テレビ番組が“強盗のヒント”に…『ポツンと一軒家』は大丈夫か 韓国では女優宅に強盗事件まで

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高齢者が一人で暮らす家を、どこまでテレビで見せていいのか。

テレビ朝日系の人気番組『ポツンと一軒家』をめぐり、そんな不安の声が上がっている。

【画像】裸足で強盗から逃げる韓国女優、防犯カメラに

同番組は、衛星画像を頼りに人里離れた一軒家を訪ね、そこで暮らす人々の人生や日常を紹介する内容で親しまれてきた。山奥の一軒家、自然の中での暮らし、そこに住む人の歩み。番組の魅力は、まさにその“ありのままの生活”にある。

だが、最近の放送をめぐっては、視聴者から「個人情報が出すぎではないか」「高齢者の一人暮らしを顔出しで紹介して大丈夫なのか」といった声が出た。

こうした反応の背景には、視聴者の危機意識の変化がある。高齢者宅を狙った強盗事件や、匿名・流動型犯罪グループ、いわゆる「トクリュウ」の問題が深刻化するなか、家の場所、住人の年齢、家族構成、生活リズムがテレビで見えることに、怖さを感じる人が増えているのだ。

その懸念は、決して想像上のものではない。

韓国では最近、バラエティ番組で紹介された自宅映像が、実際の強盗事件と結びついたとされる事例が起きている。

「放送を見て家を確認」韓国女優の自宅に強盗

韓国で衝撃を与えたのは、女優キム・ギュリの自宅強盗事件だ。

(写真提供=OSEN)キム・ギュリ

キム・ギュリは5月20日21時ごろ、ソウル鍾路区にある自宅で強盗被害に遭った。報道によると、当時、家の中にいたキム・ギュリと女性知人は、金品を要求され、暴行を受けた。

2人は縛られた状態だったが、監視が緩んだ隙に家の外へ逃げ出し、市民に助けを求めて危機を逃れたという。キム・ギュリは骨折や打撲などのけがを負ったとされる。

さらに衝撃的だったのは、その後の報道だ。強盗傷害容疑で拘束された被疑者は、警察の調べに対し「放送映像をYouTubeで見て位置を確認した」という趣旨の供述をしたとされる。

キム・ギュリの自宅は、2022年にKBS 2TVのバラエティ番組『新商品発売〜コンビニレストラン』で紹介されたことがある。彼女が作業室として使う韓屋の家で、番組では、韓屋の風景、家の内部、ギャラリーとして使われる空間、家の管理の様子などが紹介された。

放送当時は、女優の暮らしや空間を見せる“観察バラエティ”の一場面だった。

しかし数年後、その映像がYouTubeに残り、被疑者が家の位置を確認する手がかりになった可能性がある。

番組にとっては、出演者の日常を見せるための映像だった。視聴者にとっては、興味深い生活空間の紹介だった。しかし、犯罪者にとっては、家を探すための“下見情報”になり得たということだ。

この事件を受けて、女優ナナやタレントのパク・ナレの自宅被害も再び注目されている。

(写真提供=OSEN)ナナ

ナナは昨年11月、京畿道・九里市にある自宅に侵入した男から金を要求され、凶器で脅される事件に遭った。韓国メディア『YTN』は、「男はナナが過去にバラエティ番組やSNSのショート動画などで公開した特徴的な建物の外観と屋上の構造を手掛かりに、位置を追跡し、夜間を狙って配管をつたい、窓から侵入した」と報じている。

パク・ナレも昨年4月、ソウル龍山区の自宅で数千万ウォン(数百万円)相当の金品を盗まれた。彼女もまた、複数のバラエティ番組を通じて自宅や生活空間を公開してきた人物だ。

もちろん、すべての事件が番組公開だけを原因にして起きたわけではない。芸能人はもともと注目度が高く、SNS、記事、動画、ファンの投稿など、複数の情報が組み合わさって居住地が推測されることもある。

ただ、韓国で問題視されているのは、まさにその点だ。現在は、放送で詳細な住所を出さなくても、家の外観、周辺風景、建物の特徴、生活動線、SNS投稿などを組み合わせれば、場所を特定できる可能性がある。

(写真提供=OSEN)パク・ナレ

つまり問題は、住所を伏せても、映像に映った断片が積み重なれば、誰かにとっては十分なヒントになり得ることだ。

ポツンと一軒家』が抱える別の怖さ

ここで、日本の『ポツンと一軒家』の問題に戻る。

韓国のキム・ギュリやナナ、パク・ナレの事例は、芸能人の自宅公開をめぐるリスクだ。だが、『ポツンと一軒家』には、それとは別の怖さがある。

出演者が有名人ではないことだ。芸能人であれば、防犯意識が高く、事務所やマネージャー、警備会社、近隣の注目など、一定の防衛線がある場合もある。もちろんそれでも被害は起きている。

一方、『ポツンと一軒家』で紹介されるのは、多くの場合、一般人だ。しかも、人里離れた場所に住む高齢者であることも少なくない。

番組の性質上、近隣住民が少ないこと、高齢者が一人で暮らしていること、家の外観や周辺環境、家の中や敷地の様子が紹介されやすい。番組にとっては、それらが“暮らしぶり”を伝える大事な要素になる。視聴者も、そうした情報があるからこそ、その人の人生に触れたように感じる。

しかし防犯の視点から見れば、それらはかなり敏感な情報でもある。犯罪を考える者にとって、そうした情報は“物語”ではなく“手がかり”になり得る。

韓国で起きたキム・ギュリの事件は、まさにその怖さを示した。放送時には問題視されなかった自宅映像が、数年後、YouTube上に残り続け、犯人の参考情報になったとされる。テレビで一度流れた情報は、放送後に消えるわけではない。

今は、切り抜き動画、配信、SNS投稿、検索によって、過去の映像が長く残る。

その意味で、『ポツンと一軒家』に向けられた「個人情報が出すぎではないか」という声は、過剰反応とは言い切れない。

住所を出していないから安全という時代は、すでに終わって久しい。外観、地形、周辺施設、生活リズム、家族構成。断片的な情報が積み重なれば、居場所や生活の弱点は推測される。

韓国で起きたキム・ギュリの事件は、その不安が現実になり得ることを示した。

人の暮らしを見せる番組が、どこまで安全に責任を持てるのか。その問いが、いま改めて突きつけられている。