ふたりの天才、久保と中島はコパ・アメリカで活躍できるのか。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 久保建英中島翔哉──。天才肌のこのふたりはコパ・アメリカでどんな活躍を見せてくれるのだろうか。久保が4−4−2システム(もしくは4−4−1−1システム)のセカンドトップ、中島が左サイドハーフに入ったエルサルバドル戦(6月9日)では、後半のアディショナルタイムに華麗なワンツーを決めるなど、ふたりは息の合うところを見せた。
 
 しかし、おそらく3−4−2−1システムで、しかも相手は南米の猛者たちと戦うコパ・アメリカではどうか。予想では久保も中島もシャドーで起用されるとの見方が強いが、「天才×天才」の組み合わせは果たして機能するのだろうか。
 
 「天才×天才」のコンビと言えば、98年W杯フランス代表のジョルカエフとジダン、02年W杯ブラジル代表のリバウドとロナウジーニョなどが成功例として思い浮かぶが、バッジョとデル・ピエロがイタリア代表で共存できないとしてほとんど一緒に使われなかったように、こうした組み合わせが敬遠されるケースは意外に少ない。実際、失敗例もある。
 
 近年では、アルゼンチン代表のメッシとディバラが噛み合っていないことで話題になった。同じ左利きでプレースタイルも似ていることから、「ディバラは僕のそばで、同じスペースを探してしまう」(メッシ)そうで、それが共存できない原因のひとつだと言われている。メッシもディバラも個で見れば世界屈指のタレントなのに不思議だとの見方もあるだろうが、サッカーの世界ではそこまで珍しい話ではない。
 
 だからこそ、同じ天才肌の久保と中島が同じシャドーで共存できるかは気になるところだ。右利きの中島はドリブル主体のプレースタイルで、左利きの久保は中島ほどドリブルに固執していないので、そこまで心配する必要もないだろうが、とはいえどちらも黒子になるようなタイプではない。
 
 中島も久保も自らボールを持ってリズムを作るプレーヤーで、ある程度自由を与えられてこそ本領を発揮できる。しかも守備がそこまで得意ではないふたりがいずれもシャドーで起用されたら、チーム全体のバランスを崩しかねない。中島と久保を同時起用するなら、そもそも3−4−2−1システムを使うべきではないと、そんな話になってしまう。
 
 ちなみに、近年で「天才×天才」が上手くいった例はバルサ時代のメッシとネイマール。3トップの真ん中がスアレスで、その右をメッシ、左をネイマールが担当してゴールを量産し、この「MSNトリオ」は14−15シーズンのチャンピオンズ・リーグ制覇にも大きく貢献した。なぜメッシとネイマールが機能したかと言えば、右と左で互いの“距離が離れていた”からだろう。少なくともメッシとディバラのように“足を踏み合う”状態ではなかった。
 
 この距離感がもしかすると、久保と中島が共存するためのヒントになるかもしれない。もっとも、久保自身はエルサルバドル戦でのワンツーの場面を振り返って「俺と似たような感じってわけじゃないけど、ボールを持った瞬間に何を考えているか分かったので、そうだろうなあと思って」とコメントしているので、その感覚などを頼りに中島とも素晴らしいコンビネーションを築く自信はあるはずだ。
 
 いずれにしても、中島と久保の共存はコパ・アメリカの大きな見どころのひとつになる。
 
文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)