「やばい会社はすぐ辞めろ」「とりあえず3年」結局どっち? プロによる転職理由の○×診断
ひと昔前に言われていた「とりあえず3年」という言葉。でも今は「ヤバい会社はすぐやめろ」なんて意見もよく聞く。とはいえ短期間で転職しようとしたら、面接の時に必ず理由を聞かれるし…
結局どっちなの?ということで、転職活動のプロに「早期であっても認められる転職理由の境界線」について聞いてきました!
お話を伺ったのは、既卒・第二新卒の転職サポートをおこなっている、株式会社UZUZ専務取締役の川畑翔太郎さん。
ライター・中村:
本日はよろしくお願いいたします!
川畑さんのもとへ相談に来られる方は、転職希望者に問題がある場合と、会社側に問題があるケースのどちらが多いのでしょうか。
川畑さん:
あくまでざっくりですが、7:3くらいで転職希望者に問題があるケースのほうが多いです。
そもそも100%会社側に原因があるケースはほぼないので、たいていは転職を希望されている方にも原因があると思ってもらうほうがよいかと思います。

ライター・中村:
そうなんですね。では、転職理由でよく挙げられそうな事例をいくつか考えてきたので、それぞれについて○×でジャッジをお願いできますでしょうか?
川畑さん:
はい、わかりました。
○:会社側に問題あり! 転職理由として妥当
×:自分にも問題があるかも? まずは己を振り返るべし
【ケース?】パワハラ、モラハラだと思えるようなことが横行している
川畑さん:
これは明らかに○です。

ライター・中村:
ですよね。ただ、判断が難しいものもあると思います。たとえば「自分にだけ上司が厳しい」など。
これはハラスメントだと判断できるラインはどのあたりにあるのでしょうか?
川畑さん:
ハラスメントが常態化している(頻繁におこなわれている)かどうかがまずひとつのポイントですね。
あとは、回数が少なかったとしても、第三者から「明らかにおかしい」と思われるかどうかが判断ラインになると思います。
「厳しい環境でこそ力がつく」は正しい。ただし、想定と違った場合は転職を考えてもよい
ライター・中村:
「厳しい環境で耐えた方が力がつく」という考えもありますが、パワハラとの線引きはどのように考えればよいのでしょうか。
川畑さん:
たしかに、筋トレと同じで負荷がかかる環境のほうが力はつくと思います。ただし精神のバランスを崩すのはよくありません。
ポイントは、それが自分の選択かどうかです。

ライター・中村:
どういうことですか?
川畑さん:
その会社の環境のことを事前にわかっていた上で「やっぱり厳しい会社だった」ということであれば、自分が選んだのですから歯を食いしばって耐えたほうがいいと思います。
一方で、入社前に聞いていた話と大きく条件や環境が違った場合などは転職を考えてもよいでしょうね。
ライター・中村:
ありがとうございます。それでは次のケースです。
【ケース?】休日がほぼないうえに、徹夜が多い
川畑さん:
これは基本的には○です。

川畑さん:
提示している休日よりも実態が少ないのはアウトですね。ただ、場合によっては100%マルとも言い切れません。
ライター・中村:
そうなんですか? これは完全に会社側に問題アリなケースかと思ったのですが。
川畑さん:
休日がほぼないのはアウトだと思いますが、制作系の会社だと納期に間に合わせるために徹夜で作業をすることもあります。そういった特徴は事前に業界研究などをおこなっていればすぐにわかるケースが多いです。

ライター・中村:
わかって入社したのなら、自分の責任になりますね。
川畑さん:
厳しい環境だと理解した上で入ったものの、耐えて続けるほどやりたいことではなかったとわかったのなら、もちろん転職もありだとは思います。やってみないとわからない部分もあるので。
今いる会社の問題点を伝えたいときは、まずは自分の反省点を話そう
ライター・中村:
なるほど。ただ、仮に明らかに会社側に問題があるだろうと感じたとしても、転職を希望する会社の採用担当者に伝えるのが難しそうですね…
川畑さん:
そういうときは建前と本音をうまく使い分けるといいですよ。

