20万円を切ったフルサイズミラーレス「Nikon Z 5」が新時代のベーシックモデルとなる理由

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新型コロナウイルス感染症発生から我々の生活は、予防対策をした上での外出が当たり前となった。
ソーシャルディスタンスや、消毒・手洗い、マスク着用、密を避ける、大声で会話しないなど、普段とは変わらないようでいて人が集まる場所ではこれまでとはことなる生活様式となった。
しかし人や社会はWithコロナ生活にも徐々に慣れ、少しずつだが様々なことを楽しんでいこうというマインドに変わりつつある。

そうした消費者のニーズとミラーレスカメラの新製品登場のタイミングが、今ちょうど良く重なっている。

各社ミラーレスカメラの良さを活かしたコンパクトなボディに、高画素イメージセンサーを搭載したハイエンドモデルや、高感度性能や動画性能を重視したモデルなどでユーザーニーズの対応する構えだ。

とはいえ35mm判フルサイズミラーレスカメラのボディ価格は20〜30万円台と高価だ。ましてやハイエンドモデルは40万円以上もするのである。

このような価格設定は、メインターゲットとなるハイアマチュアやプロカメラマン向けだが、Withコロナで変わりつつある消費者マインドに応えるにはこの価格帯では難しいものがある。




なにしろ対抗する相手はカメラ業界に大打撃を与えたスマートフォンだからだ。
いつも持ち歩くスマートフォンは手軽に写真が撮れるだけではなく、高性能プロセッサの能力を使った高画質化と高機能化で、デジタルカメラよりも映える写真が撮れることを謳っているからなのである。

スマートフォンでは撮れない写真、そしてカメラという「モノ」を手にする満足度と喜びが得られ、購入を検討できる価格帯として共感できれば、新しい層を開拓するチャンスも生まれるだろう。




ニコンが8月28日に発売した「Z 5」は、まさにその層に刺さる可能性を持つカメラの一つと言える。


被写体のすぐ後ろから自然にボケていくのがフルサイズイメージセンサーを搭載するZ 5の魅力だ


Z 5の2432万画素35mm判フルサイズイメージセンサーは、スマートフォンのカメラ機能の定番となりつつあるぼかし効果・ポートレートモードが目指した、目標とするものである。このぼかし効果で撮影しても、背景がボケているように見えて実は不自然な箇所が目立つこともあり、あくまでも機能のひとつでしかない。


Z 5は交換レンズを取り外すと巨大なイメージセンサーが見える


一方、フルサイズイメージセンサーなら、交換レンズや様々なテクニックで背景のボケ量をコントロールすることができ、ハッとするような写真に出会えることも多い。
そしてイメージセンサーが大きいことで高感度に強く、スマートフォンのような強力なノイズリダクション処理が必要ないため、色に濁りがなく自然な階調再現が可能だ。


肉眼では真っ暗な世界もISO8000で美しく描写できた






キットレンズは広角24mmから望遠50mmまでをカバー


交換レンズによって超広角から超望遠、マクロ領域やポートレートなど様々な撮影ニーズに応えることができる。もっともこれらの撮影を行うためには、用途に応じたレンズ代がプラスされるためハードルが高くなるのは確かである。
とはいえ、年に1度の運動会ならその時に最高の望遠レンズをレンタルすると言う方法もある。

最近ではレンズやカメラをサブスクリプション(定額)でレンタルして、好きなレンズを好きなときに使うということも可能となっている。
こうしたサービスを上手く使うも良いだろう。

背景をぼかしたポートレート撮影なら「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」といった単焦点レンズがオススメだ。
例えば、85mm F1.8を使ってみると、スマートフォンのポートレート機能とは別次元の画質であることに気付くだろう。被写体が浮かび上がり、背景がとろけるように大きくボケてプロカメラマンが撮影したような写真が楽しめるのだ。
まさに、レンズ次第でカメラの表現力が変わるということを知ることができる交換レンズのひとつである。

Z 5はこうしたスマートフォンが目指した撮影領域をデジタルではなく、光学的に実現するという強みがある。これは、階調表現や色再現の良さにもつながると同時に、よりクリエイティブに自分で写真を加工したいというニーズにも応えることができる。ミラーレスカメラで撮影した写真も、スマートフォンと同様に加工して楽しむのも映える写真を楽しむ使い方もオススメしたい。

スマートフォンのように広角カメラや望遠カメラなど、カメラの使い勝手を実現するのが、キットレンズの「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」だ。




このコンパクトなレンズは、フルサイズミラーレスカメラをバッグに入れて気軽に持ち歩けるサイズ感としている。デジタル一眼レフカメラでは考えられない、これはちょっとした革命である。

