入隊したら、幅広い「活躍の場」が待っていた ーー陸・海・空「女性自衛官」インタビュー

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 自衛隊と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろうか。たとえば、迷彩服に身を包んで災害派遣に従事する姿。青空の中を華麗に舞うブルーインパルス。いろいろあるが、そうした中に出てくる自衛官たちはどんな人か…。多くの人が、屈強な肉体を持った男の姿を思い描くかもしれない。しかし、実際の自衛官は、屈強な男ばかりではない。「力自慢の男だけの仕事」――自衛官に対するそんなイメージは、端的に言って間違っているのだ。

 だが、そうは言っても、一般的に想像しやすい自衛隊の仕事がいかにも“体力勝負”なのは事実だ。そして男性と女性では体力面では差があることは否めない。果たして、自衛官として働く女性たちはどんな仕事をしているのだろうか。そして彼女たちが「どんな人にも オススメしたい」と声を揃える自衛官の仕事とはどんなものなのか。陸・海・空、それぞれの女性自衛官3人に話を聞いてみた。

「就活で落ちまくった」「泳げない」…でも自衛官になれた

――みなさんはどのようなきっかけで自衛官になられたのですか? 陸海空それぞれを選ばれた理由を含め、きっと立派な志望動機があったのではないかと想像しているのですが……。

加藤2等空曹 いきなりそう言われると答えにくいんですが(笑)、私は就職活動でことごとく落ちてしまって、もう受かったところに行くしかないと。そういう感じで、とりあえず航空自衛隊に入ったんです。だから、事前にしっかり自衛隊について調べていたわけでもなくて、入ってから「おお、こういうところか」と思いながらやってきたという感じです。陸海空もよく考えず、なんとなく空自だろうと。群馬県出身で“海無し県”だったから海よりも空のほうがいいかなあと(笑)。

干場(ほしば)3等陸曹 私の場合は人の役に立つ仕事をしたいなと思っていて、それで警察・消防・自衛隊の3つを受けたんです。そういう人って私だけじゃなくて結構たくさんいるんですよね。で、その中で受かったのが自衛隊だけだったので、自衛官になりました。そのときに私を担当してくれていた広報官が陸上自衛隊だったので「陸上自衛官いいよ!」みたいな流れでそのままです(笑)。

浅見2等海曹 私は最初、陸上自衛隊に入りたいと思っていたんですよ。でも、ちょうど陸はその年の採用人数に達したので、試験が終わってしまったと言われて、今年すぐに自衛官になるなら海か空だと。それでどうしようかと思ったんですけど、入隊して最初に入る教育隊の場所が、空自だと山口県で、海自は横須賀なんですよね。私は神奈川県出身だから、じゃあ同じ神奈川の海自にしようかと思って。

――もっと国防とか社会貢献とか高尚な思いを持っていたのかと勝手に想像していたので、なんだか普通の人と同じ感じで安心しました(笑)。入るときに不安みたいなものはありませんでしたか? 特に体力面とか……。

浅見 海自だと泳げないとマズいのかなあという不安はありましたね。私はまったく泳げなかったので。ただ、入ってみるとしっかり泳げるように段階的に訓練していくので、割とスムーズに泳げるようになっていました。それに、私以外にも泳げない人がいたので、ああ、大丈夫だろうなと。

加藤 自衛隊の体力測定の種目でソフトボールを遠くに投げるものがあるんです。学生時代に剣道はやっていたんですが、ボール投げなんてやったらすぐそこに落ちちゃうくらい(笑)。長く走るのも入隊前は中学校のマラソン大会くらいで。でも、自衛隊に入って走っているうちにできるようになって、フルマラソンも走れるようになりました。だから体力のことはあまり気にしないで大丈夫ですよね。人間って結構伸びしろがあって、すごいなって思いました(笑)

浅見 そうですよね。もちろん水泳や運動がすごい上手で、という人もいますが、私のように運動が嫌い……とまでは言わないまでも苦手な自衛官もいます(笑)。まあ、運動嫌いだから最初はきついなあと思うこともあったんですが、みんなで一緒に訓練をして高めあってやっていくうちに上達していくものなんです。なんとかなる、って感じですね(笑)。女性だから、男性だから、というのもないですし。

・「自衛隊の ソレ、誤解ですから!」やっぱ体育会系?篇

(最初は)泳げなくても、走れなくても大丈夫らしい

干場 陸自でもそうですね。例えばモノを運ぶにしても、男性がやったほうが速いんだったら、重いものは男性が持つ。その分女性は小さいモノを3つ運ぶ、とか。だから男女でどうこうというよりは、人それぞれの個性に応じて自然と役割が割り振られる感じです。教育隊でも最初は男女で分かれて訓練しますし、体力面での差を必要以上に意識することはないと思います。

加藤 陸海空でいうと、一番走るのは陸自ですよね?

