≪コープみらい配達で“尿”混⼊≫「携帯トイレを渡しておいて何を言っているんだ」元委託配達員が告発する人手不足とプレッシャー「欠員が出ると全く知らない地域に行かされる」

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生活協同組合コープみらいの配達商品が、配送委託先の配達員の尿で汚損されていた問題。コープみらいは、配達員が業務中に廃棄予定だった発泡スチロール容器に排尿し、漏れ出した尿が下段の商品を汚損したと説明した。配達環境は「トイレに行けないほど過酷ではない」と説明した。だが、コープみらいの配送を担う委託業者の元配達員は、委託先の現場で休憩やトイレの時間を取りづらい実態があったと証言する。委託配送の現場では、何が起きていたのか。

≪画像≫「排尿した事実を確認いたしました」コープみらいが掲載した不適切行為に関するお詫びのお知らせ

コープ説明に元委託配達員が反論「現場感覚とは違う」

発端は4月28日、コープみらいで配達されたヨーグルトのカップなどが入った袋に、黄色い液体がたまっている写真がXに投稿されたことだった。

投稿者は、届いた生協の商品袋に人の尿のようなにおいがする液体が入っていたと訴えていた。

コープみらいは5月6日、ホームページ上で謝罪文を掲載。

問題の商品が同生協の配達商品だったことを認めたうえで、配送委託先の従業員が配送中、荷台内の廃棄予定だった発泡スチロール容器に排尿し、その容器に空いていた穴から漏れ出した尿が、下段にあった組合員へ届ける配送器材に移り、内部の冷蔵商品を汚損させた状態で配達が行われたと説明した。

食品配送の現場で起きた信じがたい事態に、他社の宅配ドライバーからは「食品を扱う車内で用を足すなんて」との声が上がり、長年コープを利用してきた組合員からも「信頼を裏切る行為だ」と怒りや不安の声が聞かれた。

集英社オンラインの取材に対し、同生協は、配達員の故意ではなく、警察からも「事件性はない」と聞いていると説明。

配達量についても「トイレに行く時間がないほど過酷な状況ではない」と否定し、配送車両の中で排尿した例を確認したのは今回が初めてだと答えている。

しかしこの説明に対し、関東近郊で同生協の配送を担う委託業者で、10年以上配達員として働いていたA氏は異議を唱える。「現場の実態は違う」と言うのだ。

「委託会社のドライバーの勤務時間は基本的に8時半から午後5時半までで、制度上は1時間の休憩を取れます。しかし、休憩を取れていた人は私の感覚では1割程度です。取っていないのに端末上では休憩を取ったことにしていた人も多かったと思います。

委託会社の現場では、配達だけでなく、積み込みや帰着後の片付け、洗車、事務作業まで自分たちでやっていたからです。通常の配達は1人で行なうのが基本でした。

いっぽうで委託ではないコープ(本体)に所属するドライバーは配達件数が比較的抑えられていて、積み込みや片付けをパートさんがやってくれることも多かったと思います」(A氏、以下同)

昼食も取れず…元配達員が語る過酷な日常

なぜ、休憩をきちんととれないのか。

「個人宅だけでなく、近隣の方が決まった時間に集まって商品を受け取るグループ配達もあるので、時間通りに行かなければなりません。

遅れや商品違い、商品不良、担当者の態度などのクレームはコールセンターに入り、毎朝の朝礼で共有されます。理由の説明や改善点を求められたりするので、かなりプレッシャーがあります。

さらに、配達員は通常、担当コースがあって同じ地域を回るのが基本ですが、欠員がでるとまったく知らない地域に行かされることもあります。地図を見ながら初めての場所を回るので、時間もかかりトイレや休憩の場所もわかりません。

委託会社では人手不足が慢性化しており、役職のある社員も穴埋めでいろいろなコースに入ることになります」

では、配達中のトイレはどうしていたのか。

「配達用の地図にトイレの場所を記しておく決まりはありました。ただ、実際には印がついていないコースもありますし、都内では車を停める場所自体がなかなかありません。コンビニでもトイレが使えないところがあります。私がいた会社では、5~6年前から車内に携帯トイレを常備するようになりました」

A氏のいた会社で配布されていたのは、尿を袋や容器で受け、凝固剤で固めて処理するタイプの簡易トイレだったという。だが、配達中の車内で実際に使用することには心理的な抵抗があったという。

「携帯トイレを実際に使っている人は多くはなかったと思います。車内で使うところを見られる可能性もありますし、使ったものを車内に置いたまま配達を続けるのも嫌ですよね。

だから、トイレに行きたくならないよう、水分を取らない人も珍しくありませんでした。私自身も、配達中は飲まず食わずに近い状態で、昼ご飯も何年もまともに食べていませんでした」

「携帯トイレを渡しておいて何を言っているんだ」

A氏が疑問を向けるのは、コープみらいが「配送車両の中で排尿した例を確認したのは今回が初めて」と説明している点だ。

「そもそも携帯トイレを常備させている時点で、車内で排尿せざるを得ない状況があることは想定しているはずです。現場を知っている人間からすると、配達中にトイレへ行けないことは特別なことではありません。

それなのに『車内で排尿した例を確認したのは今回が初めて』と言われると、携帯トイレを渡しておいて何を言っているんだ、という気持ちになります」

トイレに行きづらい状況を知るA氏は今回の件を聞いたとき「トイレに行けなくてやってしまったのかな」と驚きはなかったという。

そのため、コープみらい側の説明には、現場の実態が十分に反映されていないのではないかと指摘した。

A氏が指摘する委託配送の現場の実態について、コープみらいに質問状を送ると次のような回答があった。

〈配達コースによって件数に差はありますが、配送委託先と連携し、業務負荷の適正化に継続して取り組んでいます。現在、1日の配達件数は平均約60件です。また、業務用スマートフォンを活用して休憩取得状況を日々確認しており、制度上定められた休憩時間はほぼ取得されていると認識しています。

携帯簡易トイレは、災害等の緊急事態により通常のトイレが一切使用できなくなった場合を想定して、トラックに常備しておりました。通常の配送業務中における使用を想定したものではありません。なお、今回の事案においても、当該簡易トイレは使用されておりませんでした。配送車両内での排尿については、今回の事案以前に報告された事実はございません。

今回の事案は配送委託先会社および従業員個人の責任にとどまらず、労務環境や業務運営のあり方も含めて、組織全体の問題として真摯に受け止めております。

具体的には、全ての配送委託先およびその従業員、当生協職員が安心して業務に従事できるよう労務環境を再点検するとともに、従業員の身体・健康面への適切なサポートを行ってまいります。あわせて、配送ルート上のトイレの事前確認と情報共有、緊急時に立ち寄り可能な施設リストの整備・周知など、必要な対策を迅速に講じてまいります〉

Aさんは委託業者に負担がかかりやすく、その先に厳しいトイレ事情がある構造を明かしてくれた。再発を予防し、信頼を取り戻すためにはこの構造の改善が必要だろう。

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取材・文/鮫島りん 集英社オンライン編集部ニュース班