AIの進化が社会全体を激変させる

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 チームみらいの高山聡史幹事長は2月25日、衆議院で代表質問を行った。みらいは先の衆院選で11議席を獲得し、代表質問の枠を獲得。2月20日に開かれた会見で記者が初となる代表質問の論点を問うと、安野貴博代表は「AI失業の話は、国を左右していく重要な論点になっていくと思います。そうした新しい論点に対して積極的に訴えていくということをまずやりたい」と意欲を見せていた。(全2回の第1回)

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【写真を見る】「あぁ、なるほど…」「えっ、そんな仕事も?」 ChatGPTが導き出した「10年後に激減する職業」

 近年、AIの性能が急上昇しており、場合によっては“人類の脅威”と受け止める世論も増えてきた。安野氏が言及したAI失業はその代表例だろう。担当記者が言う。

AIの進化が社会全体を激変させる

「私たち日本人にとって衝撃的だったのは、東京・渋谷区の『ライフプロンプト(Life Prompt)』という会社が、今年度の大学入学共通テストを複数の最新生成AIに解かせた結果でした。6教科15科目の得点率は何と97%に達し、9科目が満点だったのです。日経新聞は1月20日の記事で『もはやAIは難関大学に入学できるだけの知能を備え、幅広いデスクワークを担える能力を改めて示した』と伝えました」(註)

 日経の記事で注目すべきは《幅広いデスクワークを担える能力を改めて示した》の部分だろう。すでにAIは様々な人間の仕事を代行することが可能になっており、AI失業は現実の課題であって未来の話ではない。

「アメリカでは早くもAI失業が発生しています。ニューヨーク連邦準備銀行が昨年4月に発表した報告書によると、22歳から27歳までの大卒以上は失業率が5・8%。労働者全体の失業率4・0%と比べて1・8%も上回りました。特に『コンピューターサイエンス』を専攻した若者の失業率が6・1%、『コンピューター工学』の若者は7・5%と、共に平均の5・8%より高かったのです」(同・記者)

「ブルーカラーミリオネア」

 これまでアメリカではIT企業が好景気を牽引してきた。大学でコンピューターを学んだ学生が新卒で採用されれば、新入社員でも年収1000万円は当たり前だった。

「ところがAIの急速な発達で、初歩的なプログラミングなど基礎的な業務はAIに任せられることが分かりました。このためIT企業が新卒採用を控え、アメリカで若者の失業率が上昇したのです。この流れは加速する一方で、グーグル、マイクロソフト、メタ、インテル、IBM、JPモルガン・チェースといった有名・名門企業もAIによる業務効率化と人員削減を推し進めていることが判明しています」(同・記者)

 結果、アメリカでは「ホワイトカラー」の就業状態が厳しさを増している。その一方、AIに置き換えられない「ブルーカラー」の仕事は脚光を浴びている。

 建設、配管、運送などの業界では年収が数千万に達する労働者も出現しており、「ブルーカラーミリオネア」と呼ばれている。

 では、AIはAI失業がどれくらいの規模に達すると予測するのだろうか。ChatGPTに「2030年までに世界と日本でどれくらいの人がAIを原因として失業するのか?」と質問してみた。

「激減する職業ランキング」

 ChatGPTの回答は以下のようなものになった。

「2030年までに世界では最大3億人の就労者がAIの影響を受け、うち1億人から数千万人に失業のリスクが増加する。日本でも失業者が一時的に増える可能性があり、全労働人口の数%から10%の職務がAIに置き換わる。日本の労働人口は約6700万人のため、仮に10%と仮定すると600万人から700万人の規模で失業者が発生するか、転職が必要な事態となる」

 具体的には、どのような業種で人間が不必要になるのか質問すると、ChatGPTは「10年後に激減する職業ランキング10」の作成が可能だと返答した。作成を依頼して表示されたのが、以下のリストだ。

【1】データ入力オペレーター、請求書処理担当、経理補助
【2】問い合わせ窓口やカスタマーサポートなどのコールセンター
【3】一般的な翻訳家、文字起こし担当者
【4】SEO記事ライター、商品説明文作成
【5】銀行の窓口担当、住宅ローン審査、金融事務
【6】スーパーのレジ、コンビニ店員、チケット販売員
【7】組み立て、検品、仕分けなど工場の単純作業員
【8】タクシー運転手、配送ドライバー
【9】不動産仲介業
【10】旅行代理店スタッフ