干場 たぶんそうだと思います。陸自ではいわゆる「the自衛官〜」って感じの銃を背負って走る訓練が当たり前なんですけど、それって海自・空自ではあんまりやらないですよね。

加藤 教育隊ではやりました。でも、そのあとはまったくないですね(笑)

浅見 私も同じです。職種の学校に行ったときに訓練でやりましたけど、日常的にはまったく。ただ水泳は海自ならではだと思います。

大手航空会社で研修ーー政府専用機で「CA」の仕事も

――なるほど、陸海空でそれぞれ個性というか特徴があるんですね。

干場 陸自の場合は基本的なスキルは全員がベースとして持っていて、その上で専門の職種について上積みをしていくというイメージがわかりやすいかもしれません。私は高射特科という敵の戦闘機などに対処する部隊 にいたんですが、それでもはじめの頃は銃を背負って山の中を走る訓練をやっていたわけで。

浅見 入隊して最初の教育の段階で乗艦実習があるのは海自らしさでしょうか。ただ、その後配属された職種によっては、海自だからといって全員が艦に乗るわけじゃないんです。私はずっと地上救難という職種で主に地上勤務でしたが、中には艦に乗る配置もあり、乗艦しての業務もあります。どうしても設備の問題などがあって、昔は女性が護衛艦で勤務するのが難しい時代もありました。でも、最近は設備も整い、職種もすべて開放されているので、どんな職種にも行くことができるようになったんです。だから 海上自衛官といっても、艦に乗る乗らないは男女に限らず、それは職種による感じですね。

加藤 空自はとにかく専門を極めるイメージが強いかもしれません。パイロットならパイロット、航空機整備なら航空機整備、管制官なら管制官といった職種が決まったらそれをずっと続けて追究していく。それぞれの職種が特殊性を持っているので、専門性が求められるんだと思います。ただ、そうした中でもやりたいことをやらせてもらえる環境はありますからね。

――加藤さんは政府専用機に乗っていた経験がおありとか?

加藤 そうなんです。政府専用機って内閣総理大臣などの政府・国の要人が海外訪問の際に搭乗される機体なんですが、運航勤務員として航空自衛官だけが乗務できるんですけど、私は空中輸送員、民間のエアラインでいうCAのような仕事をしていました。特定の職種としてCAがあるわけではないので、いろんな職種から希望して来る人がほとんどで、私も希望してきています。配属が決まると大手航空会社さんの研修所でCAの研修を受けるんですけど、自衛官って任務や訓練中にはほとんど笑うことがないんですよね。だから気が緩むとすぐに真顔になっちゃう。研修では「加藤さん、真顔になってますよ!」ってよく言われていました(笑)。

干場 まったく違う職種に行くとそういうことがありますよね。私は入隊して、山の中で銃を担いでいたりしたんですけど、その後は統合幕僚長、実は自衛官で一番偉い人なんですが(笑)、その人の庶務、秘書みたいな仕事になって。たとえば、お茶出しなんてそれまでやったことないですから。仕事のために秘書検定も取って。実は加藤さんとは別の 大手航空会社さんに研修も行かせてもらって。それまでは自衛官らしいキビキビした動きを叩き込まれてきたのに、今度は柔らかな動きで秘書をする。 そういう仕事の幅の広さは自衛隊、自衛官という職業の魅力のひとつですね。

――そういった研修なども自衛隊から派遣される形で行くことができるんですか?

干場 そうです。「こういう研修があるから行ってみるか?」と言われて、「じゃあ行きます!」と。もちろん勤務の一環ですし、研修のお金も研修期間中のお給料も自衛隊が出してくれます。職務で必要な他の資格も同じですね。

浅見 私は地上救難業務で消防車に乗っていたんです。その前には燃料を運ぶタンクローリーを運転したり、VIPの乗る車両の運転をしたりもしていました。だから大型自動車免許はもちろんですが、けん引免許や危険物取扱者の資格も持っています。最初から資格を持っている人がその職種につけるのではなくて、入隊してから職種ごとに必要な資格を取得していく流れですね。自衛隊の中で取れる資格もあるし、外に行って取ることもあるし。もちろん自衛隊内だけではなくて、一般にも通用する資格です。

