SBIホールディングス会長兼社長・北尾吉孝が打ち出す「メディア・IT・金融の融合」戦略
─ 意識を変えることで、経営の姿が変わったと。
北尾 そうです。私は連携している地銀に対して、いくつかの課題を示しましたが、その1つが、「勘定系システム」です。これまでは既存の大手ベンダーに依存してきたわけですが、システム更改時に多額のコスト負担を要していました。
そこで私は、フューチャーアーキテクト社さんとご一緒に、勘定系システム投資を固定費から変動費に変えるべく、国内で初めて、勘定系システムを米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のクラウド上で利用出来るようにしました。既に福島銀行が、本システムに移行していますが、コスト面のみならず、業務効率化も非常に進んでいます。島根銀行も2025年7月に本システムへの移行を予定しています。
他にも、地銀の運用の高度化を進めています。以前は多くの地銀で、ヘッジも何もせずに国債に頼った運用をしていたことで、国債が下がると損が出るということを繰り返していました。そうではなく、オルタナティブへの投資も含めて高度化するためのお手伝いをしています。
さらには、SBI新生銀行も一緒になって、地域企業の資金需要に応える、あるいは共同ファンドを設立し、地域ベンチャーに資金を提供するなど、地方に新たな企業をつくるための取り組みも進めています。
メディア・IT・金融の融合
─ フジ・メディア・ホールディングスの大株主である米投資ファンド・ダルトン・インベストメンツが株主提案した取締役候補の1人として名前を連ねましたね。
北尾 多くの人からメールや電話で「北尾さん、改革して下さい」という支援の連絡をもらいました。
私はメディアの役割は非常に重要だと考えていますが、日本でも米国でも、メディアによる偏向報道が多すぎます。
先の米大統領選にしても、日米のほとんどのメディアが民主党のカマラ・ハリス候補が勝つと報じていましたが、蓋を開けてみたらトランプ氏が当選した。しかしSNSでは、終始トランプ優位を伝える情報が流れており、主要なメディアだけを見ていてはわからない情報があることが明白になった。だからこそ公平・公正なメディアが必要なのです。
─ フジの問題以前から、メディアのあり方には強い関心があったと。
北尾 そうです。私が「メディア・IT・金融の一体化」という構想を打ち出したことをダルトンが見たことで、取締役候補になって欲しいという依頼が来たのだと思います。
我々は今、グループを挙げて、メディア・IT・金融の融合、SNSの強化を図ろうとしており、そのための統括会社の設立も決定しました。
─ 一方でSNSも偽情報が多いという指摘もあります。
北尾 それは今の偏向した既存メディアにもある事だと思います。しかし、統計データによると、一般的にはSNSの方が、信頼性が低いことも確かです。ですから、明らかにおかしい情報をAI(人工知能)で弾くような仕組みを作る必要がある。そして、そこから後は、個人でどれが正しいかを選んでいくということだと思います。
─ AIと人間の関係は、どう持っていけばいいですか。
北尾 シンギュラリティ(技術的特異点)の到来が2045年と言われてきましたが、おそらく2030年頃には人類の叡智を遥かに超えたAIが誕生するのではないかと見ています。それが人間から既存の仕事を奪っていくでしょう。
ただし、産業革命が起きたり、ロボットが登場したりする度に、「人間の仕事がなくなる」と言われ続けてきました。しかし、これは進化ですから、必ずその時代にふさわしい職種も出てくるのです。
─ その意味で、日本の可能性をどう捉えていますか。
北尾 日本人全員が、自己否定・自己変革・自己進化の意識を持たなければなりません。「百年の計」は教育であり、人材です。そのためには、教師の処遇を改善して、良い人材を集めていかなければならないでしょう。
─ これからを担う若者へのメッセージは?
北尾 若者に一番言いたいのは「勉強しなさい」ということです。リベラルアーツ、教養を身につけることがインターナショナルな人材になるために必要なことです。
そして「大志」を抱くことが大事です。経営者であれば上場して終わりではなく、時価総額1兆円の会社をつくるといった志を持って、世界に伍して戦う、あるいは新しい技術を追求するために、毎日考え続けることです。
