《銃声が聞こえ、時間の感覚が歪み…》トランプ氏夕食会銃撃、緊迫の瞬間 「(容疑者は)極端な集中を示す傾向があった」との証言も
4月25日、ワシントンで開かれたホワイトハウス記者協会晩餐会の会場で銃声が響いた。会場は一時騒然となった。
【写真】発砲音が響いた後、騒然とする夕食会の会場。他、発砲事件で取り押さえられたとされる男性
ドナルド・トランプ米大統領が出席していたが、直後に警護当局によって退避させられた。暗殺未遂の可能性も含めて捜査が進められている。
米当局によれば、コール・トーマス・アレン容疑者(31)が現場で拘束され、複数の武器が押収されたとされる。容疑者は家族宛てに犯行声明のような文を送っていて、トランプ政権への不満を記していたというが、詳しい動機は明らかにされていない。
事件現場となったワシントン中心部のヒルトンホテルは、毎年恒例のホワイトハウス記者協会晩餐会の会場として知られ、政治権力と報道機関が同席し、時にユーモアを交えながら緊張関係を和らげる場として機能してきた。
その伝統的な行事の最中、銃声が響いた意味は小さくない。単なる治安事件にとどまらず、「政治空間」そのものの安全性が揺らいだ形となった。
関係者によれば、会場内は当初、例年通りの雰囲気に包まれていたという。軍楽隊の演奏が響き、政治家や記者たちがテーブルを囲む中、形式的な挨拶と軽い冗談が交わされていた。しかしその流れは、一瞬の破裂音で断ち切られた。
「最初は何の音か分からなかった。次の瞬間には全員が伏せていた。笑っていた空気が、一瞬で消えた」(出席していた記者の一人)
別の記者は「数秒前まで交わされていた会話が完全に意味を失った」と語った。
ホテル関係者はその瞬間をこう証言している。「なにが起ころうとも冷静に対処する訓練は受けていたが、実際にその状況が来ると身体が先に動いた」「(銃声が聞こえ)時間の感覚が歪み、何が起きているのかを把握する前に行動していた」──。
会場は短時間で危機対応の現場へと変わった。
容疑者の人物像については、まだ断片的な情報しかない。CNNは、アレン容疑者は名門・カリフォルニア工科大学の卒業生で、学習塾の非常勤講師として働いていたと報じている。また、一部報道や関係者の証言として、ソフトウェア開発に関わっていた可能性が取り沙汰されているが、公式に確認されたものではない。
容疑者については「静かで目立つことのない人物だった」と語る近隣住民がいる一方で、「内向的だが、特定の関心領域には強い集中力を見せるタイプだった」とする証言もある。知人だという人物は「議論になると急に強い確信を見せることがあった。関心を持った事柄には極端な集中を示す傾向があった」と述べている。
ワシントンという政治の中枢で起きた今回の事件は、単なる治安事件を超え、トランプ政権を脅かしている。公式行事という象徴的空間に、暴力が侵入したという事実そのものが重い。
◆高濱賛(在米ジャーナリスト)