干場 陸自だと車の免許はほぼ取りますね。ほとんどの陸上自衛官は自分たちで運転して移動したり、モノを運んだりするので、必須資格のひとつです。陸自の中に教習所があるので、そこに通って多くの人が取得します。私は入隊4年目で取りましたが、もっと早い人もいますね。必要なものは全部自衛隊に入ってから。だから、それこそ“身ひとつ”でも全然大丈夫だと思います。

加藤 そうですね。職種は自分の希望や適性で決まるんですが、もちろん希望通りにいかないこともある。ただ、だからといって悪いわけじゃないんです。やりたいことと自分に向いている仕事は必ずしも同じではないので 。ちゃんとひとりひとりを見てくれて判断してくれる。だから希望通りいかないと最初は不満でも、やってみるとやっぱり向いていることも多くて。できると楽しいじゃないですか。だからだんだん「こっちでよかったかも」って思えるんです。自衛隊 は「人を育てる」という面では 本当によくできているなあと思います。

入隊してから「いろんな人の実家」にお呼ばれするように

――とはいえ、訓練はかなり厳しいのではないかなあと……。

浅見 う〜ん、他の仕事とは比べたことがないのでわからないですが、教育隊の訓練は今振り返ると楽しかったと思いますね。自衛隊の訓練って、ひとりで黙々と頑張るとか他人よりも自分が上に行くというよりは、仕事柄みんなで協力して助け合いながら目標を達成していく訓練なんですよ。誰ひとり脱落させないようになっている。競争してライバルを蹴落として、という世界とはまったく違います。

加藤 人を蹴落としても自分が出世できるわけじゃないんです。組織としての成果が問われるので、チームの力を上げるために自分も周りもお互いに高めあって、結果として組織全体でより高いレベルにならなければ意味がない。だから同期はライバルというよりは仲間、家族みたいな存在ですよね。一緒に助け合ってやってきたという。だから人間関係が濃い。就職してからこれだけ深く付き合う友人ができるとは思いもしませんでしたね。最近気がついたんですけど、私、入隊してからかなりいろんな人の実家に遊びに行っているなあって(笑)。同期はもちろんですし、「あの先輩のお母さんのご飯食べたな」とか。

浅見 同期だったら確かに実家に行くことはありますね(笑)。

干場 生まれ育った環境がまったく違う人と一緒に生活して一緒に仕事をするんですけど、まったく喧嘩したことないですからね。最初の教育隊での厳しいと言われる訓練のときも、毎日笑ってました。自衛隊に入って良かったなあと心から思っています。何をしてもひとりではできない、そういう仕事ですからね。

浅見 船もひとりでは動かせませんし……。

加藤 飛行機もひとりでは飛ばせない。パイロットはもちろん花形ですけど、事務の人も整備の人も管制官もいるから飛ばせるんです。それは、どの職種の人も共通の認識だと思います。陸自と海自もたぶん同じだと思います。

――自衛隊は階級社会だと思うんですが、それが人間関係の壁になるということもないんですか?

干場 仕事中はもちろん階級が絶対で、上官の職務上の命令は聞かないといけない。でも、階級はあくまでも仕事上必要な上下関係なので、仕事を離れたら普通に仲良くできることも多いですよ。階級が上だからどうとか、そういう態度を取る人もいないですし。まあ、私が出会った範囲では、ですが(笑)。

加藤 もちろん他の職場と同じく、そういった人が まったくいないと断言はできないですね(笑)。でも、仕事を離れたら階級を意識せずに付き合える仲間は多いと思いますよ。

浅見 私もお二人に同感です。階級といえば、話が変わっちゃうんですけど海自だけ階級章が違うんですよね。今は広報官として陸自・空自の人たちと一緒に仕事をしていますけど、階級章を見ても最初はどの階級かわからなかった(笑)。海自は船に乗って海外にも行くので、階級章が他国の海軍と共通点が多いです。そういう小さな違いに戸惑うことってないですか?