ライター・中村:
どういうことですか?
川畑さん:
会社側に問題があるような場合は「あの会社のこういうところがダメだった」と外部要因を指摘しがちです。けれど感情が回答に乗りやすく、どうしても人のせいにしているように聞こえてしまう。
ライター・中村:
「この人を採用したら、うちの会社の悪口も言うのでは」と想像してしまいそうですね。
川畑さん:
そこでうまく使うべきなのは“建前の理由”です。退職した経緯に関して自分に全く原因がないということは少ないですし、あえていえば、その会社を選んだという責任もある。なので自分の反省点と改善案から話しましょう。
それだけで納得してもらえなければ、本音の理由として「実はこんなこともあって…」と外部要因も足してあげると、採用担当にも納得してもらいやすいです。
ライター・中村:
なるほど。それは参考になります。
川畑さん:
採用される側とする側で対立するのではなくて、採用担当者の隣に座って話すイメージで面接を進めるといいと思います。
【ケース?】上司は自分の仕事が忙しくて、仕事を教えてくれない
川畑さん:
これは×です。“教えてもらって当たり前タイプ”にあたりますね。この理由だけで転職を考えるのはレベルが低い。

川畑さん:
最近は売り手市場なので、「会社に入ってあげた」と上から目線の方が多いんですよね。教えてもらえない理由が自分にないか、まずは考えたほうがいいです。
ライター・中村:
教えてもらえない原因として多いものはありますか?
川畑さん:
新人に意外と多いのは、「教えてもらって当然」という感じで受け身の姿勢が周りに伝わってしまっているケースです。
ライター・中村:
あー、その雰囲気が出ている新人はイヤですね。一時期話題になった「会社は学校じゃねえんだよ」と言いたくなってしまいます(笑)。
川畑さん:
学校はお金を払って教育を受けるところですが、社会人は会社からお金をもらってその対価を提供する立場なんです。
給料をもらっておきながら「教育してもらえるのも当たり前」と主張するのはおかしいですよね。
【ケース?】やりがいが感じられないので、楽しそうに働く友人がいる会社に転職したい
川畑さん:
これは×です。採用担当者からするとあまり印象がよくない理由ですね。

川畑さん:
私は“隣の芝が青く見えるタイプ”と呼んでいます。
たとえ友だちが楽しんで働いていたとしても、同じ会社に行けば自分も楽しいかというと、そうとは限りません。
ライター・中村:
…というと?
川畑さん:
その人が仕事を楽しめているのは、所属している会社というよりも仕事を楽しもうとするスタンスのおかげかもしれないし、単純に周りの人との関係が良いことが影響しているかもしれません。
まずは、仕事をもっと楽しんだり、働きやすい状況にするためになにか参考にできるところがないかを探してみましょう。環境を変えるのは最後の手段です。
【ケース?】今の仕事は自分に向いていないので辞めたい
川畑さん:
これも×。おそらく“優等生の挫折タイプ”ですね。本当に向いてない場合もありますが、自分で勝手に思い込んでしまっているケースも多いんですよ。

ライター・中村:
どうして「向いていない」と思ってしまうのでしょうか。
川畑さん:
当然ですが、新入社員の頃はわからないことだらけじゃないですか。それなのに周りに助けを求められずに失敗して、自信を失ってしまうんです。
学生時代に勉強ができた人が陥りやすいですね。
ライター・中村:
失敗に慣れてない、ということですかね。
川畑さん:
そうですね。はじめてのことはできないのが当たり前。それを認めて、素直に助けを求めるべきだと思います。
ライター・中村:
「話すのが好きだったから営業をやったけど向いてないと思って辞めた」というような声もよく聞きますが、それはどうなのでしょう。
川畑さん:
仕事の本質を勘違いしていたパターンですね。
ライター・中村:
なぜ勘違いなのでしょうか?
川畑さん:
「話すのが好き」という理由で営業を選ぶ人が多いのですが、営業はただのおしゃべりとは違います。そのギャップにつまづいてしまうことがあるんです。
営業は相手のニーズに自分の提案したいものを紐づけていく“逆算のコミュニケーション” 。そのことに気づいて、コミュニケーションのとり方を変えればうまくいく場合もあります。
ライター・中村:
なるほど。本当に向いてないのか、ただの思い込みなのかを見極めないと、転職しても同じことを繰り返すことになってしまいそうですね。
【ケース?】企画をやりたいが任せてもらえないので、裁量の大きな会社へ移りたい
川畑さん:
おそらくこれは“意識だけ高いタイプ”なので×です。起業家のビジネス書などを読み漁っていた学生が陥りやすいパターンですね。

