「息子さんの年収はおいくらですか?」…親の代理婚活「人柄よりもカネ、職業、若さ」参加体験ルポ

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真面目で優しい。堅実で努力家。相応の学歴があり、安定した仕事にも就いている。それなのに「なぜか結婚できないウチの子」に悩む親は少なくない。

かくいう私もそのひとり。30代後半の2人の息子は結婚どころか交際相手もおらず、そもそも異性と気軽に関われるようなノリもない。

むろん結婚するかしないかは個人の自由、結婚したからといって幸せが約束されるものではない。それでも「このままひとりでいたら将来が心配」とか、「跡取りがいなければこの家はどうなる?」とか、そんな不安を抱く親たちをターゲットにした婚活ビジネスが盛況だ。

例えば未婚の子を持つ親同士が交流し、当人に代わって見合いや交際のきっかけを作る「代理婚活」は全国各地で催され、親みずからが子どもの結婚相手を探そうと躍起になっている。

その実態は3月に出版した拙著『ウチの子の、結婚相手が見つからない!〜親の代理婚活でわかった「結婚の壁」』(文藝春秋)を参考にされたいが、母親として、また取材を兼ねて、私は2022年から都合3度の代理婚活を体験した。

「1000万円くらいですかね」

初回は都心のホテルを会場に参加費は1万6000円。当時36歳だった長男の身長や居住地、職業や学歴、趣味、親から見た子どもの長所などを記した参加申込書を提出すると、交流会の1週間前に「リスト」が届いた。男性リストには「未婚の息子」、女性リストには「未婚の娘」の情報が記載され、あらかじめ「お相手」候補の目星をつけたうえで臨む。

いざ当日。息子や娘のリスト番号と紐づけられた番号札を胸から提げた親たちは、およそ100人。より詳細な子どものプロフィールや家族構成を記した身上書を手に、「お相手」候補の親と交渉する。

ちなみに交流会の主な目的は「身上書の交換」だ。親たちは息子または娘の個人情報や顔写真を見せ合い、双方が納得すれば持ち帰り、本人に「この人どう?」と打診する。

前半の30分は、息子を持つ親から娘を持つ親へのアプローチタイム。早速「お相手」候補の女性の母親と対面した私だが、思いがけずカウンターパンチをくらった。

「息子さんの年収はおいくらですか」

えっ? 初対面にもかかわらず、いきなり「カネ」を問われて言葉に詰まる。

「男性の年収を気にされるんですか。ちなみにどれくらいを希望されているんでしょう?」

「まぁ、1000万円くらいですね」

こちらの動揺とは裏腹に、相手は落ち着き払っている。「年収」というシビアな条件を前にされては、そそくさと退散するしかない。

次に対面したのは34歳の娘を持つ父親だ。にこやかに挨拶を交わしたまではよかったが、またも予想外の質問を浴びせられた。

「息子さんの勤務先は上場企業ですか」

続いて父親自身の自慢話が始まった。有名企業で働き、都内に2軒の家を持っている。そのうち1軒は「娘が結婚したら住まわせようと思っている」などと一方的な圧がすごい。

ほうほうの体で前半を終えると、後半は娘を持つ親から息子を持つ親へのアプローチタイムだ。私のもとには愛想のいい父親が、34歳の娘の身上書を携えてやってきた。

双方の子どもについて話すうち、偶然にも先方の一家がかつて近所に住んでいたことが判明した。思わぬ共通点に子ども同士の見合いは既定路線のように舞い上がった私だが、今度はとんだ打ち明け話を振られた。

「ウチの娘はこれまで、いろんな親御さんから『ぜひ』と言われてきたんですよ」

「キスもさせてませんから」

「引く手あまた」とでも言いたげな彼の娘は、以前の交流会で身上書を交換したあるエリート男性と見合いやデートをしたという。

「お相手の条件は申し分なかったんですけど、結局お断りしたんです。それでね、ウチの娘はキスもさせてませんから」

これには仰天した。清純さをアピールしたいのかもしれないが、30代半ばの娘とその父親が「キス」を話題にするってあり得るのか。

交流会後の二次会の席では、50歳の息子を持つ父親から厳しい現実を突きつけられた。身上書に記載された家族欄の情報、つまり親兄弟の学歴や職業が「大事」なのだという。

「交流会に来るような親は、我が子にふさわしいお相手を見つけたいんですから、誰でもいいってわけにはいかないでしょう。子ども同士だけじゃなく、親同士の相性や家と家との釣り合いだって考えますよね」

当人の年収や学歴、職業などの条件に加えて家族のレベルまで求められることに愕然としたが、よくよく話を聞いてなるほどと思った。誰しも息子や娘の経歴は似たり寄ったり。「真面目で優しい」、「安定した仕事に就いている」、そんな男女の中から特定の人を絞るとき、「どういう家族がいるのか」ということが付加価値になり、差別化につながるのだろう。

2回目、3回目の代理婚活も同様だった。人柄よりも「カネ」や「職業」、「若さ」という条件。子どもの意思や気持ちより、親の期待と願望が先走る。それでいて親たちは、口をそろえてこう言う。「高望みしていない」、「ふつうの相手でいい」と。

取材・文:石川結貴(ジャーナリスト)