 さらに「意外に危ない」職業として、税理士、会計士、行政書士、司法書士を挙げた。

接客も可能なAI

「これまで『AIはどれくらい人間の仕事を奪うのか』という議論が起きると、『AIはデータ分析や映像解析なら得意だが、対人コミュニケーションは人間のほうが優れている。そのため人に接する仕事はAIに置き換えられない』との指摘が少なくなかったのです。ところが今回、ChatGPTの回答にはコールセンター、店員、不動産仲介業など、まさに人とのコミュニケーションが必要な仕事も含まれています。実際にAIを使った人ならご存知でしょうが、人間との雑談も難なくこなします。さらにAIアナウンサーも『人間が原稿を読んでいるのと遜色ない』と評価されるほど能力が向上しています。こうした技術を組み合わせれば、AIは相手と対話しながら接客することも可能なのです」(同・記者)

 接客業か非接客業かは、もはや判断の基準にはならないというわけだ。ではChatGPTは何を基準に「AIに置き換わる職業」を挙げたのだろうか。質問してみると「定型的であり、ルール化が可能で、大量処理が必要な仕事」との回答だった。

 例えばコールセンターを考えてみよう。「購入した商品に不具合がある」と顧客が苦情電話をかけてきた場合、あくまでも「商品の不具合」が話題の中心であり、芸術や国際政治について討論するわけではない。つまり「定型的」だと言える。

「定型的」だからこそ、人間のオペレーターが苦情に対応する場合でも「マニュアル」が定められている。つまり「ルール化が可能」な仕事だというわけだ。

“エリート”が失職する可能性

「大量処理」なら、例えばクマを駆除した自治体に無礼な抗議電話が殺到した時などは、まさにAIの出番だろう。人間の自治体職員なら対応に忙殺されて疲弊し、精神的に追い詰められても不思議ではない。だがAIなら、たとえ1億人から罵声を浴びせられても淡々と処理するはずだ。

 そして税理士、会計士、行政書士、司法書士といった「さむらい業」であっても「定型・ルール・大量処理」の判断基準から「AIと置き換えが可能」判断したのだという。

 こうした職業は国家試験に合格した人しか携われず、高い能力の持ち主というイメージが今も根強い。知的エリートが担う高度な仕事と思われており、それは人間の尺度だけなら確かにその通りなのだ。

 だが帳簿の作成やチェック、各種書類の作成といった業務は、まさにAIにとっては「定型的であり、ルール化が可能」な仕事だろう。おまけにAIなら大量の業務を極めて早く処理してしまう。人間の「さむらい」が敵うところではない。

 依頼主に対するアドバイスも重要な業務だが、ある程度であれば雑談を交えながら自動音声で難なくこなしてしまうのは前に見た通りだ。

 これだけでもAIは我々人間にとっては充分な脅威だと言える。ところが駒澤大学経済学部准教授で経済学者の井上智洋氏は「ChatGPTの回答は集合知的というか、現在のネット上で流布している言説を中心にまとめたものだということに注意が必要でしょう」と指摘する。

全人類が失業

 井上准教授は大学でコンピュータ・サイエンスを専攻し、AIに関するゼミに所属していた。その後、マクロ経済学を専門とする経済学者に“転身”したのだが、AIと経済学の豊富な知見を活かして『AI失業 生成AIは私たちの仕事をどう奪うのか?』(SB新書)、『人工知能と経済の未来』(文春新書)などの話題作を次々に上梓している。

「AIが人間の雇用に悪影響を及ぼすのは間違いありません。しかしながら、それは『ホワイトカラーの仕事はAIに置き換えられてしまうので失業者は増加するが、ブルーカラーなら雇用は維持される』といった限定的なレベルではありません。『肉体労働も含めて多くの人間の生産活動がAIとそれを組み込んだロボットによって自動化され、経営幹部など少数の人間を除くと、全人類が失業する』という世界が確実に到来します。私たちは今すぐ、失業に備えて準備を始める必要があるのです」(同・井上准教授)

 第2回【みずほFG「5000人削減」の衝撃 企業に必要な人間は「トップと役員、少数の営業担当ぐらい」…AIの爆発的な進化がもたらす「人類総“無職”時代」のリアルを気鋭の経済学者が解説】では、全人類が失業した未来社会で、果たして私たちはどうやって生きていけばいいのか、そして人類は何にアイデンティティを見出すのか、という極めて根本的で重要な問題について詳しくお伝えする──。

註:大学入学共通テスト、OpenAIは9科目満点 得点率97%でGoogleに勝利(日本経済新聞電子版:1月20日)

デイリー新潮編集部