高市早苗首相

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【全2回(前編/後編)の前編】

 衆院選で歴史的勝利を成し遂げた高市早苗首相(64)。長期政権も夢ではないが、その内情を探ってみると、党内に意外な不協和音が……。

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「政治は数、数は力なり」との言葉を遺したのは田中角栄元首相だが、かの今太閤をしのぐ「数の力」を得た高市首相が、いよいよ選挙後初の本格的な国会論戦に挑もうとしている。

 今回の衆院選で自民党は、結党以来最多となる316議席を獲得。衆院議員定数の3分の2に当たる310議席を優に上回るため、ねじれが続く参議院で仮に与党法案が否決されても、衆院で再可決が可能なのだ。

高市早苗首相

 2月18日召集の特別国会を受けて、新聞やテレビは軒並み高市政権が持つ「数の力」への懸念を示し、少数派である野党との丁寧な国会審議を求めている。

 だが、召集日の5日前にあたる13日、高市氏は首相官邸で自民の国対委員長・梶山弘志氏(70)、幹事長代行の萩生田光一氏(62)をはじめ党幹部たちに「新年度予算の早期成立」の実現を求めて、意気込みを語っていたという。

 官邸関係者が明かす。

「時間は15分ほどでしたが、総理は“今回の選挙結果は国民の皆様の民意だ”と繰り返し言っていました。印象的だったのは“国民の皆様の生活を守らないといけない。そのためにも、私は予算の年度内成立を諦めていません”と述べたこと。総理自身の思いが込められているのか“諦めていません”という部分は、語気を強めていた気がします」

高市首相が出した“異例の指示”

 これには少々解説が必要だろう。そもそも今回の衆院選は、来年度予算を決める重要な通常国会の審議を先延ばしする形で行われた。

 例年、通常国会は3月末までに新年度予算の審議を終えるのが慣例だが、今回は選挙で開会が遅れた。与野党で論戦を交わす時間を考慮すれば、予算成立は早くても4月下旬。新年度のスタートに間に合わず、国の予算が執行できない異常事態となるのは必至だ。

 物価高対策が急がれる中で国民生活に影響を与えていいのか。そうした批判を気にしてか、高市氏は党幹部に“異例の指示”を出したというのである。

 先の関係者が続ける。

「総理が言われていたのは国会の質問時間を減らすという大ナタでした。今まで予算委員会の質問時間は、全体を100とすれば与党30野党70の割合になるように配慮していた。しかし、今回の選挙で与党は議席の3分の2以上を獲得。今までとは逆に与党70野党30でもおかしくない。その形にした上で、与党が長く質問しなければ、おのずと全体の質問時間は少なくなって、予算成立が早まると」

 さらに、高市氏はこんな“奇策”も口にしたという。

「テレビ中継が入る予算委員会の集中審議を外したらどうかとの提案がありました。総理いわく“直接的には予算に関係しない質問もある。それは予算審議の中でやらなくても、成立後にいくらでも時間が取れる。集中審議を外せば、もっと短くなる”と仰っていました。総理は今まで過分に野党に配慮していた分、今後は合理的に国会運営を行って、年度内の予算成立を目指していきたいと考えている。かなり思い切った判断をされたと思いました」(同)

 自身に降りかかる活動実態が不明瞭な宗教法人を利用した多額の違法献金疑惑などを、追及されたくないという思いもあるのか。いくら国民の生活を守るという大義があろうと、野党からは“国会軽視だ”という批判が続出しそうだ。

“総理が電話に出てくれない”

 政治部デスクによれば、

「質問時間が削られたら国会審議は形骸化してしまう。いったい国会議員は何のためにいるのか、となります。国会審議の在り方は戦後長い年月を積み重ねて築かれてきた歴史がある。審議時間など与野党間で積み上げてきた慣行があるのに、それを時々の政権の都合で変えられるとなれば、なんでもありになりかねません」

 しかし、万能感にあふれた高市氏をいさめる声は、官邸や自民党内からも表立って聞こえてこないという。

「とにかく選挙で大勝した高揚感に高市総理は浸っていて、なんでもやってやろうという様子ですね」

 とは、自民党関係者。

「今回の解散総選挙で、高市総理は事前に木原稔官房長官には相談していますが、党の麻生太郎副総裁や鈴木俊一幹事長、それに連立相手の日本維新の会には声すらかけていません。本来あり得ない話ですが、“勝てば官軍”で誰も総理にモノを申せない空気になっている。ここ最近は、側近とされる木原氏でさえ“夜になると総理が電話に出てくれない”と困っています」(同)

 いったいどういうことか。

「『首相動静』でも分かる通り、公務を終えた高市総理は会合も入れず連日公邸に引きこもるのが常です。自らの体調を考慮しながら、政策の勉強や夫の介護に専念したいのかもしれませんが、周囲とのコミュニケーションが不足しています。党内だと萩生田氏、維新から総理補佐官に抜てきされた遠藤敬(たかし)氏などからの電話にもなかなか出ないことがあるそうです。高市総理自身、自ら電話をかけるタイプでもないので、政権発足から半年もたっていないのに周囲で不満がたまり始めています」(同)

 今は国民の支持率が高く、政権内での不協和音は表面化していないが、いずれ内部崩壊が起きる潜在的リスクを抱えているというのだ。

「最後は体がボロボロになってつぶれてしまった」

 先の衆院選後のNHKなどの世論調査では、高市内閣の支持率は政権発足直後の7割近くにも達し「高市一強」が揺らぐ気配はない。このままの支持率で、2年後に控える参院選や自民党総裁選、4年先の衆院の任期満了による総選挙を乗り越えれば、「長期政権」の可能性も視野に入る。

 その見込みはあるのか。

「今の高市さんは、第1次内閣の安倍(晋三)さんと似ているように見えますね。当時の安倍さんは、とにかく一人で全力疾走してしまい、最後は体がボロボロになってつぶれてしまったそうです」

 と語るのは、第2次安倍政権で官房副長官補を務めた兼原信克氏である。

「どうも高市さんは一人でなんでも抱え込むタイプに見えますね。政策の勉強に励むのは悪いことではありませんが、人に会って話を聞く時間がなくなってしまう。もっとさまざまな人からバランスよく生の情報を取らないと、どこに国民の不満がたまっているのか、民意はどうなっているのか把握できません。総理が国民の信頼を得るためには、政財界のみならず、ありとあらゆる分野の人々から情報を得る必要があるのです」

 実際、高市氏が師と仰ぐ安倍元首相は、名実共に憲政史上、歴代最長となる長期政権を築いた。

 2006年9月に第1次安倍内閣を発足させた後、わずか1年で持病悪化を理由に退陣するが、12年12月に再登板。20年9月に第4次内閣の幕を閉じるまで、国政選挙や党総裁選で連戦連勝を重ね、通算3188日の在職記録は戦前戦後を通じて最長である。

 後編では、第2次安倍政権が内部から崩壊しなかった理由と、高市首相に足りないモノについて報じる。

「週刊新潮」2026年2月26日・3月5日号 掲載