経済アナリストの森永康平氏

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 新NISAの開始により、投資への機運が高まっている今だからこそ、悪事を働こうとする者も後を絶たない。特殊詐欺の被害額は年間400億円にも及ぶと言われるが、そこに知らずして巻き込まれてしまったという経済アナリストの森永康平氏が警鐘を鳴らす。

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【写真】森永氏と“森永康平を名乗る人物”とのLINEでは、不自然な日本語で投資を勧誘するメッセージが送られてきた

〈高騰する銘柄を教えます〉〈100万円を1億円に増やす方法〉

 SNSを眺めていて、こんな謳い文句の広告を目にした方も多いのではないだろうか。そこに著名人の写真がついていて、いわば“お墨付き”ともあれば、有益な投資法の案内かと思ってしまいそうだ。しかし、

「『必ず儲かる』などという記載があったら、どれも間違いなく詐欺です。昨今、著名人の名前や写真を無断使用した詐欺広告が増えているので、注意が必要です」

経済アナリストの森永康平氏

 そう語るのは、経済アナリストで、金融教育事業を行う株式会社マネネCEOの森永康平氏。まさに、その“無断使用されてしまった”著名人の一人である。

「昨年あたりでしょうか。知り合いから『こんな広告が出てるぞ』という連絡をもらって、はじめて気づきました。〈簡単に儲かる5銘柄!〉〈正しい投資方法はこちら!〉といった文言とともに、私の写真や、あるいは父(経済アナリストの森永卓郎氏)と一緒に写っている写真などが掲載されているので、まるで私たちが投資を勧誘しているかのような内容になっているのです。もちろん、我々がそんな怪しい勧誘を行うわけはありませんし、そもそもライセンス無しに銘柄推奨を行うこと自体、違法になってしまいますからね」

明らかな“偽物”なのだが……

 このような悪質な無断使用は、広告だけに留まらない。

「SNS上で私になりすましたアカウントが、〈毎週10%以上のリターン〉〈100名の生徒を募集中〉などと謳い、投資の勧誘を行ったり、個人情報を入力させたりするためのLINEに招待しようとするケースも本当に多い。私の投稿の返信欄を利用し、まるで私が連続投稿をしているように見せかけていることもあります。運営会社に通報しても焼け石に水で、その状態は今も続いています」

 結果、毎日のように問い合わせがあり、その対応に追われてしまっているという森永氏。「こんなうさんくさい投資スクールで稼いでいるのか」と汚名を着せられてしまう事態もしばしば発生している。

「冷静に考えてみれば、明らかに偽物だとわかるはずです。投資の世界に『絶対儲かる』なんてありえませんし、そんなものがあるなら人に教える必要なんてないですよね。例えば『毎月、最低でも5%のリターンが期待できる』という話があれば、『それくらいならありえそう」と思い込んでしまうのもわかるのですが、預けた額が初月に5%分増え、翌月にはさらに5%増え……と繰り返していくと、年利でいえば単純計算で80%くらいになります。定期預金の年利が0.01%の時代に、そんなことはありえない。あるいは、自分でちょっとネット検索をしてみれば、いくらでも同様の事例がヒットするはずですから、すぐに詐欺だとわかるはずです」

「森永康平さんという人をご存じですか?」

 森永氏が知らずして詐欺に巻き込まれていたケースは、これだけではない。自身のYouTube上の企画で、ある“潜入調査”を行ったときのことだ。投資詐欺を働く営業マンに偽名を用いて自ら接触し、直接対面したのだが――。

 そのときのやりとりを以下に再現しよう。

森永 もし今100万買うって言ったら、何か特典をつけてもらえませんか?

営業 これ出しちゃっていいのかな……。特別な情報を教えるLINEグループというもの
がございまして。

森永 なんですかそのグループって。

営業 「この株が上がる」とか、極秘情報を教えるLINEグループです。投資家とか有名人の方とかも、こういうところで情報を得てますので。

森永 その教えてくれるプロの方って誰なんですか。

営業 今一番注目されている経済アナリスト、森永康平さんという人をご存じですか?正直、我々プロから見ても、一番できるアナリストですね!

