「資産100万円で投資を始めてはいけない」富裕層が株より先に選ぶ”投資先”
新NISAの普及により、S&P500やオール・カントリーといったインデックス投資が多くの人の資産形成のベースとなりつつある。一方で、刻一刻と変化する世界情勢や先の見えない経済状況を前に、既存の枠組みに捉われない新たな資産防衛の形を模索する動きも出始めている。
20代で元手ゼロから純資産4億円を築き上げ、現在はドバイを拠点に活動する個人投資家の宮脇さき氏も、時代の変化に合わせた柔軟なマネー戦略の重要性を説く一人だ。幅広いアセットを扱う同氏は、仕組み化と独自の思考法によって着実に資産を築いてきた。
本稿では、宮脇氏の実体験と知見をもとに、インデックス投資の次のステップとなる「バーベル戦略」から、意思に頼らず資産を増やす「環境ハック術」、ストックを重視する「BS思考」、そして最大の資本である「自己投資」まで、これからの時代を生き抜くための資産形成のヒントをわたって紐解いていく。全4回の第4回。
資産100万円で投資を始めてはいけない理由
せっかく貯めた100万円を手に、すぐ株式市場へ飛び込みたい気持ちは分かります。SNSを開けば少額積立を推奨する声があふれていますが、資産が100万円程度の段階で数パーセントの運用益を追い求めるのは、正直効率が悪いといわざるを得ません。
たとえば投資の神様ウォーレン・バフェットでさえ、平均年利は約20%です。100万円を天才的な手腕で運用しても、1年で増えるのは20万円。そこから税金を引けば、手元に残る利益はさらに目減りします。
これでは日々の生活を劇的に変えることは難しく、「資産形成をしているつもりで時間だけが過ぎる」という状態に陥りかねません。
現在の日本は物価上昇に賃金が追いつかず、実質賃金は長期的に伸び悩んでいます。余剰資金を株式に回すだけでは、億単位の資産に到達するまでに非常に長い時間を要してしまうのが現実です。
もちろん、早期から投資を始める重要性は否定されるものではありません。しかし、一代で資産を築いた人たちの軌跡を見ると、彼らは初期フェーズで「資産運用」ではなく、別の領域にリソースを集中させていたことが分かります。
株がダメならどう資産を増やす?新富裕層だけが知っている「稼ぐ力」への投資戦略
では、彼らはどこに資金を投じていたのでしょうか。答えはシンプルで、「自分自身の稼ぐ能力」です。
資産が小さい段階では、金融資産の運用よりも、人的資本のレバレッジを最大化する方が圧倒的に効率的です。100万円を市場に預けて数万円のリターンを待つよりも、その資金を使ってスキルを獲得し、年収を100万円単位で引き上げる方が、スピードも再現性も高いのです。
実際、近年急増している若手富裕層の多くは、フリーランスや起業を通じてキャッシュフローを拡大し、その余剰資金を投資へ回すことで資産を加速度的に増やしています。彼らに共通するのは、「まず稼ぐ力を作る」という順番を徹底している点です。
特にAI時代においては、この戦略の重要性はさらに高まっています。単純な知識や作業は急速に価値を失い、AIに代替されていきます。その一方で、AIを使いこなして価値を生み出す側に回る人材の価値は、むしろ加速度的に高まっています。
つまり、「何を知っているか」ではなく、「何を生み出せるか」が問われる時代に入っているのです。古い努力の延長線上に未来はなく、環境の変化に合わせて自らの価値をアップデートし続けることが求められています。
学歴より「クローズドな情報網」。人生のステージを強制的に引き上げる術
さらに重要なのが、「どの情報環境に身を置くか」です。
現代は情報過多の時代ですが、誰でもアクセスできるオープンな情報だけで人生を変えることは難しくなっています。本当に価値のある情報は、限られたコミュニティの中でのみ共有される「クローズドな情報」として流通しているケースが多いからです。
富裕層は、この情報格差を強く意識しています。単に知識を増やすのではなく、「誰と繋がるか」「どのコミュニティに属するか」に投資し、自分のいる環境そのものを引き上げていきます。
環境が変われば、触れる情報も、当たり前の基準も変わります。その結果、意思に頼らずとも行動が変わり、自然と収入や資産水準も引き上がっていくのです。
これは努力や根性の問題ではなく、「設計」の問題です。だからこそ、意図的に自分の環境を選び直すことが、資産形成において極めて重要な戦略となります。
日本人が陥りがちな「コスパの罠」心の余裕を高める正しいお金の使い方
最後に、日本人が特に陥りやすいのが「コストパフォーマンス思考の罠」です。
もちろん、無駄な支出を抑えることは重要です。しかし、あらゆる支出を「安さ」や「効率」だけで判断してしまうと、人生の質や長期的なリターンを損なう可能性があります。
富裕層は、コストではなく「リターン」でお金を見ています。時間を生み出す支出、ストレスを減らす支出、人間関係を広げる支出——こうした見えにくい価値に対しては、積極的にお金を使います。
結果として、心の余裕が生まれ、より良い意思決定ができるようになる。この「余白」こそが、長期的な資産形成において大きな差を生むのです。
節約によって得られる数万円と、正しい投資によって得られる数百万円。どちらにフォーカスすべきかは明らかでしょう。
資産形成とは単なる数字の積み上げではなく、人生全体の設計そのものです。だからこそ、短期的な効率だけでなく、長期的な価値に目を向けた意思決定が求められているのです。
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