「我々の側に神がいる」まるで宗教戦争?「ハルマゲドン用の核兵器」に言及した米ヘグセス国防長官のタトゥーに注目集まる

アメリカとイスラエルの対イランの戦闘をめぐり、トランプ大統領だけでなく、トランプ政権の幹部らの発言も注目を集めている。イランとの戦闘開始当初から、宗教色の強い発言が飛び出しているためだ。
ニュース番組『わたしとニュース』では、戦闘の背景にある宗教性の強さや各国の思惑について、国際政治学者の三牧聖子氏とともに考えた。
■アメリカ高官やネタニヤフ首相が多用する“宗教的文脈”の狙いは

イランの核開発やミサイル開発による安全保障上の脅威を理由に、アメリカとイスラエルが開始した軍事行動。それ以降、トランプ大統領の側近から相次いだのが、宗教的文脈を絡めた批判だった。
「イランのトップは狂信的で正気ではない連中で、核兵器を欲しがっています。過激な宗教指導者がこういった武器を手にできなくなれば、世界はより安全になります」(ルビオ国務長官)
「トランプ大統領も非常に一貫した姿勢を示している。イランのような宗教的預言にとらわれたイスラム主義政権は核兵器を持つべきではない。これは常識だ」(ヘグセス国防長官)
そしてイスラエルのネタニヤフ首相も、次のように語る。
「もし彼ら(イラン)が核兵器とそれを運搬する手段、弾道ミサイルや大陸間弾道ミサイルを手に入れれば、全人類が脅威にさらされるだろう」(ネタニヤフ首相)
イランによるミサイル攻撃を受けた現場を視察した日、ネタニヤフ首相は旧約聖書に書かれたイスラエル民族の敵、古代パレスチナの遊牧民族「アマレク」に関する一説を引用し、会見を締めくくった。
「『アマレクがあなたたちに何をしたかを忘れるな』私たちはそれを忘れていない。そして行動を起こす」(ネタニヤフ首相)
特に、「戦争長官」と呼んでほしいと話すヘグセス国防長官は、イランとの戦争を宗教的な文脈で見ているのかとメディアの取材で聞かれ「我々はハルマゲドン用の核兵器を求める宗教的な狂信者と戦っている。こうした時、兵士たちは全能の神と結びつく必要がある」と述べている。
CNNは、「舞台裏でもカメラの前でも、ヘグセス氏はイラン戦争の軍事力の最大のチアリーダー」と報道、ヘグセス氏が入れている「エルサレム・クロス」など信仰心を示すタトゥーなどについても言及している。
こうしたアメリカ高官の宗教観は、イランでの戦闘にどんな影響を及ぼすのだろうか。三牧氏は次のように語った。「宗教そのものはレオ14世が言うように平和を求めるもののはずだが、ヘグセス国防長官は敬虔なキリスト教徒・福音派として、『今イランと戦っている我々の側に神がある』として、イラン市民をまるごと敵対するような、戦争犯罪を促すような発言をしている。橋を壊すとか発電所を壊すとか、国際法で禁じられている軍事行動も、『我々の戦っている戦争は聖なる戦争で、我々の側に神がいるんだから何やってもいいんだ』という言動になっていることに対しては、国民の懸念も高まっている。外からはバチカン教皇も、そうした宗教的なレトリックで戦争、ましてやイラン市民そのものを対象にするような戦争を正当化することはあってはいけないと平和の訴えを強めている」。
■「イランを石器時代にする」過激な発言にアメリカの福音派も距離
日本人からすると、今回の戦闘における“宗教性の強さ”はなかなか想像できない部分があるが…。
「このように宗教が必ず戦争に結びつくというわけではなく、だんだん過激になっていく戦争に関するレトリックを見て、例えばトランプ氏の岩盤支持層として知られているキリスト教の福音派でも、若い層は『これは違う』とだんだん離れていっている。福音派だったら必ずこのイラン戦争を支持するわけではなく、トランプ氏やヘグセス国防長官から『イランを石器時代にする』とか『イランの人たちは動物なんだ』みたいな発言が飛び出すような事態に対して、信仰厚い人みんなが支持しているわけでは全くなく、むしろ自分の信仰に照らして『これは違う』と感じで距離を置く人も決して少なくない」(三牧氏、以下同)
■「イスラエルファースト」への批判…トランプ大統領はどちらを取る?
そしてイスラエルのネタニヤフ首相も、会見などで旧約聖書などを引用することが非常に多い。イランとの攻撃発表では「行動しないなら私たちはイランの核攻撃を受けることになる」「2500年前の古代ペルシャで、ある宿敵が私たちの民を完全に滅亡させるという全く同じ目的で立ちはだかった」と、ユダヤ人が虐殺の危機から救われた旧約聖書エステル記に言及している。
こうした状況に、三牧氏は「2023年10月に始まったイスラエルのガザでの軍事行動が多くのガザ市民を殺害してきた。そして今回のイラン攻撃でもイランで2000人、レバノンでも2000人の犠牲が出ている。ヨーロッパ諸国でも、ホロコーストの悲劇は悲劇であり、イスラエルが周辺諸国に感じる脅威もそれなりにわかるけれど、今やっていることはさすがに自衛を超えているとして、先日イタリアがイスラエルとの軍事協定は自動更新しないで見直しの姿勢を示した」。
「だんだん離れていくヨーロッパ諸国をつなぎ止めるために、『私たちはユダヤ教、キリスト教、聖書の世界を共有していますよね』『ホロコーストはヨーロッパが犯した大きな罪ですよね』そして『イスラエルがやっている今の行動にちゃんと理解を示してください』と強調しているのだと思う。焦りみたいなものもネタニヤフ首相の発言からは見て取れる」
こうした中、イスラエル国民は、自国が起こしている軍事行動に関してはどのように思っているのだろうか。
「今回ネタニヤフ首相が戦争をやめない1つの理由として、自分が汚職とたくさんの罪を抱えていて、戦争中だと裁判ができないので、この裁判を引き延ばすために自分のために戦争をやっているのではないかという疑惑がいよいよ高まっている。他方で、全部の問題がネタニヤフ首相にあるかというとそうとも言えない。アメリカの世論調査を見ると『この戦争が1日も早く終わってほしい』というモードになっているが、イスラエルの世論調査では、いまだに『イランとの戦争は続けるべきだ』という意見が過半数だという。そういう世論を背負って、そしてネタニヤフ首相の私的な裁判をかけられたくないという利害もある中で、このイスラエルをどうやって停戦交渉に巻き込むことができるのかが停戦に向けた1つの焦点になっている」
イスラエルが早期の戦闘終結を目指していないとみられる中、トランプ氏は、ネタニヤフ首相との向き合いとイランとの戦闘終結への道の、どちらを大事にしていくのだろうか。
「トランプ氏はアメリカの大統領。最近のアメリカの民意は『もうこんな長期化した戦争はやめてほしい』。しかし、停戦の条件として本当はレバノンへの攻撃停止が入っていたのに、イスラエルが『レバノンは入っていない』と言ったら、トランプ氏も意見を変えている。重要な局面で常にイスラエル側に立つトランプ氏に対して国内の批判も高まっている。あなたは『アメリカファースト』と言って国民に支持されて大統領になったのに、とても『アメリカファースト』とは言えない。アメリカの人たちの税金が出ていくばかりのこの戦争を、いつまでもイスラエルに振り回されてやめられていない。あなたは『イスラエルファースト』の大統領になっているという批判がトランプ氏の岩盤支持層から強く上がっている現状がある。トランプ氏がどちらを取るかは本当に重要だ」
(『わたしとニュース』より)
