災害時や有事など「緊急事態」、議員任期延長に4党が改憲骨子案…「参院の緊急集会で対応可能」と慎重論も
[論点 憲法改正]<上>
衆院憲法審査会で4月23日、緊急事態条項の集中的な審議が行われた。
「私たちが検討する緊急事態は大規模自然災害やテロ・内乱、国家有事などだ。これらの発生により、国政選挙の適正な執行は困難になる」
自民党の新藤義孝・与党筆頭幹事はこう述べ、緊急事態に対応する条文を新設すべきだと主張した。
緊急事態条項は、大災害などの緊急時に政府による平時とは異なる権力行使を可能とする規定だ。
自民、日本維新の会、国民民主、公明の4党などは2025年6月、緊急事態条項に関する憲法改正の骨子案をまとめた。緊急事態を自然災害や感染症蔓延(まんえん)、武力攻撃など五つに分類し、国政選挙の実施が長期間困難と認められる場合、内閣が「選挙困難事態」と認定して国会議員任期を延長することが柱だ。議員任期は選挙期日の前日までとし、選挙困難事態の期間経過後は選挙を速やかに実施する。
11年3月の東日本大震災では、直後に控えていた統一地方選の一部が特例法の制定で延期されたが、憲法で衆院4年、参院6年と規定されている国会議員任期は、改憲しない限り延長できない。海外では憲法で緊急事態条項を設ける国が多く、ウクライナはロシアの侵略を受け、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領や国会議員の任期を延長した。
議員任期延長には与党に加え、国民民主が賛同し、公明とチームみらいも議論に前向きだ。
ただ、参院側では、自らの権限抑制につながる恐れがある議員任期延長への慎重論が根強い。憲法54条2項が衆院解散中に緊急の必要がある場合、内閣が参院の緊急集会の開催を求められると規定しているためだ。参院自民中堅は「緊急事態には参院の緊急集会で対応可能だ」と強調する。
緊急集会では、緊急事態が長期にわたった時に対応できないとの意見もある。憲法は衆院解散から総選挙までは40日以内、選挙から国会召集までは30日以内と定めており、緊急集会の開催は最大でも70日程度との解釈があるためだ。
与党内には、内閣による緊急政令の議論をセットで求める意見も多い。緊急政令は内閣が定めるもので、法律と同等の効果を持つ。大災害などで国会が開けない時に、土地・建物の収用や移動に関する緊急政令を出し、避難や復旧作業の迅速化を図るといった内容が想定される。
自民は18年にまとめた改憲4項目で、緊急政令の規定を設けるべきだと主張し、維新も賛成の立場だ。新藤氏は「国と国民を守るための究極の備えとして議論を深めるべきだ」と指摘する。一方、内閣の権限強化という側面もあり、野党を中心に「権力の乱用につながる」と反対意見が根強い。
国民民主はオンライン審議の導入などで国会機能を維持できると主張する。公明も慎重姿勢で、4党などの骨子案にも緊急政令の規定は入らなかった。中道改革連合も反対している。参政党は感染症蔓延が含まれる緊急事態条項の創設に反対の立場だ。
緊急事態条項は衆院憲法審で議論が重ねられているが、残された論点は多岐にわたる。特に緊急政令では各党の意見の隔たりが大きく、合意形成に向けた議論が必要となる。
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衆院選で自民党が大勝したことを受け、憲法改正の機運が高まりつつある。憲法記念日に合わせ、改憲の主要テーマを分析する。
