OBS

写真拡大

冷たい3月の海から聞こえてきたのは、消え入りそうなSOSの声だった――。大分市佐賀関の港で、係留ロープにしがみつき海面に浮かぶ高齢男性が救助された。

【写真をみる】大分市佐賀関の転落現場、当時を振り返る内田さん

救い出したのは、付近に勤める「海のプロ」たち。機転を利かせた見事な連携プレーが、一人の命を繋ぎ止めた。

「おーい」風に混じる微かな異変

異変に気づいたのは、海運会社「日本マリン」の内田優さん(40)。3月18日午後2時20分ごろ、船の点検作業のため会社近くの港に向かった際、風の音に混じって聞こえる微かな『おーい、おーい』という声を耳にした。

不審に思い周囲を捜索すると、岸壁と船を結ぶロープを頼りに、懸命に浮いている男性の姿があった。

内田さんは「船に乗り移ろうとしていたところ、人の声がした。近づくと、男性の顔と手だけが水面から出ている状況だった」と当時を振り返る。

「自力では登れない」即座の判断

水面から岸壁までは約2メートルの高さがあり、1人での救助は困難だった。内田さんは、直ちに社内の同僚に携帯電話で応援を要請。急いで事務所からはしごを用意して現場に戻ったが、男性はすでに体力を消耗し、はしごを登る力さえ残されていなかった。

駆けつけた同僚4人と合流した内田さんは、瞬時に次の行動に出る。港に停泊していた漁船に飛び乗り、海面に近い船上から3人がかりで男性を引き揚げた。

救助後、到着した救急隊が岸壁と船の間にはしごを取り付け、男性を陸上へ移送。一時、体は冷え切っていたものの、搬送先の病院で無事に回復した。

勇気と行動力に「感謝状」

男性は翌日、家族とともに同社を訪れ、元気な姿で感謝を伝えたという。

内田さんは「偶然見つけたんですけど、無事救助することができてよかったです。こういったことがないのが一番なんですけど、今後も困っている方がいれば躊躇なく声をかけ、手助けできる心を常に持っておきたい」と安堵の表情を見せる。

大分東警察署は4月28日、この勇気ある行動と的確な判断を称え、内田さんら5人に感謝状を贈呈した。