婚活デートにおける女高男低の実態とは(※写真はイメージ)

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 最近はデートにおいて男性が女性におごるとは限らず、ワリカンも珍しくないというが、一定以上の世代では、「食事代は男が払うもの」という考えがいまだに根強い。57歳からの婚活に奮闘するフリーライターの石神賢介氏の相手も同世代ということもあり、基本的に「男がおごって当たり前」というスタンスの女性が多いようだ。この10年以上耳にすることのない「アッシー」「メッシー」なんて言葉に違和感を持たない世代の婚活デートの実態とは……。

(文中の紹介文、登場人物はプライバシー保護の観点から一部を変更してあります)

女性は概ねレストランにこだわる

 57歳の婚活は一進一退。女性とコンスタントに出会えるものの、交際にはなかなかいたらない。

婚活デートにおける女高男低の実態とは(※写真はイメージ)

 婚活サイトについては、数を打たなければいけないことがわかってきた。

 所得、容姿、学歴、そして年齢によって打率は違うと思うが、僕のマッチング率は1割。10人に申し込むと1人、100人に申し込むとおよそ10人の女性がOKしてくれた。

 ただし、マッチングしてからが難しい。なかなか会えない。サイトを通してメッセージのやり取りをするのだが、長続きしない。会ったことのない相手なので、相手の情報が少なく、話題に苦労する。

 婚活サイトのプロフィールに趣味の欄はある。そこには「音楽」「コンサート」「野球観戦」「サッカー観戦」などと書かれている。しかし、音楽やコンサートといっても、ロックなのか、クラシックなのか、どのアーティストなのか、どの作曲家なのか、好みはさまざまだ。野球やサッカーも応援するチームが違えば、おたがい歩み寄らなくてはならない。

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 僕が魅力を感じる女性は、ほかの多くの男性会員からも申し込まれている。ライバルが多い。すでに複数の男とマッチングして、メッセージ交換をしている。そのなかの何人かと会ってもいるだろう。実際、サイトを通していい雰囲気でメッセージ交換をしていても、突然そっけなくされることがある。自分が送信したメッセージを過去にさかのぼって確認しても、相手の気分を害した形跡はない。おそらく、同時にやり取りしているほかの男性と発展して、こちらへの興味が失われたのだろう。そんな目に見えないライバルたちがひしめく環境で、自分を選んでもらうには大変な努力が必要だ。

 いよいよ会おうとなったときに、ストレートに聞かれるケースも少なくない。

「どんなふうに私を楽しませてくれますか?」

「何をご馳走してくれますか?」

 日常生活で出会いに恵まれていなくても、婚活サイトで複数の男性会員にアプローチされている女性の多くは強気になっている。

食事をお付き合いいただくという意識

 概して、女性は食べることにこだわる。もちろん僕も食べるのは好きだが、初対面の相手にできるだけいい店でご馳走になろうという発想はない。不味いよりはおいしいものを食べたほうがいい。にぎやかな居酒屋よりは落ち着いて会話ができるレストランのほうがいい。そう思う程度だ。しかし、そうでない女性は少なくない。

 婚活サイトでマッチングした女性と食事をする場合、苦手な食べ物を確認したうえで、イタリアン、フレンチ、和食、アジアン……など、それぞれお店を提案。そのなかから女性に選んでもらった。

「どこも行ったことはあるから、知らないお店に連れて行ってほしいなあ」

 そんな返事が返ってくるケースも少なくない。

 やり取りの途中でばかばかしくなってくる。会ったこともない相手になんでここまでご奉仕しなくてはいけないのか……。疑問がわく。

「おいしいお店なんだからいいじゃないですか」というメッセージを書きたい気持ちをぐっと抑え、それが婚活市場における僕の商品価値だと自分に言い聞かせる。

 そもそも古今東西、ほとんどの男は、程度の違いはあっても、努力に努力を重ねて女性の気持ちを自分に向けさせてきたはずだ。織田信長だろうが、ジュリアス・シーザーだろうが、女性への悩みを抱えていただろう。それを思うと、僕ごとき、この程度の努力は当然だ。

 スタートの段階で、男女の関係はイーブンではない。57歳、バツイチ、収入が不安定なフリーランス、容姿は並以下なのだ。食事をお付き合いいただく、という意識で臨まないと、2度目、3度目と継続して会ってはもらえない。

欲望の量が違う男女の関係は成立しない?

 婚活で苦戦していたとき、以前婚活パーティで知り合った40歳で華道の先生をやっているユキコさん(第7,8回)から食事のお誘いがあった。婚活がなかなかうまくいかない時期の女性からの連絡には、心が救われる。まだ見捨てられていなかった、とすら感じる。

 ユキコさんからのリクエストは横浜へのドライブだった。中華街で食事をしたいという。横浜中華街の店は大きく2系統ある。一つは、萬珍樓や聘珍樓のようなメジャーな名店。もう一つは、中華街ならではの小規模な店。こちらは、餃子のおいしい店、海鮮料理に強い店、中華粥専門店など、それぞれ個性を発揮している。ユキコさんが餃子が食べたいというので、中華街大通りからひと筋入った水餃子のおいしい店を選んだ。そこでお腹を満たした後は本牧へ向かった。かつて米海軍の住宅街があった本牧エリアには、今もアメリカナイズされたバーやダイナーがある。

「今日こそは試してみる?」

 アルコールが入り気持ちが高揚したユキコさんがお誘いしてくれた。

「ううーん……」

 こちらはすぐに応じられない。彼女にはその方面の欲が強いという話をさんざん聞かされている。

「自信、ない?」

「ユキコさん、朝までなんでしょ?」

「うん。でも、朝までしなくてもいいよ。眠らないで、話し相手になってくれれば。私、した後は目が冴えて眠れないんだ。一人で起きているのが怖いの」

 正直なところ、腰は引けていた。ことの後、朝まで起きている自信はない。このときすでに11時。かすかに眠気が訪れて来ていた。

 しかし、ここでしないのは男子として情けない。そのまま、みなとみらいエリアのホテルにチェックインすることにした。ツインルームを一部屋確保できた。

 ホテルへ向かうクルマの中、ユキコさんは遠足へ行く小学生のようにはしゃいでいる。途中、深夜営業のスーパーに寄り、飲み物や食べ物を買い込んだ。

 そして客室で……。

 僕は不合格の烙印を捺された。1度目は問題なくやれたと思う。しかし、時間を置かずリクエストされて苦戦した。もはや体力の限界。それ以前に睡魔には抗えなかった。

 年齢を重ねた婚活において、とくに年齢が離れた男女において、夜の相性は大切な問題だ。たとえ心が通じ合っても、体力や欲の量に著しい差があると、不満が生じる。そのギャップを埋めるのは難しい。そんなことを痛感した一夜だった。

石神賢介(イシガミ・ケンスケ)
1962(昭和37)年生まれ。大学卒業後、雑誌・書籍の編集者を経てライターになる。人物ルポルタージュからスポーツ、音楽、文学まで幅広いジャンルを手がける。30代のときに一度結婚したが離婚。

2020年12月5日 掲載