多くのファンに愛され、ラグビーW杯日本大会は大盛り上がりを見せた【写真:荒川祐史】

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元日本代表主将、廣瀬氏が日本大会を総括

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会は、決勝で南アフリカが32-12でイングランドを破り、史上最多タイとなる3度目の優勝を飾った。9月20日の開幕から続いた44日間の熱戦は幕を下ろした。今大会ではホスト国の日本が躍進。攻撃ラグビーでアイルランド、スコットランドというティア1の強敵を次々に倒し、史上初の8強進出を成し遂げた。また試合以外でも、日本人らしいおもてなしで世界のラグビーファン、メディア、選手たちの心をつかみ、多方面から絶賛を浴びた。

 大会は大成功に終わったのか。元日本代表主将で、4年前の日本の躍進を“影のリーダー”として支えた廣瀬俊朗氏が今大会を総括。「THE ANSWER」に語ってもらった。

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 南アフリカの優勝は見事でした。自分たちの強みの部分を出してやり切って勝ったと、改めて感じました。相手どうこうよりも、その点を出すことに集中しての勝利でした。準々決勝で日本を破った南アフリカですから、周りでも南アを応援する声もたくさん聞きました。イングランドはエディさんが監督でしたし、日本のファンにとってもいい決勝だったのではないでしょうか。

 日本の快進撃にも改めて触れましょう。4連勝での史上初の8強入りという結果はすごかったです。3年間、サンウルブズとして経験を積めた。そしてテストマッチで強い国と対戦できた。そうしてチーム力が高まり、戦術も固まった。やることが明確になりました。

 選手たちが長い時間を過ごすことで、結束が強くなっていったと感じました。多国籍の選手たちが一つになった。またジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)は主体性という言葉を重視し、試合中に修正できるようなチームになった。ジェイミーHCが個々を尊重し、選手もそれに応えました。エディーさん(現イングランドHC)が率いた前回のW杯は規律を高め、当時としてはベストを尽くしましたが、そこからまた上のステージに到達したと思います。

 次のヘッドコーチが誰になってくるのか。HCだけでなく、コーチ陣も含めて大事ですが、個人的にはジェイミーが継続して指揮を執り、さらに積み重ねて、強くしていってほしいと願います。

ラグビー熱を継続させるために必要なこととは

 次へ向けて日本代表の強化ポイントは選手層でしょう。プール戦を突破して、決勝トーナメントで戦うには選手層がやや薄かった。プール戦で全力を出し切るチームと、準々決勝以降にコンディションを上げてくるチームの差が出たのではないか。選手層が厚くなれば、もう一つ上に行けるのではないでしょうか。

 このラグビー熱を継続させるために、選手がやれることはまずは自分のパフォーマンスを発揮し続けることだけです。プレーの面では自分を磨き、グラウンドの外ではボランティアだったり、普及活動だったり、対外的な活動でも積極的に表現の場を増やしていってほしいですね。

 あとは協会、まわりの人間がどうサポートしていくのか。プロ化という流れに向けて、どう事業化していくのかを考えていくことはマストだと思います。僕自身はトップレベルのキャプテンのサポートとグラスルーツ(草の根)のサポート、ラグビーだけじゃなくてスポーツに触れる機会を増やしていきたい。スポーツへの熱は確実に高まっています。

 今大会で得たレガシーをどう残し、どう次に生かしていくべきか。日本ラグビー全体としては、この8年間の積み重ねを振り返ることが大事。この実績がなくなることはない。どうやって勝ち、どういう風にして強くなったのか――。辿ってきた足跡を、受け継いでいくことです。強くなるためには理由がある。そこの価値観を共有し、理解することで、日本ラグビー全体はさらに強くなれると思います。

 来年は東京五輪もあります。オリンピックでは7人制ラグビーも注目を集めることでしょう。すでに福岡選手が転向して目指すことを表明していますが、15人制と比べてもアスリート(タイプの選手)により適正があります。よりスピードを生かせるようなフィットネス、ハンドリングスキルも大事。1対1に強いような選手が重要になります。福岡意外では、松島選手や姫野選手、レメキ選手は7人制でも間違いなく活躍できる。パラリンピックの車いすラグビーもあります。僕はアンバサダーを務めていますが、色々なラグビーにも注目してほしいです。

他国のアンセムを歌う初めての大会に「すごく嬉しいこと」

 日本大会は大成功でしょう。プレー以外でも、様々な形での日本の“おもてなし”が話題となりました。もともと日本人がもっているいいところだと思います。そこがよりフィーチャーされた。個人的にもスクラムユニゾンという活動を通じて、他国の国歌・アンセムを歌って歓迎しようと呼びかけていました。今までのW杯では他国の国歌を歌って歓迎するという姿勢はありませんでした。それが初めて、日本で起きた。すごく嬉しいですね。

 日本人がイングランドや、スコットランドの国歌を歌う。こんなシーンは日本だからこそでしょう。ラグビーにはもともと、違いを認め、いいところを受け止めるという文化がある。そうしたところが、日本人の気質、相手を労り、リスペクトするような姿勢とうまくミックスしたのだと思います。成績はもちろん、運営の面も含めて、素晴らしい大会になりました。

 最後にこの大会でラグビーに興味を持ってくださったファンの方に伝えたいことがあります。大学ラグビーも始まりましたし、高校生では花園もある。来年1月には今大会で活躍した選手が多数出場するトップリーグも開幕します。ラグビーへの熱を国内の選手に向けてみてください。(THE ANSWER編集部)