能登の未来を担う若い世代の“横のつながり”――発足2年目を迎えた「能登若衆の会」の新たな挑戦

石川・能登の未来を担う若い世代が横のつながりを作り、お互いに応援し合うためのコミュニティ「能登若衆の会」。
発足から1年が経過し、2026年は能登の一次産業に着目した取り組み行っています。
おぼつかない足取りで田んぼへと入っていく「能登若衆の会」のメンバーたち。周囲からは「危ない危ない」などと声が上がります。
5月20日、石川県能登町斉和にある「ケロンの小さな村」が管理している水田で20代の若者たち10人が田植えをしていました。
参加者「機械やのうて、こうやってみんなでやってる方が会話も弾みますし、僕も初めてやったんですけど、仲良うなって、楽しくできるなってすごい思います」「お米を1粒も残しちゃいけないってこういうことなんだなーって改めてやってみて思いました」
「能登若衆の会」は、能登の若者たちの新たなチャレンジをみんなで応援し合えるような「横のつながり」を作りたいという思いから2025年発足しました。
能登若衆の会・古矢拓夢代表「若い人たちが、もっと声を上げて『こういうことをしていきたいな』とか、『ああいうことをもっとしたいんだ』っていうのを当たり前に全員がすごくキラキラした笑顔で言えるような場所、それをちゃんと、周りが他人になるんじゃなくて、別に全員がチャレンジするというのはすごく難しいと思うんで、チャレンジする子たちを応援するってだけでも僕はすごく大切な役割なのかなと思うので、そういった人たちの関係性を構築していくっていうところも込めて今『若衆の会』を運営しているっていう感じですね」
古矢さんたちの呼びかけに応じて集まったメンバーは現在約120人。
地元出身者をはじめ、移住者や地域おこし協力隊、復興支援をきっかけに能登に来た幅広い職業の若者が参加しています。
会では、月に1度の交流会を開き、奥能登の若者たちが情報交換などを行ってきました。
2年目に入った若衆の会が着目したのは、能登の一次産業です。
能登若衆の会・古矢拓夢代表「僕はやっぱり能登って食がすごく魅力、里山里海があって、ご飯もおいしくて、魚介もおいしくて、野菜もおいしくて、果物もおいしくてっていうのはすごく魅力だなと思うので、この能登に来てくれた子たちには、全員に自信を持って能登の良さを知ってもらえるような活動を続けていきたいなっていう風に思いますね」
能登の豊かな食の魅力を知るために、田んぼ体験を提案したのが、笠原美怜さんです。
笠原さんは現在、金沢市内のすし店で板前の修業を積んでいます。
能登若衆の会・笠原美怜さん「寿司は魚もそうですけど、シャリも結構重要なので、コメも自分で作ったりとか、若者が自分で作ったコメで寿司を食べられるっていうか、そういう体験もできたらすごく良いなぁっていうので実現した」
福井県出身で地震をきっかけに石川県に移住した笠原さん。
漁師の手伝いをしているうちに能登の1次産業の魅力に引き込まれ現在は漁業関係の仕事を目指して修行を積んでいます。
能登若衆の会・笠原美怜さん「獲れたてのお魚ってこんなにおいしいんだとか、魚ってこんな甘かったんだとかそういうのを知れて、何でおいしくなるかっていうのもちゃんと論理的に説明してくれるのが面白くて、命いただいてるんですけど、それだけじゃない食べることに対して価値を感じるっていうか、それが大きかったです」
能登での活動を店主らも応援しています。
八七産業 飲食部・竹森圭一郎さん「震災後ってのもあるんですけれども、能登から過疎になってるそういうのを含めて彼女みたいな子が能登に入ってくれたら活気づいて良いのかなっていう風に思います」
若衆の会の田植え、サポートに当たるのは、古矢さんの祖父・上乗秀雄さん。
種から苗作りをする古矢さんを支えてきました。
ケロンの小さな村・上乗秀雄元村長「若者がこの震災をきっかけにして集まって来てくれるということに関しては震災はつらいけれども、新しい希望というかね、望みがね、かすかに見えつつあるんじゃないかと僕はそんな感じがしてますけど」
田植えでは、「いい感じですか?」という参加者からの問いに上乗さんが「いい感じ。そんな感じ」と声をかけます。喜ぶ参加者たちの間からは「褒められた!褒めて伸びるタイプだから」と喜びの声が上がります。
午前中の作業を終え、足を洗うのは村内を流れる小川の水。
奥能登の自然を感じながら慣れない田植えの疲れを癒します。
5月の小川はまだ冷たいものの、田植えで汗をかいた体には心地良く、「やっと泥パック落とせる」と冗談を言いながら泥を流していきます。食事はみんなで作るのが若衆の会流のコミュニケーションです。
板前修業中の笠原さんは、石川県能登町で仕入れてきた新鮮なアジやタイを刺身にして提供します。
能登の食材で英気を養った若者の声が午後も田んぼに響きます。
田んぼに入った笠原さんは「うわー!マジ転びそう。うわー、やばー!」と声を上げます。
「ころがし」と呼ばれる木枠のますで目印をつけて苗を植えますが、少し曲がるだけで能登のお年寄りたちから「お前は根性が曲がっとるからや」とヤジが飛ぶ道具。
交代しながら順番に目印をつけると、いよいよ手植え再開です。
古矢さん「苗は3本ずつ植えて、1人3列担当くらいね」
和気あいあいの若衆メンバーたち。
能登若衆の会・笠原美怜さん「子供みたいな感じです。種から知ってるから、こんな大きくなったのと、なんかこれからできるのめちゃなんか楽しみ。ちゃんと成長してくれれば良いなっていう、良いコメになってくれれば」
能登若衆の会・古矢拓夢代表「苗作りからやってるってのもあるので、普段普通に食べてる白米がこんなマジ手間暇かかってるなって思いますね、本当に」
作業再開から約1時間半。
田んぼ1面に植えられた苗が、5月の風に揺れます。
能登若衆の会・笠原美怜さん「多分、能登の人が見たら『へったくそなー!』とか言うけど、でも、楽しかったらok。なんか、この品種、この植えるまでが勝負だって言われてて、ここになるまで何とかもっていかせてあげたいって大人の知見者たちがすごいいろんなこと教えてくれて、やっとこの植えられたことが結構大きな達成なんですよ。だから結構嬉しいですね」
能登若衆の会・古矢拓夢代表「いや、もう、感動っすね。やっと、ここまできたなっていう感じです。能登に来てる若い子たちがこういう1次産業というか、この能登の豊かさっていうのをちゃんと体験を通していろんな子たちがもっと能登っておもろい場所だなって知ってもらえるきっかけを作れたらなーって思ってます」
一次産業の苦労と達成感を全身で学んだメンバーたち。
繋がりを力に変えて、能登の未来を拓く若衆の挑戦は、始まったばかりです。
