自身4度目のW杯出場を目指すネイマール。奇跡は起きるか。(C)Getty Images

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 ワールドカップ開幕を間近に控えたブラジルで、ひとつの論点となっているのが「やはりネイマールは招集されないのか」という問題だ。5月18日にエントリーメンバー26人が発表されるが、その可能性は高くないと見られている。
 
 本人も厳しい状況を感じ取っているのか、どこかナーバスになっていて、ブラジル全国リーグの試合で審判や対戦相手の選手を罵ったり、果てはスタンドのファンとやりあったり...。かつて絶対的エースとして君臨した男の現状には、複雑な感情を抱かざるをえない。
 
 2010年8月にセレソンに初招集されて以降、長きにわたりエースとして攻撃を牽引してきた。通算128試合に出場して記録した79得点は、キング・ペレの77得点を上回るブラジル代表の歴代最多記録である。
 
 しかしながら、ペレがワールドカップを3度制覇して「フットボール史上最高の選手」という評価を確立したのに対し、ネイマールはいまだ世界一のタイトルに手が届いていない。
 
 振り返れば、最大のチャンスは自国で開催した2014年大会だった。エースとして躍動し、グループステージでは4得点を挙げたが、準々決勝のコロンビア戦で背中に危険な膝蹴りを受けて負傷離脱。準決勝のドイツ戦(1-7)には出場できず、スタンドから歴史的惨敗を見届けることになった。
 
 2018年大会では、同年2月に負った右足首骨折の怪我から回復途上で本大会に臨み、コンディション面の不安を抱えたままプレー。ファウル欲しさにダイビングを繰り返して世界中のメディアとファンから嘲笑された。ラウンド・オブ16までの4試合で2得点を記録したものの、準々決勝ベルギー戦で決定機を仕留めきれず、チームも1-2で敗退した。
 
 2022年大会もまた万全とは言えなかった。足首を痛めてグループステージの2試合を欠場しながら、ラウンド・オブ16の韓国戦で復帰弾。準々決勝のクロアチア戦でも延長後半に美しいゴールを決めて勝利を手繰り寄せたかと思われた。しかし、試合終了直前に追いつかれ、PK戦の末に敗退。決定的なヒーローにはなりきれなかった。
 
 その後は負傷離脱が続き、2023年夏にパリ・サンジェルマンからアル・ヒラル(サウジアラビア)へ都落ち。しかもほとんどプレーできず、キャリアは停滞を余儀なくされた。度重なる故障については、専門家の多くが「私生活の乱れが最大の原因」と指摘する声も少なくなかった。
 
 昨年初めに古巣サントスに復帰し、ワールドカップ出場を目標に再起を図ってきたが、筋肉系のトラブルを繰り返し、コンディションが上がらない。4月末時点で、ブラジル全国リーグの13試合中6試合の出場に留まっている(3得点・2アシスト)。
 
 昨年5月末にカルロ・アンチェロッティがセレソンの監督に就任して以降、ネイマールは一度も招集されていない。指揮官は「ネイマールに限らず、コンディションが100%でない選手は招集しない」というスタンスを一貫しており、3月末のフランス戦、クロアチア戦も招集外だった。
 
 現在のネイマールは、“奇跡のワールドカップ出場”という可能性に望みをつなぎながら、ピッチに立っている状況だ。もしその道が閉ざされた時、どのような“決断”を下すのか――現役引退を発表してもおかしくない。
 
文●沢田啓明
 
【著者プロフィール】
1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。 

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