川畑さん:
頭ではできるつもりなのに周りからの評価が低いと「自分の評価はもっと高いはずだ」と言いがちです。そして「もっと大きな仕事ができる場所に行きたい」と会社を辞めてしまう。
ライター・中村:
うーん。たしかにそういう人は多そうです。
川畑さん:
このような相談をされたときには「むしろあなたは、いきなりその仕事を任されても大丈夫なんですか?」と思ってしまいます。
ライター・中村:
どういうことですか?
川畑さん:
たとえば、新入社員がやりたがるマーケティングや企画は、事業の旗振り的な役割ですよね。
根っこの企画自体がズレていたら、ほかの部分も連動してズレて失敗してしまう。そのせいで会社が傾いたりすることも往々にしてあります。
ライター・中村:
なるほど。「責任が重いことがわかってますか?」という意味ですね。
川畑さん:
はい。逆に、自分がほかの人の企画で動く立場だったとして、新入社員がいきなり「この企画で行きます!」と言い出したら納得しますか?
ライター・中村:
…納得しづらいです。
川畑さん:
転職希望者に聞いても、だいたい「納得できない」と言うんですよ(笑)。
ライター・中村:
矛盾してますね。
川畑さん:
「じゃあどんな人だったら納得しますか?」と聞くと、「経験が豊富」「社内での信頼がある」という答えが返ってきます。
であれば、自分も実績を積んでからやりたいと主張したほうが、実現しやすいことがわかりますよね。
ライター・中村:
たしかにそうですね。
“とりあえず3年”は新人のころの「借金」を返したと判断する基準
ライター・中村:
転職希望者に問題があるケースは、会社・先輩・上司など、相手側の目線に立って考えられていない人が多いように思います。
川畑さん:
そうですね。「とりあえず3年」という言葉がありますが、それは「必ず3年勤めろ」ということではなく、企業側の視点を知るひとつのキーワードだと思っています。

ライター・中村:
どのような「企業側の視点」を反映しているのでしょうか?
川畑さん:
新人が入社して仕事でいきなり成果を出すことは珍しいので、初任給である年間300〜400万円のコストに見合った働きはできていません。さらに採用や教育にコストがかかっているので、入社してしばらくは会社にとって“赤字”なんです。

ライター・中村:
なるほど。
川畑さん:
“赤字”の状態が終わり、会社側にとって“黒字”に変わるのがだいたい3年だろうと。
会社側から見ると「3年勤めた=借金をちゃんと返してくれた」というひとつの基準になるので、「とりあえず3年」と言われているのではないでしょうか。

(横軸が入社からの期間、縦軸が新入社員の生み出している利益。だいたい3年勤めると、入社当初の赤字を返済できると考えられている)
ライター・中村:
すごく納得感があります。
川畑さん:
社員側の感覚としては、2年くらい経って仕事ができるようになってくると「あれ? 自分の働きとお給料、見合ってなくない?」と思ってしまうんですけど、「いやいや、最初の“赤字”分がありますから!」ということなんですよ。
ライター・中村:
「お給料が見合ってない!」と思っていたことが、私にもあります…。反省します。
やはり3年はいないと、転職には不利になってしまうのでしょうか。
川畑さん:
絶対に3年いなければいけない、ということはありません。ただし転職先は「また“赤字”を残して辞めてしまうのでは」と心配しています。
なぜ「3年」と言われているのか会社側の視点を理解して、その上でたとえば「2年で借金を返せるような働きをしました」などと言えるように退職理由や自己PRを準備しておく必要がありますね。
ライター・中村:
ちゃんとそういったアピールができる状況で「この人を採用すれば、うちの会社でもいい働きをしてくれる」と期待してもらうことが大事なんですね。
両極端な意見の狭間でモヤモヤしていた読者には、ぜひ今回のお話を参考にしてほしいです。今日はどうもありがとうございました!
第二新卒・既卒・フリーターの就活/転職サポート|株式会社UZUZ
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〈取材・文=中村英里/取材・撮影・編集=葛上洋平(新R25編集部)〉
