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アイオンブランドで2車種のEVを展開

トヨタやホンダの合弁パートナーであり、中国最大の自動車メーカーの1つであるGAC(広州汽車集団)が、欧州市場での販路を拡大し、新たに英国への参入に向けて準備を進めている。

【画像】欧州市場で存在感を高める中国GAC【アイオンUTとアイオンVを写真で見る】 全5枚

GACは昨年200万台以上のクルマを販売した中国国営企業だ。欧州でデザインされた2車種のEVを英国に投入し、シェア獲得を目指している。


GACが英国に投入するアイオンUT    AUTOCAR

2車種のうち小型のモデルは、メーカー自ら「中国版ミニ」と銘打った『アイオンUT』である。都市部での通勤を想定して設計されているが、フォルクスワーゲンID.3と比べてわずかに大きい。これは、中国の消費者が好む車内空間の広さを考慮した結果である。

本国ではわずか7500ポンド(約140万円)相当から購入できるが、英国では輸送コストと税金がかかるため、はるかに高額になることが予想される。

GACの最高執行責任者(COO)であるトーマス・シェメラ氏(ヒョンデやBMWで要職を歴任)は、アイオンUTが難しい市場で成功を収めるには、競争力のある価格設定が不可欠との考えを示した。

「価格設定の観点から見ると、ブランドが確立された競合他社よりも高い価格設定にするのは非常に難しいでしょう」と同氏は言う。

「当社は賢明かつ巧妙に、自社のモラルを世に広め、同時にブランドを構築しなければなりません。製品そのものではなく、キャンペーンも活用する必要があります」

「ブランド価値が低いレベルにある限り、それを高めるためにあらゆる努力をしなければなりません」

「段階的に価格を引き上げることも可能です。しかし、まずは信頼を築くことが先決です」

そのため、アイオンUTは英国では2万ポンド(約380万円)台半ばから後半で発売される見込みである。これはID.3(3万795ポンド=約580万円)を大幅に下回り、下位セグメントのルノー5に近い価格設定となる。

ハイブリッド車も計画中

アイオンUTは、フロントに搭載された最高出力136psの電気モーターと60kWhのリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを使用し、航続距離は最大430kmに達する。

車内では、14.6インチの大型インフォテインメント用タッチスクリーンで、エアコンなどの主要機能を操作する。また、車速や航続可能距離などの重要な情報を表示する8.8インチのデジタル計器盤も装備されている。


GACが英国に投入するアイオンUT    AUTOCAR

中国のトレンドに合わせ、前部座席はフラットに折りたたむことができ、後部座席とベッドのようなレイアウトが可能だ。

インテリア全体に硬質プラスチックが使用されているが、質感を高める工夫が施されている。例えば、ウインドウシルはステッチ加工されたレザーのような印象を与え、ドア内張りはカーボンファイバーを模したような幾何学的な仕上げとなっている。

アイオンUTと同時に発表されたのは、『アイオンV』で、テスラ・モデルYと競合する電動SUVである。最高出力227psのモーターと90kWhのLFPバッテリーを搭載し、航続距離は最大520kmとされる。

GACの英国での発売日は未定だが、シェメラ氏はAUTOCARに対し、「間もなく」発売すると語った。

同氏は、英国がポルトガル、ポーランド、イスラエルと並ぶGACの第二の成長市場になると説明した。

また、英国はさまざまな理由からGACにとって「非常に重要」な地域だという。英国のEV市場は活発で、昨年の新車販売台数の5台に1台がEVであった。

しかし、GACはEVに加えて、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、そして「場合によっては」純エンジン車も発売する計画である。

Q&A:GAC最高執行責任者(COO)トーマス・シェメラ氏

――GACと競合他社の大きな違いは?

「何よりもまず、プレミアム品質です。これは特別なことではありません。すべてのお客様がプレミアム品質を期待しているからです。しかし、当社はトヨタやホンダとの合弁事業を展開しており、当初からそのノウハウを学んできました。当社の施設、特にアイオン(モデル)の施設を歩き、生産現場を見れば、リーン生産方式(無駄を排除した生産方式)をどのように実践しているかがお分かりいただけるでしょう。品質は単なる言葉だけのものではありません。当社はお客様の視点に立って、品質を非常に真剣に受け止めています」


GACのトーマス・シェメラCOO

――GACの欧州市場進出にどのような期待を寄せているか?

「市場に参入した時点でブランド認知度が低い場合は、まずブランド認知度を高める必要があります。次のステップは、お客様との交流です。いわば、『涙の谷』を歩むようなものです。投資は必要ですし、最初から利益を上げられるわけではないことを十分に認識しなければなりません」

――なぜデザイン業務の拠点をミラノに置くのか?

「わたしはグローバリゼーションを推し進めたい。中国人の視点からグローバル化を理解することは非常に重要であり、世界中の消費者が何を求めているのかを知りたいと思っている。そして、当社は多様性に富んでいます。中国で成功したものがすべて他の市場でも通用するわけではなく、そのことをはっきりと理解しなければなりません。その逆もまた然りです」

超高級コンセプトモデルも披露

世界展開の計画を具体化するだけでなく、GACはブガッティ・タイプ57 SC、コンコルド、シャネルのハンドバッグからインスピレーションを得た高級車のコンセプトモデル『ハイパーラグジュアリー(Hyperluxury)』を披露した。

カラーリングはシャネルの影響を受けている。ブランドロゴをほとんど排除したブラックの外装と、鮮やかなオレンジの内装のコントラストが際立ち、ダッシュボードには巨大なGACのロゴがエンボス加工されている。


GACハイパーラグジュアリー・コンセプト

シートは、1928年に製作された有名なル・コルビュジエのラウンジチェア『LC4』のミニマルなデザインにインスパイアされたもので、暖房や冷房機能は一切ない。代わりに、ドライバーはこれらの機能を備えた大きなジャケットを着用する。このジャケットは、1920年代から30年代にかけてオープンカーを運転する人々が着用していた大胆な服装を意識したものだ。

クルマの解錠と始動には、従来のキーではなく、アクセサリーとして身につけることができる金の指輪を使う。

GACミラノスタジオのデザインディレクター、ステファン・ジャニン氏によると、人の手で作るということを重要視し、人工知能(AI)ツールの支援なしで設計したという。

このハイパーラグジュアリー・コンセプトに市販化の予定はないが、GACはこれをさらに発展させたモデルを今月後半の上海モーターショーで発表予定だ。