「じゃがりこは太陽!」と溺愛する鈴木もぐらが、相方・水川と衝突し、ラジオの人気コーナー誕生のきっかけとなった「遅刻の新幹線」と「じゃがりこ」
お笑いコンビ「空気階段」の鈴木もぐらにとってカルビーの「じゃがりこ」は太陽と呼ぶべき存在だという。それはあらゆる飲み物はもちろん、「移動」というシーンにさえ完璧に寄り添うから。しかし、じゃがりこを新幹線で食べていたことが、相方の水川かたまりにバレて、事態は思わぬ展開へ…。
一つの菓子をきっかけに、人気ラジオ番組『空気階段の踊り場』の長寿コーナーが誕生した驚きの舞台裏を書籍『没頭飯』より一部を抜粋・再構成して明かす。
じゃがりこは太陽
「じゃがりこ」のCMの衝撃は忘れられません。
女の人がひとりでじゃがりこを食ってるCMを覚えていらっしゃるでしょうか。じゃがりこを食うリズムに合わせて「じゃーがーりーこじゃーがーりーこ」って声が流れるあれです。
私が小学校2年か3年、いや4年の頃だったかな。あのCMを見てすぐ、小遣いもってコンビニに走りました。食ってみて驚きましたよ。そのうまさに。噛んだ瞬間、うめーーー!! って。大好きになりました。
小遣いがすくない当時の私にはかんたんに買えるシロモノじゃありませんでしたが、そのころからのヘビーユーザーです。
いちばん食ってるのはやっぱりサラダ味。
触感、味、香り、サイズ……お菓子として完璧なんじゃないでしょうか。チーズ味もジャガバター味もうまい。期間限定の味も発売されたら絶対に食ってます。でもファーストチョイスはサラダ味。私の軸足はつねにサラダ味に置かれている状態です。
そこから気分でチーズ味にいったり、じゃがバター味にいったり。サラダ味を中心に、そのまわりをいろんな味がまわってる感じ。サラダ味がいわば太陽なんですね。
じゃがりこはなんにでも合う
じゃがりこはどんな飲み物にも合います。無敵です。私が日常的によく飲むのは、ブラックコーヒー、コーラ、ライフガード、マッチ。だいたいこの4種類です。これぜんぶに合います。間違いないです。
それだけじゃない。酒にも合います。ビールにも、焼酎にも、ハイボールにも。じゃがりこはすべての飲み物に合うように設計されてるんです。
私、先ほど言いましたよね。じゃがりこは太陽なんです。飲み物はじゃがりこのまわりをまわってる惑星です。飲み物はそのときの気分で選べばいい。だってじゃがりこはなんにでも合うんですから。太陽は惑星を選んだりしません。じゃがりこはすべてを照らしています。
じゃがりこは「移動」とも相性がいい。新幹線の中で食うじゃがりこがまたうまいんですよ。景色を見ながら、東海道新幹線に乗ってるなら富士山を見ながらじゃがりこを食うと、もっとうまくなる。
もちろん脳内で「じゃーがーりーこじゃーがーりーこ」のBGMを流しながら。じゃがりこに合わないものってこの世の中にあるんでしょうか。
そんな私を新幹線の中で目撃したリスナーがいます。
「もぐらさんはじゃがりこを食べながら、ただ茫然と前の座席の一点を見つめていました」というメールが私たちのラジオ「空気階段の踊り場」に届きました。
その日は大阪でライブがあった日。11時45分に劇場入りしてリハーサルをするはずが、私が東京の自宅で目が覚めたのは11時20分。なにをどうしたって間に合わない。でもさいわい本番にはギリギリ間に合いそうです。
相方の水川に連絡を入れて、急いで新幹線に乗りました。そこでリスナーに目撃されたというわけですね。
じゃがりこがきっかけで生まれたコーナー
そのメールを読んで、水川が怒りはじめました。
「お前、遅刻したくせにじゃがりこ食うな!」
その怒りは発言とともにどんどんエスカレートしていきます。
「遅刻してんのに味のするもん食うな。反省してる人間はじゃがりこ買わないんだよ!」
