記憶にも新しい昨年の東京2020オリンピック競技大会。日本に訪れたシンガポール放送局「チャンネルニュース・アジア」のマシュー・モアン記者が、自身のツイッターに「スポーツと#Tokyo2020から逸れるけど、昨夜、コンビニ…

記憶にも新しい昨年の東京2020オリンピック競技大会。日本に訪れたシンガポール放送局「チャンネルニュース・アジア」のマシュー・モアン記者が、自身のツイッターに「スポーツと#Tokyo2020から逸れるけど、昨夜、コンビニエンスストア最高のアイスを見つけた……」と投稿し、海外のフォロワーから興味や関心を向けられたチョコモナカジャンボ。パッケージにもローマ字表記で「CHOCO MONAKA JUMBO」で2020年からパッケージデザイン内に組まれ、2021年にはモナカのパリパリを世界に訴求するためのWEB動画「チョコモナカジャンボ Pari Pari 5Days 英語版(日本語字幕)」を公開しました。

WEB動画「チョコモナカジャンボ Pari Pari 5Days 英語版(日本語字幕)」

日本のみならず、海外認知も獲得したこのチョコモナカジャンボは年間約2億個が売れて(0.16秒に1個売れている計算)おり、今年は50周年という節目の年です。今回の「シズリーナ荒井のアイス見聞録」では、チョコモナカジャンボのアイス史の中で、いつからモナカのパリパリにこだわるようになったのか。また、なぜそこまでパリパリにこだわるのかを深掘り取材してきました。

パリパリは森永製菓の鮮度マーケティングにあり

今回取材に協力してくれたのは、森永製菓株式会社冷菓マーケティング部の中村望さん。どんなお話が聞けるのか楽しみです!

まずは、チョコモナカジャンボ進化論と題しまして、チョコモナカジャンボの“こだわり歴史”についてお聞かせください。

左から筆者、キョロちゃん、冷菓マーケティング部の中村望さん

●チョコモナカジャンボについて

50年前の1972年に「チョコモナカ」として発売を開始しました。発売当初は50円で、モナカの山は8つ(現在は18)ありました。その後、1980年に「チョコモナカデラックス」、1996年に今の「チョコモナカジャンボ」という名前になりました。

●モナカの食感“パリパリ”にこだわったのはいつから?
2000年代初頭にモナカの鮮度に対する取り組みを始めました。その時には、すでに現在のようなモナカの山が18山になり、アイスの中に入っているパリッとした食感なのに口どけの良い板チョコが入ったチョコモナカジャンボでした。

その頃は、大手ビールメーカーのCMで打ち出していたキャッチがビールの「鮮度」のフレッシュさを大々的に訴求をされていてその時に、「アイスの鮮度」について社内でも考えるきっかけとなりました。

アイスの品質チェックをする際にチョコモナカジャンボを製造工場から会社に直送して品質の確認を行っていますが、当時はお店で売られている商品と食べ比べるとモナカの食感が全く違っていたそうです。時間の経過とともに温度管理や水分の状況によって品質に影響を特に受けやすい製品なので、とにかくできたてがおいしいアイスなんです。

この工場でできたての状態をお客様にも届けたい!と思いましてそこから、「チョコモナカジャンボ」の個性って何か?を徹底的に突き詰めて考えた結果、チョコモナカジャンボの絶対的な個性はその「パリパリ」としたチョコとモナカの食感であると再認識し、2001年から鮮度マーケティングを開始しました。

「好きなアイスは?」と聞くと「チョコモナカジャンボ」という中村さん

●具体的に鮮度マーケティングとは?
アイスの大半は賞味期限がないので、冬に大量に生産して夏にその在庫を売ることも。でも、チョコモナカジャンボは在庫を抱えてしまうとアイスの水分がモナカに移行し湿気てしまい、チョコモナカジャンボの最も魅力的な個性が無くなってしまいます。

あまり知られていないことだと思いますが、チョコモナカジャンボは完全受注生産と言ってもいい製品なんです。

徹底的に無駄を省き、作り置きをせずに“工場での製造から出荷まで5日以内を目指す”この仕組みはアイス業界にとっても異質です。「パリパリ食感=鮮度」そのために考え出されたのがこの仕組みであり、森永製菓では「鮮度マーケティング」とよばれています。

チョコモナカジャンボの品質保持のため、取り扱い上の注意事項が記載されている

2003年にはパッケージにはじめて「パリパリ」を記載し、新聞の天気予報を参考にしてアナログで販売計画を立てていました。2017年からよりモナカのパリパリを守るために一般財団法人日本気象協会(以下、日本気象協会)とタッグを組み、予想気温とそれにあわせたチョコモナカジャンボの出荷量予測をしています。日本気象協会は、過去の気温と販売データを分析し、今後の予想気温からチョコモナカジャンボの需要を予測しています。

生産量を決めるのは気象データだけではなくテレビCMの投下量や販促イベントも需要に大きく影響するため営業担当が製造部門とも連携し、アイスの製造ラインの増減を決めることで徹底的に作り置きをしないように努力をしています。

さらに出荷した後にまでモナカの状態(パリパリ)にこだわっていて、研究員が店頭で売られているチョコモナカジャンボを会社に持ち帰り、店頭に届いた時にどこまでパリパリ感が保たれているかを確かめるため、水分計で定期的にチェックします。

