一流経営者がゴルフをたしなむ4つの理由

■会社経営の疑似体験ができる
一流の経営者は皆、ゴルフを楽しむのが上手です。最近の若い経営者の中にはゴルフをしない人も増えてきましたが、それでも多くの経営者は今でもゴルフをたしなみます。彼らはなぜゴルフをするのか。理由は4つあります。
1つはゴルフをすることで、会社経営の疑似体験ができるから。
ゴルフが上手くなるためには、進むべきコースを切り開く精神力、長時間のプレーに耐える集中力を高めることが重要です。これらはビジネスで成功を収めるのに必要な遂行力を養うことにつながります。
作家の城山三郎は、「ゴルフのプレースタイルを見れば、その人がどんなタイプの経営者なのかがわかる」と言っていたそうです。経営者がヘッドハンティングしたい人物を見極めるために、一緒にゴルフをすることもあります。人格がプレースタイルに表れるのです。
2つめは経営者同士のコミュニケーションを深めるため。
経営者同士が話をするのに、ゴルフほど適したスポーツはありません。例えば、若い経営者の間で人気のあるマラソンやトライアスロンでは、ほかの選手と話しながら競技を続けることはできません。ゴルフの場合、1ラウンド回るのに数時間かかります。その間、さまざまな会話をすることでインナー情報を得ることができるのです。
3つめはエスタブリッシュメント(特権階級)のたしなみとして必要だから。
海外では若い経営者の間でも依然として、高い人気を誇っているスポーツなのです。例えば、裕福な華僑の間では、息子を立派に育てるためには3つの要件があるといわれています。留学させること、金融業で働かせること、そしてゴルフのシングルプレーヤーにさせることです。
海外のエスタブリッシュメントの多くはゴルフをたしなんでいます。海外で事業を展開したいという夢を抱いている経営者にとって、ゴルフは海外のエスタブリッシュメントとコミュニケーションを深めるための絶好の機会です。世界で活躍したいという経営者にとって、ゴルフは必須のスキルだといえるでしょう。
4つめは健康にいいから。
安倍晋三首相はよくゴルフをしますが、その理由のひとつは、体を動かしてあえて疲れさせることで、質の高い睡眠をとるためではないでしょうか。首相とはそれほど神経を使う仕事なのです。神経を使う仕事という意味では、経営者も同じです。激しすぎない適度な運動でそれなりに体力を使うゴルフは、経営者の健康を促進する効果もあるといえます。
■首相時代の田中角栄を拒んだ名門ゴルフ場
しかし、ただゴルフをやれば一流の人になれるわけではありません。
例えばゴルフ場。どこでプレーするかは一流と二流を分ける大きな違いです。東京近郊だと東京ゴルフ倶楽部や霞ヶ関カンツリー倶楽部、小金井カントリー倶楽部、程ヶ谷カントリー倶楽部、那須ゴルフ倶楽部、軽井沢ゴルフ倶楽部。関西では廣野ゴルフ倶楽部などが名門ゴルフ場として一流の経営者に人気があります。
会員になれれば結果的に人脈が広がり、インナーサークルで交わされる密度の濃い情報を得ることができるようになるのです。ただ、これらのゴルフ場は、会費さえ払えば誰もが会員になれるわけではありません。入会審査は厳しく、会員権譲渡は原則不可。複数の会員の紹介がなければ入会できません。スリーハンドレッドクラブというゴルフ場は、会員を300人以上増やさないことで有名です。
例えば、ある大企業の経営者は、会員になるための面接を受けたものの落とされてしまいました。面接で入会したい理由を問われたときに、「人脈を広げたいから」と答えたのが原因のようです。名門ゴルフ場は、人脈づくりを目的にしてがつがつしている人には門戸を開いてくれないのです。
首相時代の田中角栄も、軽井沢ゴルフ倶楽部の会員になることを切望しましたが、叶いませんでした。ある日曜日、田中角栄が総理大臣だったときにアメリカ大使を連れ、プレーさせてほしいとやってきたそうです。白洲次郎理事長は「日曜日はメンバーズ、オンリー」と流暢な英語で断った。時の総理でも飛び込みでプレーさせなかったのです。泡を食った角栄は白洲次郎を睨みつけてから、別のクラブに行ったといわれています。それほど名門ゴルフ場の壁は厚いのです。
ゴルフ場の会員になるのは難しくても、練習場であればハードルは低くなります。一流の経営者が利用するゴルフ練習場として有名なのが、東京・目黒にあるスイング碑文谷です。都内一料金が高いといわれており、休日ともなれば、駐車場は高級外車がずらり。ちなみに人気があるのが、休憩中に飲むバナナジュースです。
■新参会員がやりがちな失敗とは
プレースタイルにも一流と二流の差が見られます。一流の人はあくまでもゴルフを楽しみます。また、ゴルフの上手い人は一緒にコースを回るメンバーに合わせてプレーすることができます。勝ちすぎず、負けすぎず。これは高等テクニックですが、本当に上手い人はこうしたこともできるのです。
一方、二流の人は勝ち負けにこだわるあまり、ゴルフを楽しむゆとりがありません。また、仕事のためだけのゴルフをするのも二流の人です。人脈づくりができることはゴルフのメリットの1つですが、それに固執するのは一流の人といえないのです。
プレー以外にも一流と二流の違いが明確に表れます。一流の人はゴルフ場の支配人に会ったらきちんとあいさつをしますし、キャディさんやほかのスタッフにも丁寧に接します。
新参会員がついやりがちなのが、ゴルフ場でいきなりビジネスの話をすること。一流の人は基本的に仕事の話は持ち込みません。以前、ある証券会社の社員がゴルフ場で会議を行っていたのですが、たちまち会員から悪評が広がりました。ゴルフ場ではあくまでもスポーツに徹し、仕事の話は別のところでする。一流の人はこうしたことにも気をつけています。
現在、若いビジネスパーソン、特に男性のゴルフ離れが進んでいますが、もったいないことです。男性と女性が一緒にプレーできる優雅なスポーツとして、また大人の社交の場として、これほど優れた競技はほかにありません。ゴルフをする人が必ずしも一流の人とは限りませんが、一流の人は必ずゴルフをたしなんでいるものなのです。
(経済ジャーナリスト 國貞 文隆 構成=百瀬 崇 写真=amanaimages、PIXTA)