「トランプは狂った犯罪者」支持者は離れ、他国からも批判…トランプ大統領が発した“禁句”とは
ドナルド・トランプは自滅への道を歩んでいるように見える。公約だった「戦争をしない」を覆してイラン戦争を始め、MAGAインフルエンサーたちから一斉に批判された。ガソリン代の急騰により、MAGA有権者もトランプから離れ始めた。(寄稿:堂本かおる/全2回の1回目)
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確たるプランもなく簡単に勝てると始めた戦争は泥沼にはまり、逆上してイランの「文明を全滅させる」と人道にもとる暴言を吐いた。さらには戦争反対を唱えるローマ教皇にまで噛み付いた。失いつつあるクリスチャン有権者の支持を取り戻そうと自身をキリストとして描いた画像をSNSにポストしたが逆効果となり、世界中から大批判を浴びた。

米トランプ大統領(左)2025年2月、ホワイトハウスでイスラエルのネタニヤフ大統領と会談 ©CNP/時事通信フォト
トランプのこうした言動を受け、職務履行が不可能な大統領を罷免する憲法修正第25条の発動案までもが出ている。それでもなおトランプはナルシシズムと権力志向に基づいた暴言をやめられずにいる。
大統領が口にした「Fワード」
4月5日はイースター(復活祭)だった。キリストの復活を祝う、キリスト教徒にとって非常に重要な祭日だ。春の訪れを祝う日でもあり、かわいいウサギをシンボルとし、カラフルに塗ったタマゴを子供たちが探すゲームが行われる。
そんなイースター・サンデーの朝8時(現地時間。以下同)にトランプが自身のSNS、トゥルース・ソーシャルに行なったポストは誰にとってもショッキングだった。
〈「火曜日はイランにおいて発電所の日であり、橋の日でもある、全てが一度に起こる日となる。これほどの日は他にない!!! このクレイジーなクソッタレども、ファッキン海峡を開けろ。さもないと地獄で生きていくことになるぞ――見てろ!アッラーに栄光あれ。ドナルド・J・トランプ大統領」〉
米軍がイランの発電所と橋、つまりインフラを一斉攻撃するという脅しだが、その内容以上にトランプの言葉遣いに誰もが驚いた。
・Open the Fuckin’ Strait(ファッキン海峡を開けろ)
・you crazy bastards(クレイジーなクソッタレども)
・you’ll be living in Hell(地獄で生きていくことになるぞ)
過去最悪の暴言
Fワード(Fuckin’)、罵倒語のバスタード(bastard)は共にアメリカではよく使われる言葉だが、あくまでプライベートの場でのことだ。成人が上司を罵って使えば解雇、生徒なら停学もあり得る。地獄(Hell)もキリスト復活の日に使うべき言葉ではない。さらに異教徒が皮肉として「アッラー」の名を口にすることはイスラム教徒への大いなる冒涜となる。いずれも一国の大統領の言葉とは到底思えないものだった。
過去にあらゆる罵詈雑言を口にしてきたトランプだが、この時点ではこのポストが最悪のものだった。ゆえに各局のニュース番組のキャスターはFワードも含め、あえて全文を読み上げたり、「私は読み上げることはしないが、読んでほしい」と全文を映し出したりした。読み上げたキャスターの中には、それでも「アッラー」の部分だけは読まなかった者もあった。
イランに対し、アメリカ/イスラエルが完全に優位だと考えて始めたイラン戦争だが、ホルムズ海峡を封鎖されて原油の供給が閉ざされ、それによって米国内外からの批判が高まり、トランプは焦っていた。実のところ、原油よりも自身のプライドの問題だったのかもしれない。イランはその優位さを知っており、海峡再開の交渉を焦らせていた。SNSにはトランプとネタニヤフを笑い者にするミームが連投されていた。それに心底、腹を立てたのではないだろうか。
「今夜、一つの文明が滅びるだろう」
上記のわずか2日後、4月7日のトランプのポストは、さらに世界を驚愕させた。
〈「今夜、一つの文明が滅び、二度と復活することはないだろう。そんなことは起こってほしくないが、おそらくそうなる。しかし、今や完全な政権交代が実現し、これまでとは異なる、より賢明で、過激化していない人々が台頭する時代、もしかすると革命的に素晴らしいことが起こるかもしれない、誰にも分からないだろ?今夜、世界の長く複雑な歴史の中で最も重要な瞬間のひとつが訪れる。47年にわたる搾取、腐敗、そして死が、ついに終わりを迎える。イランの偉大なる人々に神のご加護があるように!」〉
冒頭の「今夜、一つの文明が滅びる」(A whole civilization will die tonight)は核兵器の使用を表しており、文末に「イランの人々に神のご加護」と書いてはいるものの、国民も殺戮されることをも意味する。
