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邪魔な縁石、重い充電ケーブル

EVの普及拡大を目指す英国だが、障害のあるドライバーにとって利用しやすい充電ポイントが少なく、「充電設備の導入において、障害のあるドライバーの利益が後回しにされている」と批判されている。

英国の決算委員会は、国内のEV充電インフラに関する調査結果をまとめた報告書で、1万5000基ある急速充電および超急速充電ポイントのうち、運輸省(DfT)が障害者ドライバーの利用体験を改善するため、充電器の安全性とアクセシビリティを向上させる目的で策定した「BSI PAS 1899」規格に完全に準拠しているものは1つもないと指摘した。


英国の充電ポイントは障害のあるドライバーにとって利用しづらいものになっているという。

障害のある利用者が直面する課題について、委員会は次のように説明している。

「2035年までに、135万人の障害のあるドライバーが公共充電ポイントに部分的または全面的に依存すると予想されているが、多くの充電ポイントやその周辺環境には、利用を困難にする要素がある」

具体的な課題として、車椅子利用者にとって邪魔な障害物(縁石など)の近くに充電ポイントが設置されていることや、ケーブルの重量が重すぎること、コネクタを接続するために強い力が必要であることが挙げられた。

報告書はさらに、「標準規格の普及に関する問題を解決しなければ、公共充電ネットワークは、障害のあるドライバーのニーズを満たさないまま発展し続けることになるだろう」と結論付けている。

この調査結果に対し、PAS 1899規格を充電ポイントの法的基準として認定するよう提言してきた慈善団体『モビリティ財団』のナイジェル・フレッチャー代表は、最終的には政府の判断だとしつつも、「公共充電サービスの事業者は、インフラのアクセシビリティを確保する責任を負うべきだ」と主張した。

モビリティ財団は委員会の報告書に同意しつつも、アクセシビリティに関するデータ収集・共有の義務が事業者にないため、基準に準拠した充電ポイントが「存在しない」という主張を検証できないと述べた。ただし、その数が少ない点には同意した。

例えば、充電事業者のインスタボルト社は3月、ハンプシャーに新しい超急速充電施設を開設した。44基の充電ベイはいずれも、障害のある利用者のアクセスと安全性を向上させるため、標準的な充電ベイよりも広くなっている。

ウィンチェスターにあるスーパーハブでは、各ベイの周囲に最大1.8mの車椅子移動スペースが確保されている。さらに、支払い端末と画面は車椅子利用者にとって使いやすい高さに設置されており、充電器から伸びるスイングアームが充電ケーブルの重量を支えている。

一方、充電事業者のオスプレー社は、2022年の基準の公表に先立ち、英国初のアクセシビリティに配慮した急速充電ハブを立ち上げたと発表した。同社はその後、既存の充電施設にも改良を加え、充電ベイの拡大、縁石の撤去、アクセシビリティに配慮したハードウェアの追加などを実施した。

充電インフラの地域格差

特に、ウィンチェスターにあるインスタボルト社のスーパーハブのような大規模充電サイトの開設は、EVオーナーにとって朗報と言えるだろう。しかし、決算委員会が指摘したもう1つの懸念、すなわち充電施設の地域格差も浮き彫りになっている。報告書によると、ロンドンとイングランド南東部だけで英国全土の充電ポイントの43%が集中しているという。

一方、イングランド南西部および北部の主要道路には急速充電ポイントが不足しており、充電事業者が地方で事業を展開することは依然として商業的に困難であるとされている。


公共充電施設の整備状況は地域によってバラツキが大きい。

「これは、地域格差とドライバー間の不平等に関する懸念を招いている。対策を講じなければ、この問題が充電ポイントの展開に固定化されてしまうリスクがある」と報告書は指摘している。

ロンドンとイングランド南東部の優位性は、国内1万5000基の急速充電/超急速充電器の分布にも反映されている。充電スポットのマッピングおよびデータサービスを提供しているZap-Map社によると、2月末時点で同地域には約3500基の充電器が設置されていたのに対し、北西部やウェストミッドランズなどの主要地域ではそれぞれ約1500基にとどまった。北東部では500基をわずかに上回る程度だった。

せっかくの予算が使われていない?

報告書ではもう1つ、別の懸念が提起された。1月時点で、英国全土の高速道路サービスエリア117か所のうち、約3分の1が運輸省の目標である「6基以上」の超急速充電器を設置できていないことだ。「充電ポイントは需要が発生する前に設置する必要がある」と報告書は指摘している。

なぜ、超急速充電器の数は目標に達していないのか。報告書では、5年前に主要幹線道路の充電インフラを改善するために設立され、9億5000万ポンド(約1840億円)の予算を有する運輸省の急速充電基金(RCF)から、まだ1ペンスも支出されていないことが原因かもしれないと書かれている。


「戦略的道路網」と呼ばれる主要幹線道路の充電インフラの改善に膨大な予算があてがわれているが……。

充電企業を代表する業界団体、チャージUKはこの報告書を歓迎したが、充電器の展開は実際には需要を上回っていると主張した。代表のヴィッキー・リード氏は、会員企業は設置ペースを加速したいと考えているが、「実務上の障壁」に直面していると述べた。

運輸省は、英国の充電ネットワークは「驚異的なペース」で展開しており、「29分に1基のペースで増えている」と強調した。

未支出のRCFについて、運輸省の広報担当者は次のように述べた。

「2020年に基金が発表されて以来、市場は大幅に変化した。我々は支援対象を明確にするためにパイロットプロジェクトを立ち上げ、そこから得られた知見を主要幹線道路における充電インフラの拡充に活かしていく」

ZapMap社の創設者兼CEO、メラニー・シャッフルボトム氏は、全体として充電ポイントの数は道路を走るEVの台数に比例して増加していると指摘した。しかし、「地方や地域に課題がある」と述べ、「例えば、ウェールズと北アイルランドは遅れを取っている」と付け加えた。