼ばれる臓器を生まれながらに持っているとされます。思春期にはティングと子宮が充血し、やがて初潮を迎え、女性の妊娠能力と関連づけられます。女性は男性よりも健康的で、自ずから生まれる無尽蔵な性欲を持つとされますが、不完全に生まれる少年は、儀礼を通じて男性性を獲得することで、初めて生殖するための生物学的な能力を得るのだと考えられています。
精液を体内に取り込むことで「男らしさ」を得る
つまり、儀礼の介入がなければ、少年たちは大人の男性としての能力を、自然には獲得できないと、サンビアの人たちは信じているのです。このイニシエーション儀礼では、少年たちは年長の若者たちから精液を与えられ、これを体内に取り込み、充満させることで男性性へと目覚めます。具体的に言えば、7歳前後になった少年は自分たちの先輩である若い男性たちにフェラチオ(口唇性交)を施すことで、射精を促し、これを飲み込むことで、男性性を獲得するのです。少年に精液を与える若者たちは、結婚して子どもが生まれたのちにその役割を終えます。
隔離された男子秘密結社を持つサンビア社会では、女性に対する穢れという価値観があり、言い換えればこれは女人禁制の制度です。男子秘密結社に加入する際には、少年は女性からの影響、母親との生活の穢れを取り去らなければなりません。そのために、鼻からわざと出血させる儀礼を施し、「清浄な状態」を取り戻し、儀礼的同性愛によって男性性を受け取る準備を整えます。その後、少年たちは先ほど述べたような年長の若者たちとの同性愛的関係になります。精液の受け手である期間は、およそ7〜10歳から15歳前後になるまで続きます。
その後、若者へと成長した少年は逆に精液の与え手としての役割を担い、後輩の少年たちとの同性愛関係を続けます。このとき、精液の与え手の若者と受け手の少年は、「結婚」していると見なされます。
父親になったのちは異性愛へ
精液の与え手の若者は、女性との結婚後もこの儀礼的同性愛を続けますから、その際にはバイセクシュアルな性的指向を持つことになるでしょう。やがて、自分の妻に子どもができ、父親になるのと引き換えに、少年との「結婚」関係は解消されるのです。つまり、父親になったのちは、ヘテロセクシュアル(異性愛)になるというわけです。
まとめると、精液の授与は、サンビアの少年たちを成長させるために行われるのです。精液を体内に取り込むことで少年は、男性性を獲得します。これは戦士であることを求められるサンビアの男性にとってはなにより重要なことです。常に戦争状態にある彼らにとって、男らしさは戦士に象徴されるからです。
他方、精液の与え手である若い男性にとって、同性愛的儀礼は性的快楽を得るのに役立ちます。というのも、女性に対する穢れの観念が強いサンビア社会では、婚前の若者にはそれ以外の性的はけ口がないからです。そして、この儀礼的同性愛を通じて、次世代へと「霊的なサブスタンス」、つまり男らしさの根源的な物質を伝えていくことができると信じられています。
〈「前の夫はつけていたから、あなたもつけて」妻にリクエストされ亀頭に穴を開ける…ボルネオ島に伝わる“衝撃の性具”とは?〉へ続く
(奥野 克巳)
