香港相手に無双。“E-1男”相馬勇紀の超越した存在感。三笘ら強力なライバルに対抗するためにも、さらなる奮起を【現地発】
ゆえに、誰がスタートから出るか予想しづらいところがあったが、森保一監督は初代表の6人を起用。その1人であるジャーメイン良(広島)が26分までに4ゴールという大爆発を見せ、前半だけで勝負を決めた。
ある意味、“E-1男”とも言うべき背番号7は今回、キャプテンマークをつけてプレー。開始早々から左サイドをグイグイと突破し、得点チャンスを次々とお膳立てしていく。
開始4分と10分のジャーメインの得点は、いずれも相馬のクロスから。前者は巧みな切り替えしから右足で供給し、後者は大外から左足を振り抜いた。
「(相馬の)クロス精度が高いというのは、今に始まったことじゃない。昔からJリーグ、代表でもよく見ていて、本当に良いボールが入ってくるなと思っていたので、信じていいポジションを取れた」とジャーメインも舌を巻いていたが、相馬は水を得た魚のように躍動したのである。
20分の稲垣祥(名古屋)のチーム3点目も、川辺駿(広島)のボール奪取から相馬を経由して背番号15の豪快ミドル弾につながった。これはアシストにカウントされず、この日は2アシストにとどまったが、目に見える結果をキッチリと残すところはさすがだ。
加えて言うと、今季の町田での相馬は左ウイングバックではなく、シャドーを主戦場にしている。森保ジャパンでは左MFや左ウイングバックで何度も使われた分、戦術やポジショニング、攻守のバランスが身体に染みついているのだろうが、ブランクをまったく感じさせないのも彼の賢さ。
森保監督も3日のメンバー発表会見で「戦術・相馬」と発言したが、1人で局面をガラリと変えられる超越した力は本当に貴重だ。
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この日、ゴールがついてこなかった点だけは少し悔やまれるものの、「やはりカタールW杯経験者は違う」というのが、大方の印象ではないだろうか。
「みんなボールを回してくれましたし、1対1は自分の絶対的な武器。自分が確実に突破できるところなんで、そこから最初の点を取れたのは良かったと思います。
今日は昨日より涼しかったし、自分的にはまだまだ行けた。もっともっと行きたいと思います」と本人は体力的にも余裕があったことを明かす。そういうタフさも含め、相馬はこのグループでは一歩突き抜けた存在。この大会でそれを改めて実証し、再び常連組への挑戦権を掴み取るしかない。
ご存じの通り、相馬は第二次森保ジャパンでも断続的に招集されている。だが、それは三笘薫(ブライトン)や前田大然(セルティック)、中村敬斗(S・ランス)のいずれかが怪我やコンディション不良で選外になった時ばかりだった。
「自分がそういう位置付けだということは分かっています」と相馬自身も厳しい立場を自覚している様子だったが、そこから抜け出すのはなかなか難しい。昨夏にポルトガルからJリーグに復帰したことで、ますますハードルは上がったようにも見受けられる。
だからこそ、今大会を大切にしなければいけない。チームを自らリードし、連覇へとけん引したうえで、前回同様の圧巻パフォーマンスを見せつけることでしか、9月以降のコアグループ入りの道は開けてこない。本人も強い覚悟を持って、このチャンスを掴みに来ているはずだ。
12日の中国戦、15日の韓国戦では、もしかするとシャドーでの起用もあるかもしれない。2024年6月の3バック移行後の代表では、その位置でプレーした経験がない分、「複数ポジションで臨機応変にストロングを出せる」ところを示して、さらに評価を引き上げていくべき。
そうやってできることを増やしていくことでしか、三笘や前田、中村を抜き去ることはできない。「国内組でも十分戦える」というところを、しっかりと実証してほしいものである。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