なんで遅刻した人間が新幹線でじゃがりこ食ってんだと。遅刻した人間らしく静かに反省してろと。そういう主張なんですけど、これは本当に子どもの主張というか、論理もなにもない動物的な怒りです。反省することと、じゃがりこを食うことは、結びつけて考えることじゃない。まったく関係ないことですから。
遅刻するなっていうキレ方だったらわかります。ちゃんと起きろとかね。でも遅刻したやつが新幹線でじゃがりこ食うなって、これはもう暴論ですから。どういう意味? 本当に首をかしげますよ。
だってねえ、じゃがりこ食わなかったら私、劇場に間に合うんですか? じゃがりこ食わずに反省した雰囲気をだしていたら、新幹線のスピードがあがるんですか? そんなシステムありませんよ。ちゃんと決められたスピードで走って、時間通りに到着するわけです。
じゃがりこ食ってようが食っていまいが、正座してようが寝てようが、私が乗ってるのぞみの速さは変わらないんですよ。ただのやつあたりです、水川がしてるのは。
そもそも、私は反省していますからね。大阪の劇場のスタッフのみなさん、一緒に出演する芸人さん、マネージャー、もちろん相方の水川にも、全方位に対して申し訳ないと思っています。それなのになんでじゃがりこ食っただけで、こんな怒られなきゃならないんでしょう。
この日から、TBSラジオ「空気階段の踊り場」に「なんか怒られました」のコーナーができました。私が新幹線でじゃがりこ食ってたらなんか知らないけど水川に怒られた、というような話をリスナーに投稿してもらうものです。このときから今までずっと続いているコーナーです。
あれから4年たちましたけど、水川はまだ納得してない。やっぱり暴論を振りかざす人って他の人の意見をきけないんですね。あいつはいまだにたぶん自分が正しいと思ってます。あいつが自分の間違いに気づくまで「なんか怒られました」は続くんだと思います。
没頭飯
鈴木 もぐら

2026/3/30
1,650円(税込)
183ページ
ISBN: 978-4591189290
\空気階段・鈴木もぐら、「食」を通して自身を語る初の単著/
【内容紹介】
飯を語ることは、己を語ること――「食」に対する探求心と愛が凝縮された大人気連載を書籍化。父親・母親との思い出から、部活動、股関節手術、交友関係まで、「食」を通して著者の人生が垣間見られます。語り下ろしエッセイ3本、書き下ろしエッセイ4本も追加収録。2023年にダイエット成功後、我慢せず食べたものをXで紹介し話題を呼んだ「復讐」投稿も収録。装画・挿画は大橋裕之氏(漫画家)。
【目次】
■脳が「うまい」に支配される
■唐揚げ、米、つけあわせ、奇跡のリズム
■チン管問題
■北海道マウントをとられた夜 ――――オズワルド畠中の得意げな顔
■じゃがりこは太陽
■なにがどううまいのか、わからない、でもうまい「高円寺飯」
■サカナマフィアの影
■父親のまなざし
■「ずずずず」と「どぅるん」が卵かけご飯の醍醐味である
■高円寺居酒屋24時間ループ
■母と怒りとポークソテー、三位一体の味
■目、唇、歯、舌……うまさのバトンがつながっていくラーメン二郎
■おなじメンバー、おなじ話 ――――鬼越トマホーク・坂井さんとの日々
■瓶ビールの流儀 ――――岡野陽一さんの場合
■雀荘飯
■全芸人が感謝している喫茶店
■本物のハンバーガー ――――ミネタさんが教えてくれた味
【「はじめに」より抜粋】
ふと、「この本は、なんのために書いているのだろうか?」との問いが、頭に浮かんできた。飯を愛する読者の方のお役に立てれば、入院中に暇に駆られている方の暇つぶしになれば、この本で皆さんの飯を少しでも楽しくできたら、様々な答えが浮かんできたが、まず頭に浮かんだ答えは、こんなものであった。
「私はうまいもんを食うために生まれてきた!」
と叫ぶ母に、あなたから生まれた証として、私からこの本を贈る。
