米中対立激化で光が当たる脱M7の有望セクター<今中能夫の米国株ハイテク・ウォーズ>
ネガティブな話題が多くなってしまったが、潜在的な成長力を考えれば、今後もアメリカが世界をリードしていく構図は変わらないだろう。ただし、リーマン・ショック以降10数年続いたアメリカ一極集中の相場が今後も続くのかどうかは、再検討する時期を迎えているのではないだろうか。これまでアメリカの個人投資家たちは、S&P500種指数やナスダック100といったインデックスに長期投資をして成果を上げてきたし、今でも大多数の個人投資家が「これこそ正しい投資」だと信じている。だが、この"常識"は一度疑ってみても良いだろう。
アメリカの主要インデックス投資が成功した背景には、M7に代表されるハイテク大手企業の急成長があった。だが一つ確かなことは、10数年前のハイテク大手といまのハイテク大手では、事業規模も時価総額もケタが違うということだ。これだけ大きくなってしまった企業が、今後も同様の成長を続けることができると考えるのは無理がある。
翻って世界の株式マーケットを俯瞰して見ると、長年低迷していた中国株に復活の兆しが見え始め、軍備増強が不可避となり、規制緩和を急速に進める欧州株も今年に入って上昇基調が鮮明になっている。さすがに最近は中国株、欧州株ともトランプ関税の影響で下落しているが、当面の投資対象と見た場合、高値から急激に調整した米国株に比べて中国株も欧州株も上値にしこりがないことも大きい。つまり米国株一辺倒ではなく、視野を広げて見ることが必要なのではないかということだ。個別銘柄ならアリババやテンセント、バイドゥといった中国のハイテク大手などが挙げられるが、むしろ両地域の関連ETFを慎重に選別しながら投資するのが賢明と言えよう。
アメリカ企業なら、成長余地が限られるM7ではなく、ネットフリックス 、スポティファイ・テクノロジー などのエンターテインメント企業や、NATO(北大西洋条約機構)との契約が伝えられたパランティア・テクノロジーズ が要注目だ。フォーティネット 、クラウドストライク・ホールディングス などのネットワークセキュリティ関連も有望だろう。これらのセクターを中心に、AI導入の効果が事業拡大に直結し、今後も高い伸びが期待できる企業を探してみたい。
いずれにせよ、AI開発の潮流が変化し、トランプ政権が世界をかく乱する中では、昨年まで通用した常識が通用しない。今後は、米国株ならハイテク大手から準大手、中堅クラスの企業へ、さらに米国株に投資していた資金の一部を中国株や欧州株へと、投資対象のすそ野を拡大していくことが求められるのではないか。もちろんそのためには、投資対象が限られていた昨年とは違い、より慎重な銘柄選別が必要になるはずだ。
十分なキャッシュポジションを持っておくことも重要だろう。いま、アメリカの機関投資家や個人投資家は、MMF(マネー・マーケット・ファンド)に7兆ドルの資金を待機させているという。混乱相場から距離を取り、次の投資チャンスを慎重に探っているわけだ。したがって日本の個人投資家がとるべきなのは、昨年までの成功法則にとらわれず、MMFや長期の米国債などの安全資産をポートフォリオに組み入れながら、焦らず慎重に投資対象を吟味していくというスタンスなのではないだろうか。
【著者】
今中能夫(いまなか・やすお)
楽天証券経済研究所チーフアナリスト
1961年生まれ。大阪府立大学卒業。岡三証券、シュローダー証券、コメルツ証券などを経て2005年より現職。1998~2001年、日経アナリストランキングソフトウェア部門1位、2000年、同インターネット部門1位。ハイテク業界、半導体業界を対象にした綿密な企業分析に定評がある。楽天証券の投資家向けサイト「トウシル」で注目企業の詳細な決算分析動画およびレポートを随時、公開中。
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