階級章(海上自衛隊(左・袖先)、航空自衛隊(右 ・襟元))

干場 陸海空というよりは一般の人との違いになるんですが、時間の厳しさは本当に叩き込まれています。12時集合!と言われたら、だいたい12時00分00秒から12時00分59秒までならセーフじゃないですか。でも、自衛隊だと12時00分00秒ぴったりじゃないとダメなんです。もともと私は時間にルーズだったので、最初はちょっと大変でした(笑)。でも慣れるもので、今は友達と待ち合わせるときもピタリ、です。

浅見 あ、海自には5分前精神というのがあるんですけど、陸と空にはないですよね? 船に乗り遅れることは許されないので、集合時間の5分前に全員来ないとダメ。12時集合と言われたら11時55分に来るのが海自です。

加藤 空自は定時定点。遅れるのはもちろんダメですが、早く来てもダメですね。

浅見 だから陸海空の自衛官が集まると、だいたい海自だけ5分前に来ているんです(笑)。

学生の質問「どういう人が向いていますか?」に対する答えは…

――それぞれの特徴が生活にも出てくるところがおもしろいですね。ちなみに、女性ですと結婚や出産というライフステージの変化も就職にあたって考えるところだと思います。実情を少し教えていただけると嬉しいのですが……。

干場 最初に「職場結婚が多いぞ」と言われました(笑)。

浅見 そうですね、やっぱり仕事が同じだと理解してくれやすいからいいかな。でも、それは人それぞれですからね。昔は結婚や出産で辞めてしまう女性自衛官が多かったようですが、今はほとんど辞める人はいません。というか、続けるのが当たり前になりすぎて、辞めるかどうかということが話題にもならない。産休や育休の制度も充実していますからね。

加藤 普段から大人数で同じ目標に向かって仕事をしているから、助け合うことが当たり前になっているんですよね。女性とか男性関係なく、「子供が熱を出したからちょっと今日は早く帰ります」というのが当たり前。で、周りも「じゃあフォローしとくよ」と。それが自然なんですね。

浅見 子育ても落ち着いた友人に聞いたところ、時短勤務や仕事内容も負担にならないよう配慮してくれますし、だからこそ子育てが落ち着いたらその分頑張ろうと思えて、良い循環になったそうです。

――それぞれの個性や強みでお互いを補い合うことの延長で、仲間の子育てにもフォローできるということなのでしょうか。自衛隊を見習ったほうがいい民間企業がいっぱいあるような気がします(笑)。それでは、最後に自衛官になろうかどうか考えている人たちへのメッセージをいただけますか。

干場 就職活動をしていると、どの資格が必須だとか取得しておくと有利だとか、いろいろあると思います。でも、自衛隊だったらすべて入ってから取らせてくれます。だから興味を持ったらとりあえず連絡してくれれば。あとは人の役に立つというところでは実感できることがありますよね。民間の方に「お仕事は?」と聞かれて「自衛官です」と答えると、「いつもありがとうございます」と言っていただけることも多い。 それはモチベーションになるし、ほんとうに嬉しいことだと思っています。

浅見 どういう人が向いていますか?という質問を学生さんからいただくこともあるんですが、自衛隊にはたくさんの職種があり、体力を活かして活躍したいならそういう職種もあるし、事務仕事もたくさんあります。私自身もデスクワークを経験してきました。だからちょっとでも興味がある人は自衛隊がおすすめです。

加藤 おふたりと同じような話になりますが、「みんなでひとつの目標に向かって」という話がどうしても多くなってしまうんですが、そんな中にも自衛隊にはひとりでコツコツとやるような仕事もたくさんあります。例えば航空機の整備とか、やっぱり職人技の世界ですよね。そういうのも含めてひとりひとりの適性をちゃんと見てくれる、人を育てることに長けている組織だと思います。だから、「やりたいことがよくわからない」という人にもおすすめできます。いま何かができる人よりも、今はまだできないけど、これから何かをやりたい、何かになりたい人、そういう人にこそ自衛官になってほしいなと思いますね。

今では陸海空、ほとんどすべての職種が男女関係なく開放されていて、チャレンジする機会はたくさん用意されている。肉体勝負の仕事もあれば、机に向かって頭脳プレイの仕事もある。ひとりひとりの適性を見極めてその能力を存分に引き出し、組織としての目標を達成する――。それこそが自衛隊の力の源なのだろう。自衛官としてやりたいことがあるという人ももちろん、やりたいことが見つからない人も、自衛隊の中には必ず活躍する場所があるのだ。

・「自衛隊の ソレ、できます!(国際貢献)」篇


・「自衛隊の ソレ、できます!(人を助ける仕事)」篇


今回お話を聞いた3名は、自衛隊東京地方協力本部(以下、「地本」)に現在は勤務。イベント案内や職業紹介といった自衛隊のPRに従事。地本は全国の都道府県にあり、お近くの自衛隊地方協力本部の事務所は下記。
https://www.mod.go.jp/gsdf/jieikanbosyu/contact/index.html

・都内地本事務所の連絡先はこちら(https://www.mod.go.jp/pco/tokyo/anamachi/index.html
・自衛官募集コールセンター:0120-06-3792

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