パッケージの「赤と緑」にもこだわり

●モナカのパリパリへのこだわり以外にも何かありますか?
大量陳列や大量発注した売り場づくりはしていません。普通だったら狙うべきところをチョコモナカジャンボはあえてしません。これが鮮度マーケティングにも繋がります。売れるからエンドに出したいというお得意先のありがたいお声もいただきますが、モナカのパリパリのためにお断りさせていただくこともあります。

チョコモナカジャンボといえばこの赤と緑が印象的なパッケージ

チョコモナカジャンボのパッケージで変えてはいけないのが…。「赤と緑」のジャンボのロゴですかね。ミドル世代以降のシニアの方からの支持が大きく、パッケージの色を手掛かりに選んでいただいていると思っています。

アイスの売り場は様々商品が並んでいてその中からチョコモナカジャンボの「赤と緑」のジャンボロゴが定着しているので大きさとともに絶対に変えられません!2020年11月から冬限定商品(今だけチョコ増量)で黒っぽいパッケージデザインにしたことがあり、「こんなにデザインを変えてしまっても大丈夫ですか?」「お客様はわかりますか?」と営業担当から心配の声が上がりましたが、「赤と緑」とジャンボのシズル(パリパリ!)が入っていれば大丈夫!ということで、解決しました。

●パッケージに採用された「赤と緑」にこだわった理由とは?
実は、30年間チョコモナカジャンボのデザイナーは同じ方で、その方によると普通アイスクリームは清涼感をイメージさせる寒色系(青色)を使うことが多いのですが、チョコモナカジャンボは、モナカらしさを強調するようなデザインにしたい、という森永側のコンセプトがありました。

モナカの焼き菓子としての香ばしさを前面に出すためにアイスクリームという冷たさよりも焼き菓子としての暖かさを感じるような暖色系のカラーを使い冬の暖炉の火の前で食べるようなイメージがきっかけで、モナカのパリパリよりも前から「赤と緑」の配色にはかなりこだわっていたようです。

パリパリDNAを内定式で組み込まれた中村さん

森永製菓社員がモナカのパリパリにこだわる秘密がついに明らかに!
私自身が森永製菓へ入社したときに一番感動体験として残っていることは内定式の時に内定者全員に工場から直送された“チョコモナカジャンボ”を品出し前のダンボールから直接手渡されて食べたことです。あの時のパリパリ食感が忘れられずにいます。ぜひ、体験してみてください!

実食する筆者「モナカがこんなにもおしゃべりだったとは! 店頭で売られているモナカもパリパリ食感で満足していましたが、工場から送られて来たばかりのダンボールから取り出された瞬間のチョコモナカジャンボはまた格別ですね!」
中村さん「内定式での感動が再び! むちゃくちゃ嬉しかった!」

■シズリーナ荒井メモ/ジャンボのあの部分だけを特別に試食したら感動MAX
今回特別に、チョコモナカジャンボとバニラモナカジャンボのモナカの皮だけを試食させていただきました。見た目の色合いは違いますが、工場で取り違い防止するためにモナカの色をあえて変えているそうです。しかし、食べ比べたら風味の違いがありました。チョコモナカジャンボのモナカの皮は小麦粉を使用されており、バニラモナカジャンボのモナカの皮にはアーモンドパウダーが練りこまれ、口にした時に洋菓子のような香ばしさや甘みを感じられました。

モナカのみを食べる筆者

モナカの裏面をじっくり見ることがなかったので衝撃的な事実がここにも! 実は、モナカの裏面の形状にもこだわりを発見!

割れにくいようにと設計されたモナカ

●モナカのパリパリファースト主義の失敗から学ぶ超進化とは
実は、我々のモナカの食感であるパリパリファーストが仇となってしまい、モナカが割れやすいという課題に直面しました。ある意味、モナカが割れてしまうということはモナカがパリパリであるがゆえのことであり、鮮度マーケティングとして問題はありません。

しかしながら、消費者の手元に届き食べていただく時のモナカの形状にもこだわりたいと思い、モナカが割れにくいようにモナカの裏面の曲線構造に変化を加えて改良を重ねてさらにモナカファーストになっています。

●まとめ
工場直送便のできたてチョコモナカジャンボを食べた感動体験を消費者にも届けたいという気持ちが社内での共通認識としてパリパリファースト(=鮮度)につながっていることが今回の取材で知ることができました。

パリパリファーストからモナカファーストと日々進化を続けるチョコモナカジャンボは今年で生誕50周年。ロングセラー商品になるにはブランドを守るだけではなく、守りながら攻める姿勢がチョコモナカジャンボファンのハートを鷲掴みしているに違いありません。

文・写真/シズリーナ荒井

シズリーナ荒井

初めてアイスを食べたのは“1歳1ヵ月”(証拠映像資料有り)。人生で52,000個以上ものアイスを食べた記録を保持するアイスマニアであり、日本一アイスを愛するスーパーアイスマン。

どうしたらより美味しくアイスクリームを食べられるかを真剣に考え、氷菓子(アイス、ソフトクリーム、ジェラート、かき氷)の研究を開始。氷菓子は原材料が同じでありながら製品温度が異なることで感じ取れる味が違うことを発見!

食べ方をデザインする“イートデザイナー”として市販アイスのアレンジレシピや企業同士の商品コラボを手がけており、“かけ合わせグルメ”「雪見カレーヌードル」の考案者として、SNSで話題に!

年間4,000種類以上のアイスクリームをテイスティング。アイス現場のすべてを知りつくすアイスジャーナリストとして活躍中!2021年6月には著書『コンビニ&スーパーのアイスが極上スイーツに! 魔法のアイスレシピ』(KADOKAWA)を出版。