バズフィードジャパンが報じた記事が大きな波紋を呼んでいる

写真拡大

 作家・ブロガーのはあちゅう氏が、著名広告クリエーターで「刻キタル」代表の岸勇希氏より約8年前にパワハラとセクハラを受けていたことが、12月17日のバズフィードジャパンの記事で報じられた。当時2人は電通に所属していた。この件に関するキーワードがその日のツイッター上位に居続けたほか、翌日の朝のテレビ情報番組でも報じられるなど大きな波紋を呼んだ。

 この件について、裏ではすでに様々な動きが出始めている。それは、今後、岸氏との仕事をどうするか、という判断である。すでに岸氏は、数々の批判・中傷が寄せられているツイッターのIDを消して「逃亡」。イベント出演や取材等単発的な細かい仕事や、同氏が「主役」のようになる仕事については「取りあえず見合わせ」とした方がいい、という声も出ている。同氏主導のもとで企業のマーケティングプランの根幹を担うような大きな資金が動く企画であれば、「あくまでも岸氏は黒子。現在の仕事の質と過去のパワハラは無関係」ということで、継続するかもしれない。ここから各社、世間の空気を読みながら判断していくことだろう。

 こうした広告業界のスタークリエーターをめぐる騒動で記憶に新しいのは2015年の「東京五輪エンブレム騒動」である。同年7月に発表された佐野研二郎氏のデザインが「パクリ」であるとの疑惑がベルギーのデザイナー・オリビエ・ドビ氏によって提示され、これに日本のネット民が反応し、壮大なる“祭り”に発展した。

 あの時は佐野氏が関与する別の仕事についても疑惑が噴出し、サントリーの「佐野研二郎デザイン 夏は昼からトート」キャンペーンに登場した30点のトートバッグのうち、8点に疑義が呈された。これが「佐野おろし」を決定的としたほか、エンブレムのプレゼンで使った資料の中にも他人の撮影した羽田空港や野外フェスの写真が加工されていたことも明らかにされ、同氏のデザインは撤回された。

 以後、佐野氏は表舞台から消えたかのように見えたが、業界内では同氏に対して同情的な声も多かったようだ。というのも、サントリーの件はさておき、佐野氏本人ががっつりとかかわる仕事についてクライアントも広告代理店も高く評価していたからである。広告会社関係者が語る。

「あの騒動の後、某大手企業の社長が『佐野研二郎君を励ます会』を企画するほど、彼は評価されていました。当時、ネット上のバッシングの高まりに抗えず一部企画を落とすこともありましたが、本心からいえば佐野氏との仕事は継続したいと考えていた企業は少なくない。そもそも、クライアントとしてもネットが過剰に騒いでいたのでは、という思いもあったので、彼への信頼感は揺るがなかった」

 しかし、今回の岸氏の場合は状況が違う。佐野氏の時はネット民が一体となってパクリや「怪しい癒着関係」を明かそうとする「ボランティア探偵続々」という状況になった。その中には単なる憶測の域を越えないものも少なくなかった。これらはいわば「お祭り」的なものだったのだが、今回は明確な被害者が存在する上、人権問題として労働関連やフェミニズム関連の専門家や活動家も動く可能性もある案件だ。さらに、現在は2人とも電通から離れているとはいえ、昨今のパワハラ、過労死問題でブラック企業認定を受けた同社が絡んでいるため、格好のバッシング対象となる。

 問題のある人物を雇っているとし、クライアント企業に対して電凸や見解を求める書面が送られたり、場合によっては不買運動が起きる可能性も否めない。事実、〈こいつの会社「刻キタル」のクライアント企業を徹底的に調べあげ、不買運動してやるよ〉というブログの書き込みも存在する。

「過去のことなので、大きな予算が動く仕事の場合、今更岸氏を外すことはできないでしょうが、『岸勇希プロデュース』などと大々的に銘打つような仕事は避けるようにするのではないでしょうか。基本的には、広告代理店と相談します。そしてその代理店は、岸氏がやっている他社のプロジェクトの営業担当者と代理店社内で情報交換しながらなんとなくの落としどころを見つけていくことになるでしょう。年の瀬のバタバタした中、うやむやになることを願っている人もいるかもしれません」(前出・広告会社関係者)