ちょっと想像してみて欲しい、バッグからZ 5を取りだしてレンズキャップをはずす。右手でZ 5のグリップを握り、左手でレンズを引き出して右手人差し指で電源を入れて撮影する、この作法はカメラを見ずに被写体を目で追いながら可能だ。これはカメラの複雑な形がなせるわざと言っても良いだろう。
スマートフォンの場合は、スマートフォンを取りだして、本体の表裏を確認し画面を表示して、カメラアプリを呼び出し、画面のシャッターボタンの位置を確認して撮影する。ちょっとした違いだが、写真を撮るときの気持ちがストレートに伝わるのがZ 5だと実感出来るのではないだろうか。




ニコン「Z 5」のレンズキットは、家電量販店で22万円台、ボディ単体が18万円台で販売されている。
まだ発売して間もないため、大きな値引きがないこともあり高い印象はあるが、従来のボディサイズが一回り大きい35mm判フルサイズイメージセンサーを搭載したデジタル一眼レフカメラは、ボディ単体だけでも20万円を超える。
このことを考えると、ミラーレスカメラの「Z 5」は、なんとか買える金額のフルサイズカメラを実現したと言える。




ここで注目して欲しいのが、「Z 5」はZシリーズの上位機種より販売価格が低いが、外装や使い勝手はそれほど変わらない点だ。握りやすいグリップや、背面の操作ボタン、タッチパネル搭載の背面モニターなど、上位機種に近い感覚での撮影が可能だ。

写真や動画の記録媒体はSDカードである。最近では低価格で大容量のSDカードがあるため、コストパフォーマンスが良い記録媒体となった。
とはいえ、動画撮影などをする場合はできれば書き込み速度が速いSDカードを用意した方が良い。特に映画のような4K動画を撮影可能なZ 5では書き込み速度保証の「V30」表記のSDカードがオススメだ。




「Z 5」はこのSDカードスロットが2つあるので、2枚のSDカードで片側が一杯になったら次のカードに記録する順次記録や、同じものを同時に記録するバックアップ記録といった使い方もできる。バックアップ記録なら、もしSDカードから写真が取り出せなくなったとしても、もう1枚のSDカードから写真と取り出すことができる。大切な撮影で役立つ機能だ。また、その場でもう1枚のSDカードを家族や友人にわたして写真をシェアすることも簡単だ。

こうしたボディの作り込みとインターフェイス類を、コストダウンのために省略すると途端に安っぽくなってしまう。カメラは道具であり、成果を出すための信頼性は必要不可欠だ。
・専用のボタンを押して機能を呼び出す、
・ダイヤルを回してパラメーターを変更する
・バックアップ用の記録メディアが使用できる
これらの点で「Z 5」はユーザーニーズをしっかりと押さえており、エントリーモデルではなくベーシックモデルとしてのコストパフォーマンスの良さを実現している。

とはいえ、これはこれまでカメラを使ってきた人たちの感覚や定義であり、保守的な考え方なのかも知れない。
今後は、ハードウェアボタンが減ってスマートフォンのような大画面で直接パラメーターを操作するという方が、視認性も含めて扱い易いという風潮になることもあり得るだろう。

新しい世代が使いやすいカメラとして、カメラメーカーがこれまでの操作性を一新して、次のイノベーションを生み出せるのか、それも見てみたいとことである。




それでも一つ言えるのは、道具は目で確認しながら使うのではなく指や手が目的のボタンやダイヤルに自然に触れて、直感的に操作できることが重要であると思う。
それがカメラというモノに、人が一体感を感じるところでもある。

この感覚的な部分を斬新なインターフェイスでどうやって実現するのか?
それとも変わらないのか?
未来は、果たして、どちらにむかうのだろうか。




さて、ニコン「Z 5」を使ってみると、オールマイティに使えるいいカメラであると感じる。ギュッと詰め込まれたサイズ感と高い剛性感、そしてフルサイズカメラを気軽に持ち出せるレンズキットにはワクワクする。
普段使いのカメラとして、初心者のステップアップ機として、無理なく使える機能を網羅している。外装や操作系も上位機種同様で、手に馴染んで段々と使いこなしていることが実感できるように上手く作り込まれていると思う。

スマートフォンやAPS-C一眼レフカメラユーザーが、次のステップへと進むならニコン「Z 5」はオススメだ。
ニコン「Z 5」は、利用できる高画質・高性能なZマウントレンズ群とともに、こうしたい、こういう写真を撮ってみたいという希望を叶えてくれる製品に成長しつつある。


執筆  mi2_303