以前は結婚式場で働いていたものまね芸人・坂本冬休みさん。トップの売上を出すも体調を崩して退職を決意すると、さらに4、5年寝たきりに近い生活を過ごした時期があったとか(全3回中の3回)

【写真】「並ぶとそっくり!?」坂本冬美さんと冬休みさんの貴重な2ショット(10枚目/全15枚)

いじめられてもサラッと返した技とは

結婚式の司会をしているとき

── ものまね芸人として活躍されている坂本冬休みさん。人の特徴に気づく人、気づきにくい人がいる中で、坂本さんはいつから人の特徴を掴むのがうまかったと思いますか?

坂本さん:たぶん、幼稚園くらいのときから人の特徴を掴むというか、観察力みたいなものがあったような気がします。口調や仕草など、目に映るものだけではなくて、その人の魅力やマインド、思考がだんだん見えてくるんですよ。相手に興味を持って、相手をリスペクトして、ものまねを通してその場の空気を楽しくするのが子どものころから好きでしたね。

── 小学生のときも明るく元気な子どもだったのでしょうか。

坂本さん:クラスでもにぎやかで元気なタイプだったと思います。でも、目立ったぶん、嫌われる人には嫌われました。男の子には泥を投げられたり、カバンに石を詰められたり、上履きに画びょうを入れられたり。要はイジメですよね。理由はなく、ただ気に食わなかっただけなのかもしれません。でも私は私で、技で返しましたね。

── 技とは?

坂本さん:意地悪をしてきた相手を逆手にとって、変な顔をして返すとか。または、相手のものまねをして笑いで返すんです。暴力的な返しは絶対にしなかったけど、自分ができることで自分を守りました。

自分だけでなく、クラスに馴染めない子がいると、やっぱり気になって。その子が花の髪飾りをつけていたら、私も同じものを一緒につけて学校に行くんです。「あなたはひとりじゃないよ」って伝えたかったし、一緒の格好をすることでみんなの注目を集めたら、その子も会話に入れるし、みんなと盛り上がれるかなと思ったんですよね。

── その後、中学、高校を卒業すると進学はせず、居酒屋やパブ、遊園地のレストランでアルバイト生活をして過ごした後、結婚式場の契約社員として働くことに。

坂本さん:結婚式場を選んだ理由は2つ。当時は地元の千葉に住んでいたのですが、東京に出て働いてみたかったのが1つ。2つ目の理由は、遊園地で働いたことで人の笑顔がたくさん見られたので、自分も人を笑顔にする仕事がしたいと思ったからです。そこで浮かんだのが結婚式場でした。結婚式場では、はじめは配膳や結婚式のプランナーをしながら、途中から結婚式の司会もすることに。私を教育してくださった先輩が、プランナーとしてトップの売り上げを出していたので、私も見よう見まねで先輩の仕事を覚えながら、気づいたら自分も売上トップになっていましたね。

── ここでも人を観察する力が働いたと。

坂本さん:いかせたと思います。ただ、結婚式場では7年くらい働きましたが、途中で頑張りすぎて、体調を崩してしまったんです。朝から晩までギッシリ働いて、結婚式を何件も成約させましたが、固定給だったので給料は変わらない。たとえば、コンパニオンだったらバイト代プラス指名料が入るとか思いますが、そうしたこともなくひたすら業務に追われる日々でストレスが溜まってしまったんですよね。仕事自体は好きでしたが、やっぱり労働と対価が見合っていないような気がして、「退職したい」と思いきって会社に伝えました。しかし、会社の返事は「変わりはいるからいいよ」って。

治療費を払えず借金が膨らみ

結婚式場を退職した後、不調を感じながらものまね芸人の仕事をしていたとき

── それはショックな言葉ですね…。

坂本さん:かなりね。もともと通院しながら仕事をしていましたが、退職の件でさらに体調が悪化してしまい、そこから4、5年ほぼ寝たきりに近いような生活になりました。家の中は壁を伝いながら歩く状態でしたが、収入がないので、仕事はフリーの司会者として、別の結婚式場にスポット的に入らせてもらうことに。でも、1回働くと1週間は寝込んでしまい。体調が少し戻ったらまた働くのですが、すぐに寝込んでしまうという繰り返し。病院に通っても全然よくならないし、お金はほとんど治療費に消えてしまって。どんどんお金がなくてサラ金や金融公庫で借りました。今はもう返しましたが、当時トータルで1000万くらい借りたと思いますよ。

── 心身は、どんな症状が出ていましたか?

坂本さん:首の痛みや頭痛、吐き気、耳鳴りやめまい、呼吸困難など、ありとあらゆる症状に襲われました。病院だけではなく、接骨院や鍼、マッサージ、10分手を当てたら5万する気功や占いとか、トータルで32か所まわりましたね。でも、どこに行っても全然ダメ。各所で安定剤や眠剤をもらって一瞬楽になった気がするんですけど、すぐに戻ってしまうんです。ストレスで体重は10キロ以上増えて顔もパンパン。強烈だったのは、ある夜、家にひとりでいたら呼吸が苦しくなって慌てて救急車を呼んだときのこと。運ばれた病院ではインターンの先生しかおらず、先生が「なんだかよくわからないですね」と言うんです。こっちはパニックだし、先生の言葉が頭にきちゃって、運ばれた病院で「救急車を呼んでください!ほかの病院に行きます!」って、病院にいるのに別に救急車を呼んでもらったんです。ちょっと異常な行動だったと思います。でも、そのぐらい苦しかったし追い詰められていて。精神科にも何か所か通いました。結局32か所回って、33軒目の治療院で診てもらってから、やっと体が楽になりました。

── 何が違ったのでしょうか?

坂本さん:ハッキリした原因はいまだにわかりませんが、薬を全部見直したんです。今までいろいろな場所で診てもらって、たくさんの薬を飲んでいましたが、今の状態にあっているのか、もう一度見直そうと先生がおっしゃってくださったんです。結果的に薬のコントロールがうまくいったのか、33か所目にしてようやく体調がよくなっていきました。

── 現在はものまね芸人として活動されていますが、体調はいかがですか?

坂本さん:今は元気に過ごせています。当時の経験があったからこそ、心身の状態に常に耳を傾けながら、自分でリラックスする時間も作るよう意識していますね。今はものまねのお仕事を続けながら、講演会の仕事も増えています。自分が経験した出来事をお話しすることによって、何か皆さんの参考になればいいなと思っています。

PROFILE 坂本冬休みさん

さかもと・ふゆやすみ。1971年生まれ、千葉県出身。坂本冬美さん公認のものまねタレントとして、各イベント、ホテルディナーショー、企業様周年祝い、お祭り、交通安全イベントなど全国各地で大活躍中。

取材・文/松永怜 写真提供/坂本冬休み