ホットハッチの頂点 ホンダ・シビック・タイプRの能力を探る RS3 ゴルフ R i30 N 4台比較 中編
実用性はシビック・タイプRが1番
フォルクスワーゲン・ゴルフ R 20イヤーズとアウディRS3の内装素材は、いずれも質感が高い。RS3は、ランボルギーニを強く意識しているのかもしれない。直線的でエッジーだ。
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ヒョンデi30 Nは今回の4台では1番安価で、インテリアへの不満は相対的に低くなる。硬質なプラスティック製部品も目立つが、ステアリングホイールには、ドライブモードのショートカットが備わる。

グリーンのアウディRS3 スポーツバックと、ホワイトのヒョンデi30 N、ライトブルーのホンダ・シビック・タイプR
ほかの3台のメーターはモニター式に置き換わったが、i30 Nはアナログメーター。今まで以上に魅力的に映る。ドライビングポジションは低く、ホンダ・シビック・タイプRに次いで好ましい。雰囲気は少々地味といえるが、頑張りすぎると稚拙になりかねない。
車内を比較すると、シビック・タイプRの完成度の高さが浮き彫りになる。本物で飾りすぎることなく華やか。日本的な美しさがある。
実用性でも、シビック・タイプRが1番。リアシート側は前後にゆとりがあり、荷室の容量にもアドバンテージがある。ベースのシビック自体が、人間工学やパッケージングに優れている。
RS3は荷室が明らかに小さい。リアアクスルに、RSトルクスプリッター・デフを搭載するためだろう。左右のタイヤへ駆動力を任意に分配するため、マルチプレートクラッチが2セット組まれている。ホットハッチとしては、見逃せない犠牲といえる。
車内の観察を終えて、次は走りへ移ろう。特性の違いは比較的大きいものの、簡単に順位はつけにくいようだ。
速さと身のこなしでドライバーに応える
まずは、i30 N。自社開発のデュアルクラッチATは、フォルクスワーゲン製のものほどシャープではなく、ダイレクトに操っているという感覚を薄めている。ホットハッチを存分に楽しみたいなら、マニュアル・トランスミッションが欲しい。
シャシーにはフェイスリフトで改良を受けているが、依然として、平滑ではない英国郊外の路面へトリッキーに反応する。ドライバーの興奮を誘う側面もあり、すべてを否定するものではないが。どこか、1990年代半ばの日本製スポーツカーのようだ。

ホワイトのヒョンデi30 Nと、ライトブルーのホンダ・シビック・タイプR
ドライブモードで特性を選べるものの、フロントのリミテッドスリップ・デフの効きが強い。幅235のピレリPゼロは、4気筒ターボが発揮する280psを受け止めきれない。落ち着きに欠ける足まわりと相まって、ロデオマシンに乗っているような気分になる。
とはいえ、i30 Nにも好ましい領域がある。グリップとパワーを同調させれば、速さと身のこなしでドライバーに応える。ステアリングホイールの重み付けには、一貫性が乏しいけれど。
勢制御では及ばなくても、即時的な反応は明らかな強み。カーブが連続する手強い道へ、飛び込みたいと思わせる。フロントノーズが少々重いものの、上手にキッカケを与えることで、勢いよくシャシーを旋回させられる。
テールを自在に振り回す楽しさを、久しぶりに思い出した。表現力が豊かで速い。でも不器用。4台では最も生々しく、エンターテイメント性は高い。
クルマとドライバーとの間に一定の距離感
ゴルフ R 20イヤーズは、すべての面でi30 Nを凌駕することは間違いない。だが、惹き込まれにくい。
マグナ・シュタイア社が開発したトルクベクタリング機能付きのリアアクスルは、確かに高性能。豪快なドリフトを可能としているが、少しメカニカル過ぎる。クルマとドライバーとの間に、一定の距離感がある。

フォルクスワーゲン・ゴルフ R 20イヤーズ(英国仕様)
ステアリングホイールの反応には一貫性があるものの、実感が乏しい。ドライビングポジションはもう少し下げたい。ゴルフ GTIから乗り換えれば、エネルギッシュさに感銘を受けるだろう。しかし、他の3台のようなライブ感は得にくい。
フォルクスワーゲンのデュアルクラッチAT、DSGは素晴らしい。4気筒2.0Lターボエンジンは、 42.7kg-mのトルクを2100rpmから6500rpmの広い回転域で生み出す。333psというパワーを、5600rpmから900rpmも放ち続ける。呆れるほどに速い。
ダンパーの減衰力は煮詰められている。ドライブモード次第では、ワイルドなエグゾーストノートも響かせる。ステアリングホイールにはRボタンも付いている。
ワインディングをひとのみにできるが、アウトバーンを200km/hでかっ飛ばした方が似合う。ホットハッチとしての楽しさで、シビック・タイプRには届いていない。
A地点からB地点までの速さは、ゴルフ R 20イヤーズが勝つだろう。洗練もされている。エネルギッシュなRS3より、直感的にハイスピードで運転できることも事実だが、魂のようなものを感じにくい。
触れるべき項目が多すぎるシビック・タイプR
リアデフがトルクを意欲的に外側のタイヤへ分配し、バランスを巧妙に調整しているさなかで、挙動を予測しやすいのはゴルフ R 20イヤーズ。他方、パワフルなRS3は、常にそうとは限らない。
とはいえ、RS3が独自の高水準にあることは明らか。直列5気筒ターボエンジンを横向きに搭載した、普段使いできるエキゾチック・モデルだ。対してシビック・タイプRも、先代の栄光に甘んじることなく能力を更に磨いてきた。

グリーンのアウディRS3 スポーツバックと、ライトブルーのホンダ・シビック・タイプR
東のホンダと、西のアウディ。前輪駆動と四輪駆動。4台による比較は、2台による対峙となりそうだ。
新しくFL5型へ世代交代したシビック・タイプRには、触れるべき項目が多すぎる。フライホイールは18%軽量化され、ターボは14%も回転慣性を減らし、先代譲りのK20C型2.0L 4気筒VTECエンジンをシャープに回す。
フロントサスペンションは剛性が高められ、タイヤを理想的な角度に保つ能力は25%増している。ステアリングコラムは60%強固になり、19インチ・アルミホイールも高剛性のアイテムが採用されている。マニュアル・トランスミッションも再設計された。
ホワイトボディは、従来より15%剛性を上昇。スタイリングも大幅に一新され、低くワイド。35mm広げられたトレッドを、筋肉質でありながら引き締まったボディラインが包む。車重は1429kgしかない。
全体のプロポーションも好ましい。知らない人が見れば、縦置きエンジンの後輪駆動だと勘違いするかもしれない。
この続きは後編にて。
