「お金を残す気は一切ない」〈資産8,000万円〉71歳男性、誰にも相続させない痛快すぎる〈老後資金の使い道〉
内閣府によると、日本の個人金融資産の約6割を60代以上のシニア層が保有しています。しかし、その莫大な資産の大半は「子や孫に残す」ために使われず、抱え込まれているのが現状です。そんななか、数年前に妻を見送り、現在は地方都市で一人暮らしを送るヒロシさん(仮名・71歳)は、〈資産8,000万円〉を保有しながら「残してやる気は一切ない」と語ります。資産を使わず抱え込むシニアが多いなか、「自分のためにお金を使い切る」老後のあり方とは。
「お金は自分の人生のために使う」〈資産8,000万円〉71歳男性が老後に“世界一周”
数年前に妻を見送り、現在は地方都市の賃貸マンションで一人暮らしを送るヒロシさん(仮名・71歳)。長年勤めた会社からの退職金と、コツコツと積み上げた運用益などで、現在の金融資産は約8,000万円に上ります。
「年金は月約20万円を受け取っています。家賃や生活費など、普段の出費はこの年金だけでカバーできている状態です」
十分な老後資産を持ちながらも、ヒロシさんの日常は質素です。スーパーの特売日を活用して日々の生活費を抑え、派手な趣味で散財することもありません。
では、ヒロシさんは8,000万円もの資産をどうするつもりなのでしょうか。
ヒロシさんは子どもたちに対して、「1円も残さず使い切る」といった宣言まではしていないものの、「自分の人生のために、できるだけ使わせてもらう」と日頃から伝えているといいます。
「私の生きがいは海外旅行なんです。妻が元気なころからよく旅行していましたが、ここ数年は一人でリュックを担いで世界一周を経験しましたし、それ以外にも年に3〜4回は海外へ行っています」
娘にも「借用書」を要求…子とのドライで適度な関係
ヒロシさんには独立した子どもたちがいますが、親の資産をアテにするようなことはありません。それは、ヒロシさんが昔から「親と子はお互いに依存しない」というスタンスを貫いてきたからです。
それを象徴するエピソードがあります。長女が30代のころ、独立して事業を立ち上げるための準備資金として、ヒロシさんは約300万円の援助を求められました。しかし、ヒロシさんはそれをただ「贈与」することはありませんでした。
「無条件で資金を与えるつもりはありませんでした。贈与ではなく貸付として、親子の間であっても金銭消費貸借契約書を作成してサインさせました。貸し借りをうやむやにせず、貸したお金は数年かけて全額回収しました。子どもたちとの関係は、昔も今もこの適度な距離感のまま変わっていません」
「金を残してやる気は一切ない」71歳父の揺るぎない覚悟
ヒロシさんのように「財産を残さない」という決断は、一見すると親の身勝手な振る舞いに見えるかもしれません。しかし、ヒロシさんに迷いはありません。
「子どもたちには自力で生きていく力をつけさせました。だからこそ、私が残りの人生を節約してまで、金を残してやる気は一切ありません」
お金は自分の人生を味わい尽くすためにある。リュック一つで世界を飛び回り、残りの人生を余すことなく謳歌するヒロシさんの姿は、資産に縛られない「老後の生き方」を私たちに教えてくれます。
富裕層ほど「お金を使えない」ジレンマ…これからのシニアの“生き方”
内閣府の「年代別 金融資産保有残高について」という資料によると、日本の個人金融資産約1,700兆円のうち、約6割(約1,000兆円)を60代以上のシニア層が保有しています。しかし、その莫大なお金が「生きたお金」として世の中の消費に回っているかというと、必ずしもそうではありません。
内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」において、シニア層に「将来的な財産の使い道」を尋ねたところ、全体では「遺族等へ財産を残したい(35.9%)」と「財産は自分のために使いたい(33.0%)」がほぼ拮抗しています。
しかし、これを保有する「金融資産額別」に見ると景色が一変します。金融資産が「1,000万〜2,000万円未満」の層では「遺族に残したい」と答えた人が42.4%ですが、「5,000万円以上」の富裕層になると、64.6%もの人が「遺族に残したい」と回答しているのです。
つまり、資産を持てば持つほど不動産などの容易に現金化できない実物資産の割合が増える事情もあるにせよ、結果的に「自分のために有意義に使う」のではなく、そのまま抱え込んで次世代へ残す道を選びがちな傾向がデータからも浮き彫りになっています。
さらに、親が亡くなるころには子もすでに50代や60代になっている「老老相続」の問題もあります。シニアからシニアへと相続された財産は、再び老後資金として貯蓄に回ってしまい経済が停滞しがちです。また、親の潤沢な資産を無条件で与えれば、子の自立心を奪ってしまうというヒロシさんの懸念にも頷けます。
8,000万円もの資産がありながら「遺族に残す」という富裕シニアの多数派に同調せず、子の自立を厳しく促し、余剰資金を自身の生きがいである海外旅行(同調査において「趣味やレジャーの費用にお金を使いたい」人は32.4%)に注ぎ込むというヒロシさんの決断。
それは一見ドライに見えますが、偏在した日本の資産を社会に還流させ、次世代の真の自立を促すという意味で、これからのシニアの「お金の使い方のロールモデル」を示しているといえそうです。
[参考資料]
内閣府「年代別 金融資産保有残高について」
内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」