森永 ……。これは本当に本人なんですか?

営業 もちろんですよ。極秘のグループですので。

 あろうことか、森永康平氏本人を前に、「森永康平による極秘LINEグループ」があると明かしてきたのである。

「こんな形でも利用されているんだなと……。私は本人ですからなんとも言えませんが、専門家の名前を出して特別感を演出することで、信用を得ようとしているのでしょう」

心理的な揺さぶりも

 だが、笑い話では済まなくなってきているのが現状だ。

「昨今、メールやライン、SNSなど、あらゆる手を使って勧誘し、対面で投資話をするケースが増えています。比較的若い方がそのような被害に遭いやすく、私のところに寄せられた相談の中には、『もう500万円ほど振り込んでしまった』というケースまでありました。こうした背景を受けて、私自身に届いた勧誘にあえて乗っかってみたり、相談を寄せられた際にその詐欺師と直接会ってみたりするようになりました。その際のやりとりの音声を公開することで、彼らの手口を皆様に知っていただけたらなと」

 営業トークには、時代に合わせたワードが散りばめられているという。

「『新NISA』によって投資がしやすくなった話はもちろん、『仮想通貨』『NFT』などの流行りの言葉を使ってきたり、あるいは『大阪万博に関わる銘柄は国の補助が入るから儲かる』などといった“それっぽい話”をしてきたりするので、何の知識もなかったら、信じてしまう人もいるのかもしれません」

 心理的な揺さぶりをかけてくることも。

「相手が2人組で来ることも多々あります。そういう場合、最初は2人とも優しく接してきていたのに、こちらが投資を渋る様子を見せた途端に片方が急変して、『こんなに時間を使ってやったのに』と怒り出すことがあります。すると、もう片方が『まあ落ち着いて』『こいつもそれだけ儲けてほしいと思ってただけなので』などとなだめてくる。こうなると無意識のうちに、『怖い人から助けてくれた』という意識が芽生え、妙な信頼関係みたいなものが生じてくるんですよね。当然、相手は演技としてやっているのですが、こういう“劇場型”の勧誘にも注意が必要です」

 こうして巧妙化するやり口から、どう身を守ればいいのか。

「対面で営業を受けてしまった際は、必ず一度持ち帰ることです。相手は即決を求めてきますが、その場で同意することさえ避けられれば、後で詐欺だと気づけるはずです。また、投資におけるリターンの相場感を身に着けておくことも重要だと思います。日頃から身近な人とお金に関する話をしていれば、詐欺師が提案してくる投資のおかしさが、感覚的にわかってくるのではないでしょうか」

“偽・森永”との決着は……

 様々な潜入調査を繰り返してきた森永氏だが、実は先の“偽・森永康平” によるLINEグループにも潜入することができた。

「極秘グループと言っておきながら、お願いしてみたら割と簡単に入れてくれました。グループ内でのやりとりを経て、今は“偽・森永”と個人LINEを行えるようまでになっています。『この株の買い価値は高い』『すでに株価が上昇しています。ご購入いただきましたでしょうか?』などという怪しいメッセージが、私の顔写真と名前から送られてくるので、複雑な感情です……」

 ツッコミどころは、やりとりの内容だけに留まらない。

「『上昇株を受け取りたいですか?』『このような強力な株を取得したい場合は、メッセージを残してください!』というメッセージが送られていましたが、“上昇株を受け取る”“強力な株”など、日本語としてちょっと不自然ですよね。過去に、同様の事例でLINEの相手と通話をしたことがあるのですが、そのときもイントネーションが明らかに日本人のそれではなかったので、ふざけてこちらが中国語で話してみたら、ふつうに理解されて話が進んでいました。日本人を騙そうとするのは日本人だけ、というわけではないのでしょう」

 この“偽・森永”との決着は、近日中にYouTubeで動画をアップロード予定とのこと。

詐欺師も手を変え品を変え騙そうとしてきますから、我々がすべてのケースについて警鐘を鳴らすのは現実的ではありません。そのため、各々が自分の財産を守れるよう、注意を払っていただきたいと思っています」

デイリー新潮編集部