米電気自動車(EV)専業メーカー「テスラ・モーターズ」が、7月1日に時価総額が約22兆円に達し、トヨタ自動車を抜き自動車業界トップに躍り出た。

「テスラの昨年の販売台数は37万台程度。トヨタグループの5%にも満たないものの、電動化など100年に一度の変革期をリードする存在として投資家の期待を集め、株価が1年で4倍以上になった」(市場関係者)


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 だが、イーロン・マスク氏(最高経営責任者)が2003年創業のテスラを軌道に乗せるまでの道のりは平坦なものではなかった。

「開発コスト高で赤字が続き、18年に経営危機と言われ、米証券取引委員会がマスク氏の非上場化発言は詐欺に当たると提訴したことも。しかし、昨年に中国・上海の工場を稼働させ量産体制にめどをつけ、昨年7〜9月期以降は黒字です」(自動車アナリスト)

 今回、7億ドル(約750億円)の報酬を得るマスク氏。実は他にも巨額の報酬を貰う日本人がいる。

「水野弘道氏(54)です。今年4月にテスラの社外取締役と監査委員に就任した水野氏は、取締役の初期報酬として通常株2778株を6月18日付けで得られる権利を付与されており、全株の権利を行使していれば約3億円を手にしている。彼を選んだ理由をマスク氏は『持続可能な責任ある投資の思想的リーダーだから』と語っています」(大手証券幹部)

マスク氏は「ブラボー、正しいことをした」と水野氏を絶賛

 水野氏とはどんな人物か。

「大阪市立大学卒業後、住友信託銀行に入行し、シリコンバレーやニューヨーク支店に勤務。その後、イギリスの投資会社でパートナーを務めながら、京都大学のiPS細胞研究所で資金調達のアドバイザーも務めていました」(同前)

 そして15年、日本の年金150兆円を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)で最高投資責任者に就任した。

「水野氏は環境などの持続可能性を重視したESG投資を積極的に推進し、昨年12月、空売りを行う投資家への外国株の貸出を停止した。自社株の空売りに悩まされていたマスク氏は、水野氏を〈ブラボー、正しいことをした〉と絶賛。ただ、水野氏はGPIFの高橋則広理事長(当時)との確執も囁かれ、今年3月末にGPIFを去った」(同前)

 水野氏に聞くと「数年前からテスラへの参画を求められていました」と答えた。

 一方、水野氏の古巣のGPIFはコロナ禍の影響で、1〜3月期は17兆円を超える巨額損失を計上した。コロナ第二波が懸念される中、宮園雅敬理事長ら新経営陣の顔色は冴えない。

 水野氏の方が先を見通していたようである。

(森岡 英樹/週刊文春 2020年7月16日号)