話題の写真集「Beste」(講談社)の発売イベントに登場した前田敦子

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 現在、ヒット中の前田敦子14年ぶりの写真集『Beste』(講談社)が、SNSを中心に思わぬ形で物議を醸している。事の発端は「過去最大の露出」をうたう同作品の一部のカットがX(旧Twitter)へ無断転載されたことだった(19日には写真集の公式Xアカウントが注意喚起している)。その大胆な内容に、それまで写真集について知らなかった層から驚きや困惑の声が上がったのだ。

【画像】“あっちゃん”本人のお気に入りだという「見られている意識がない格好」で自転車に乗るカット ほか

 特に注目を集めたのは、透け感のあるショーツのクロッチ部分から「黒いもの」がのぞくカット。それがヘアなのか?タトゥーなのか?という憶測や、こうしたカットを元AKB48の不動のセンターだった前田が掲載していることに衝撃を受けたとの声もあった。

話題の写真集「Beste」(講談社)の発売イベントに登場した前田敦子

 実はXで無断転載された写真以外にも、作中では「黒いもの」が映っているカットが収められているのだが、あくまで写真集の購入者しか見ることはできなかった。しかも写真集では黒い部分を露骨には強調せず、引きの写真でさらりと見せていた。写真集のプロモーションにあたっても、その点をあえて言及はしていなかった。それが写真集発売から1か月がたち、無断転載という最悪の形で、本来見るはずのない人の目に触れてしまった格好だ。

 写真集にはほかにも、Tシャツ越しに胸のトップが透けたようなカット、シースルー越しにお尻の線が見える大胆なカットも収録されている。前田本人も今回の写真集について、インタビューで「『普通女優さんはやれないでしょ』ということにたくさん挑戦して、『普通ならここまでかな…』というラインを越えられた」と語るだけに、ファンがその大胆さに驚いたとしても無理はない。こうした衣装の透け感についても、スタッフと相談の上だったとインタビューでは答えている。

「母親なのにやりすぎ」「往年のアイドルが…」批判

 一方で、気になったのは前田の写真に対して「母親なのにやりすぎ」「往年のアイドルがこんな露出で悲しい」「お金がほしいから脱いだのか」といった批判の声だ。

 まず「母親なのに」という声に対し、前田本人はインタビューで「お母さんらしさはゼロです。お母さんだからやっちゃいけないことはないと思っている」とこれ以上ない明快な回答を述べている。

 母親であることと、自分の身体を自分の意思で表現することに何ら矛盾はない。今回の写真集のテーマは「30代の女性の大人の恋」であり、等身大の30代の女性としての前田敦子が写っている。下着姿のカットが主体だが、これも30代の自身を撮るのであれば「やらない意味はない」と挑戦したと語っている。

 女性は母親になった瞬間、自分の存在が「聖域」か「家庭のもの」として扱われ、一人の女性として自由に表現できないケースがある。そんな理不尽ともいえる状況を、前田は「母親らしさ」を脱ぐことで、壊してみせたといえる。今回の写真集にあたってのメディアの取材でも「(撮影を経て)久しぶりに恋人が欲しいと思った」「もう1回結婚したい」と一人の女性としての発言も目立っている。

アイドルは「今でも最前線にいらっしゃる方なら…」

「往年のアイドルがこんな露出で悲しい」という嘆きも的外れである。今回の写真集のテーマは先ほども書いたように「30代の恋」であり、AKB48時代のアイドルイメージとは、そもそも一線を画したコンセプトで作られている。そして露出に関しても、前田自身が納得の上でやったことだ。アイドル時代の前田敦子を愛した気持ちはわかる。しかしアイドルが年を重ね、成熟した女性となり選択したことを「堕ちた」と嘆くのは、彼女が歩んできた時間を否定するも同然だ。

「お金がほしいから脱いだのか」との声もあったが、そこに対しては、同じアイドル出身の「でんぱ組.inc」古川未鈴は、Xで前田の名前こそ出さないものの、明らかに今回の騒動を念頭に置いてこんな投稿をしている。

「(露出が多いのは)『お金が欲しい』とかじゃなくて『自己満足』なのでは。あれほどの歴史と今でも最前線にいらっしゃる方ならそうなんじゃないかなって思う」

「どうせやるならしっかりやりたい、自分の歴史にこの姿を残しておきたいととても思う。今更恥ずかしいとか思わないのだ」

 前田の14年ぶりの写真集となれば、たとえ水着であってもそれなりの売上は立つだろう。ただ最後の写真集という覚悟、そしてよりよいものを作りたいという表現者の熱からできたものが今回の作品だ。

 グラビア評論家の目から見て、本作に感じたのは憑きものが落ちたような清々しさだった。過度に刺激的でもなく、かといってアイドルのようにかわいらしく取り繕うわけでもない。「アイドルらしさ」や「母親らしさ」といったものは剥がれ落ち、そこにあるのは、いい意味で脱力した、等身大でたおやかな30代女性の姿だった。

 男性の視線を意識した作品ではあるが、引き締まったくびれ、鍛え上げたヒップという憧れられるボディー、透明感のある雰囲気の写真はむしろ女性にこそ見てほしいと感じる。特に「母親らしさ」に息苦しさを感じている女性であれば、34歳になった“あっちゃん”の姿からエールを感じるだろう。

徳重龍徳(とくしげ・たつのり)
ライター。グラビア評論家。ウェブメディアウォッチャー。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。その後、テレビ局のオウンドメディア編集長を経て、現在はフリーライターとして雑誌、ウェブで記事を執筆している。著書に日本初のグラビアガイドブック「一度は見たい! アイドル&グラビア名作写真集ガイド」(玄光社)。noteでマガジンを連載中 X:@tatsunoritoku

デイリー新潮編集部