トランプのSNSトゥルース・ソーシャルでのフォロワーは、その多くがMAGAであり、このポストをさらに煽るコメントやミームが付いている。しかしトランプのポストはメディアや一般ユーザーによってX、Facebookなど他のSNSに転載される。そちらには驚きと共にトランプを激しく非難するコメントが付いている。
「トランプは正真正銘の狂った犯罪者だ」
「トランプを排除するか、さもなければ彼は文明全体を核攻撃するだろう。第三の選択肢はない。彼は病んだ邪悪な生き物だ」
MAGAインフルエンサーを攻撃
4月9日、トランプはポッドキャストでトランプ批判を繰り広げたMAGA/極右のインフルエンサー4人を攻撃する長文をポストした。4人を「低IQ」「負け犬(losers)」と罵り、「あいつらが電話をかけてきても、オレは世界情勢や国内情勢で忙しすぎるから折り返し電話をしない」とし、最後を「合衆国は今や世界で最も“ホットな”国だからだ!」で締めている。
トランプが名指しした4人(タッカー・カールソン、メーガン・ケリー、キャンディス・オーウェンズ、アレックス・ジョーンズ)は、いずれも極端な保守思想を喧伝し、MAGA有権者の反リベラル、反民主党の勢いを煽ってきた者たちだ。その4人との縁を断ち切ったのは、トランプにとって痛手にしかならない。
ちなみに「IQ」はトランプが他者を攻撃する際に、もっともよく使う言葉だ。トランプは大統領第1期(2017〜2021)のはるか以前、2013年に「オレのIQは最高レベルだ」ともツイート(現X)している。トランプがIQにこれほどこだわる理由は今も不明だ。
トランプが使う罵倒語は他にもある。昨年末、政府はミネソタ州にICE(移民関税執行局)を大量に送り込み、暴力的な移民拘束を繰り返した。それに抗議した同州のティム・ウォルツ知事を、トランプは「retarded」と呼んだ。この言葉は、本来は知的障害を指し、そこからバカ、マヌケの意味で使われてきた経緯があるが、今では使ってはならない言葉となっている。それを大統領が、自分に異を唱える知事に向かって使ったのだった。トランプによる使用が理由であるかは不明だが、今、若者の間で再びこの言葉が流行りつつある。
何気なく口にする「Nワード」
トランプは気に入らない相手の名前をもじったあだ名を作り出し、繰り返し使うこともする。
トランプ批判の急先鋒であるカリフォルニア州知事のギャヴィン・ニューサムのことは、「Newsom(ニューサム)」をもじった「Newscum(ニュースカム)」と呼ぶ。「scum」は本来は液体に浮かぶカスなどを指すが、それが転じて「クズ」といったニュアンスの悪口として使われる言葉だ。
ニューヨーク・タイムズの記者、マギー・ヘイバーマンをトランプは、「マギー(Maggy)」をもじって「Maggot(マゴット)」と呼んだ。「maggot」はウジ虫のこと。
トランプは全く不必要な文脈で、あえて「Nワード」を使うこともしている。昨年、「ロシアのメドベージェフ前大統領が、何気なく『Nワード』(核!)を口にして〜」とポストしている。「核(Nuclear)」を意味もなく「Nワード」と書いたのだった。
「トランプ語」が一般市民の心を惹きつけた理由
トランプの言語パターンは、こうした稚拙な悪口の多用だけではない。単純な文法の短い文章を好み、これが「一般人にも分かりやすい」と評されることがある。そこから逆に「トランプの言語能力は小学4年生レベル」とも言われる。いずれにしても大統領としては異例の「トランプ語」を、複数のメディアや言語学の専門家が解析しようとしてきた。
その一つ、バーミンガム大学のスーザン・ハンストン教授は、オバマ大統領(2009)とトランプ大統領(2017)の就任演説を比較している。オバマに比べるとトランプは一つひとつの文章が短く、文法は単純であり、全体の単語数も少ない。ここまでは英語話者の多くが気付いていることだ。
しかし、ハンストン教授は興味深い指摘を行っている。2人とも演説で教育や産業などアメリカの国内問題を取り上げているが、トランプは「我々(アメリカ人)」を、そうした問題の犠牲者として描いている。この話法が、勤勉なのに報われず、生活苦にあえぐ一般市民の心をトランプが引き付けた理由の一つと思われる。
教授は2人の顕著な違いの例として、テロについての描写を挙げている。オバマは「我々の精神はより強く、決して折れることはない」と、アメリカ人がテロに屈しないことを訴え、トランプはテロリストを「過激派イスラム」と特定した上で、「これを地球上から完全に根絶する」としている。
トランプは第2期の公約「戦争をしない」を覆したとして今、MAGAからも批判されているわけだが、第1期の就任当初から戦争回避ではなく、反イスラムで、かつ好戦的であったことが分かる。(つづく)
〈トランプ氏が“まさかの削除”…SNSにアップした「一枚の画像」がアメリカで猛批判された理由〉へ続く
(堂本 かおる)
