武岡隆文氏(安芸高田市議会のYouTubeより)

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嫌がらせ電話が相次ぎ、注文していない商品が着払いで届くように

 1月、地域政党「再生の道」を旗揚げした石丸伸二氏(42)。政策を掲げぬ特異な方針を示しつつ、参院選を視野に入れると大見得を切る。一方、彼に舌鋒鋭く批判され憔悴(しょうすい)した市議は死去し、今年、その妻が自死を遂げていた。一体、何があったのか――。

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 石丸氏を一躍有名たらしめた発言の一つに「恥を知れ! 恥を」というものがある。

「これは、彼が広島県安芸高田市の市長だった2022年6月、市議の武岡隆文氏(66)=当時=が議場で居眠りしていた件を念頭に、議会で発したセリフです。市議会を旧態依然たる抵抗勢力と見なしていた彼は、テレビドラマのヒーローよろしく、たびたびこうした過激な言葉で市議らに批判を浴びせていた。結果、ネットで耳目を集めることに成功。昨夏の東京都知事選に打って出るに至ったのです」(全国紙記者)

 最初に石丸氏は武岡氏の居眠りについて指摘したのは20年9月、自身のSNSでだった。その後、武岡氏は居眠りの原因について“睡眠時無呼吸症候群で軽い脳梗塞になっていたため”と弁明し、診断書のコピーを石丸氏に提出したが、石丸氏は変わらず武岡氏を非難し続けた。そして、上述の“恥を知れ”発言を機に武岡氏は激しい誹謗中傷にさらされ、自宅に嫌がらせ電話が相次いだり、注文していない品々が着払いで届いたりするようになったのだ。

武岡隆文氏(安芸高田市議会のYouTubeより)

「何が原因でそのようなことをしたのか……」

 生前の武岡氏を知る安芸高田市議によると、武岡氏は日に日に顔色が悪くなっていたという。

「精神的に追い詰められ、酒を飲むとすぐに吐くようになりました。だんだんと食事ももどすようになり、23年の秋くらいには“食道が狭くなって飲み込むことが難しい”と言っていた。その年末に救急車で運ばれた後、入退院を繰り返し、年が明けて1月30日、68歳で亡くなったのです」

 そして今年、武岡氏の後を追うように妻が自ら命を絶った、という情報が。安芸高田市の武岡夫妻の住まいを訪ねたところ、

「ええ。何が原因でそのようなことをしたのかは、分かりませんが……」

 と、実家に帰っていたご子息が実母の死について語ってくれた。

「父の葬儀を執り行った頃から、母は躁状態に」

「警察の方いわく、亡くなったのは1月26日の夜だろうと。翌日、母が仕事に来ず心配した職場の方が自宅に出向いたことで発覚し、警察から私に連絡がありました」(武岡夫妻のご子息)

 生前の夫にふりかかった事態とその末の死は、妻にある種の恐怖を感じさせたようだ。

「父の死後、母は警備会社のアルソックと契約を結びました。昨年5月23日、都知事選の前のことです。当時、父をやり玉に挙げる動画をまた上げられたりしていました。一人暮らしになった母の元にも、以前と変わらず誹謗中傷の手紙などが届いていたのでしょう。不審者が来たりすることもあったのかもしれません。そのことで日々、不安に苛まれていたのだと思います。遠く離れて暮らしている私の自宅にも、じつはいまだに父を非難する手紙や脅迫文が届くありさまですから」(同)

 そして、こう回想する。

「父の葬儀を執り行った頃から、母は躁状態になっていました。なけなしのお金で庭をきれいに整えるなど気丈に振る舞い過ぎるきらいが見えたのです。心療内科で診てもらったところ、精神疾患を発症していることが分かりました」(同)

「“たすけて”という4文字だけのメッセージが」

 亡くなる直前、ご子息とは以下のやりとりをしていたという。

「25日の夜、母からLINEで“たすけて”という4文字だけのメッセージが送られていました。でも、ちょうど私は中国におり、(同国ではアクセスが制限されているので)LINEを受信できなかった。26日に帰国して“どうしたの?”と返信しても、既読はつきませんでしたが、私のメッセージが届いた時の画面を保存したスクリーンショットが母のスマホに残されていました。ただ、苦しみが大きく、踏みとどまれなかったのでしょう」(武岡夫妻のご子息)

 また、夫人はかねて、誹謗中傷のきっかけをつくった石丸氏に憤っていたという。

 石丸氏に、武岡夫人が亡くなったことについて見解を求めたが、期限までに返答はなかった。

 3月13日発売の「週刊新潮」では、生前の夫人が語っていたという石丸氏への怒りの言葉などと併せて詳しく報じている。

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「週刊新潮」2025年3月20日号 掲載