不動産価格下落、内需低迷、人口減少、貿易摩擦の「四重苦」…習近平はイケイケでも中国経済は大ピンチ
【最新チャイナレポート】バブルが崩壊して不動産価格は下落し、内需低迷、人口減少、貿易摩擦……
’25年のGDP(国内総生産)成長率は前年比5%増で、政府がかかげる「5%前後」の目標を達成しましたが、中国経済の将来は内憂外患(ないゆうがいかん)でしょう。不動産価格の下落、内需低迷、人口減少、貿易摩擦の「四重苦」に悩まされるからです。
こう語るのは『ピークアウトする中国』(文春新書)などの著書があり、中国情勢に精通しているジャーナリストの高口康太氏だ。中国経済は表面上、好調にみえる。
習近平国家主席(72)は、春節(旧正月)を前にした2月14日の演説で「新たな発展のパラダイム(枠組み)構築を加速させる」と発言しイケイケだ。だが、実態はかなり危険な状況だという。高口氏が解説を続ける。
確かに中国はAI(人工知能)やEV(電気自動車)などで技術力を高め、生産力は圧倒的な世界一です。しかし人民の消費が低く、肥大化する供給に需要が追いついていない。中国では、発展途上の’70年代から政府主導で消費をガマンし工場などの投資に回そうという考えがありました。
日本では高度経済成長期を終えた’80年代に入り一気に国民の消費が高まりましたが、中国はいまだにビジネスへの投資を優先する傾向がある。「供強需弱」と呼ばれる状態で、経済成長率は右肩下がりなんです。
さらに出生数は減少傾向にある。人口は’21年の14億1000万人をピークに減少へ転じました。人口減少にともなう内需の縮小が深刻化し、供給過多の傾向は加速するでしょう。
最大の不安要素はバブル崩壊による不動産価格の急落だ。’00年代には20〜30%台(前年比率)と高水準にあった固定資産への投資が、’25年はマイナスとなった(表上)。資金難から中国全土で工事がストップし、廃墟となった建物が放置されている。
中国経済はこれから長く続くデフレ期に突入する!
バブル崩壊で苦しんでいるのは、大手ディベロッパーだけではありません。中国人民は資産の約70%が不動産でした。価格の急落は一般家計を直撃。財布のヒモを、さらに固くしているんです。
「口紅効果」という言葉があります。不景気になると高価なモノは売れず、口紅のようなちょっとした贅沢(ぜいたく)品が売れるという現象です。例えば大型連休の春節が始まりましたが、カネのかかる海外旅行ではなく国内旅行ですませようという考えが広まりつつあります。
最近、中国を旅行された方はこう反論するかもしれません。「北京や上海など都市部にはモノが溢(あふ)れ活気がある。不況などウソだ」と。しかしモノが溢れ活気があるのは、人目につくところばかり。ちょっと外れた郊外や、ビルの高層階に行ってみてください。テナントが入らずガラガラ。活気どころか人気(ひとけ)さえない場所がいくらでもあります。
地方はもっとヒドい。バブル期に官僚たちが自分の任期中に実績を上げようと、誰も利用しないような場所に駅や空港を作りました。こうしたインフラは、維持費だけでも地方経済の負担となっています。政府の発表する近年の失業率は5%前後ですが、サンプルは都市部の人たちのみ。地方の人々や出稼ぎ労働者を加味すれば、さらに悪い数字となるでしょう。
マイナス要素ばかりで内需が一向に上がらない一方、中国経済を支えているのが外需だ。ヨーロッパ(EU)などへの輸出が絶好調。とくに政府が支援するAIやEVなどの新ビジネスが、近年大きく伸びている。しかし……。
米国のトランプ大統領により一時100%超にまで引き上げられた対中追加関税を避け、中国は他の地域への輸出に注力。例えば、’25年の対EU貿易黒字は過去最大の45兆円超に膨(ふく)らみました。人民元ベースの輸出は10年前の約1.7倍に拡大した一方で、EUからの輸入は1.3倍にとどまっています。
そのため貿易黒字が倍増したんです。あまりの貿易不均衡ぶりに、フランスのマクロン大統領は「耐え難い。EUにとって死活問題だ」と強い不満を表明。不均衡の怒りが爆発し、関税引き上げなど貿易摩擦に発展する危険性があります。
不動産価格下落→国内消費低迷→輸出増加→貿易摩擦……。中国経済を取り巻く状況は、けっして明るくありません。長期のデフレに陥る瀬戸際にあるんです。
『FRIDAY』2026年3月6日号より
