会社設立、自力でやり切れば〈安上がり〉だが…実践するために「押さえておきたい5項目」と「トラブル回避の注意点」【司法書士が解説】

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会社の設立は、正しいプロセスを踏めば自身で行うことも可能です。しかし、法律の知識や正確な手続きが求められ、十分な注意が必要です。本記事では『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』から一部を抜粋し、自力で会社設立の手続きを行う際の流れと注意点、トラブルになりやすいポイントと回避策を解説します。

自力で会社設立する場合の注意点

会社設立を自分の手で進めることは、費用を抑えながらプロセス全体を把握できる魅力的な選択肢です。しかし、法律的な知識や手続きの正確さが求められるため、ミスやトラブルが起こるリスクもあります。これらを防いでスムーズに手続きを進めるためには、事前準備や各ステップの注意点を押さえておく必要があります。

会社設立を自力で進めるメリットとデメリット

〈メリット〉

費用を抑えられる:専門家に依頼する場合の報酬が不要になるため、設立費用を削減できます。

手続きの流れを把握できる:自ら手続きに取り組むことで、会社運営に役立つ知識が得られます。

〈デメリット〉

・手続きが煩雑で時間がかかる:書類作成や法務局での確認など、初めての人には時間的負担が大きい手続きです。

・ミスが発生しやすい:法的な要件を満たしていない場合、手続きが遅延し、スケジュールに影響が出る可能性があります。

・手続きを覚えても活用の機会が少ない:多くの人にとって、会社設立は基本的に「一度限り」の手続きです。せっかく覚えてもその後に役立つ機会は多くありません。

会社設立を自力で行う際の注意点

■基本事項の決定

会社名(商号)や事業内容(目的)を決める際、曖昧な決定はあとあとトラブルにつながる可能性があります。会社名(商号)が他の企業と類似していると、商標権や商号権の侵害リスクがあります。事前に商号調査を行い、商標登録も確認しましょう。

また、許認可が必要な業種の場合は、事業目的が適切に記載されていないと許認可が下りません。曖昧さを排除し、具体的かつ現実的な内容を決定することが重要です。

■登記申請書類の整合性

登記申請には多くの書類が必要で、それらの内容が一致していないと修正を求められます。また、払込処理を失念して申請してしまった場合は登記申請が却下されます。テンプレートなどを活用し、書類内容の再確認を徹底しましょう。

定款、登記申請書、払込証明書などの内容に矛盾がないか、記載内容の一貫性を確認します。その後、設立登記申請までに行うプロセス(定款作成・出資金払込など)を確認し、確実に実行しましょう。

■許認可が必要な業種の事前確認

特定の業種では、設立時点で許認可を取得しておく必要があります。例えば、飲食店は保健所の許可が、建設業は建設業許可が、人材派遣業は労働局の許可が必要です。定款に必要な文言が記載されているか、事前に管轄官庁や専門家に相談しましょう。

会社設立を自力で行う場合、時間と費用を抑えることができますが、そのぶん手続きの正確さが求められます。スムーズに進めるために、次のポイントを押さえましょう。

・基本事項の決定は具体的かつ現実的に行う。

・定款作成は事業目的や記載内容に細心の注意を払う。

・出資金払込の記録を適切に準備し、証明書類を整える。

・登記申請書類は一貫性を確認し、設立プロセスを守る。

・許認可が必要な業種は、事前に定款文言を確認する。

自力で行った場合に起こるトラブル

自力で会社設立を行った場合、どのようなトラブルが起こりうるのでしょうか。よくあるトラブル事例とともに、回避策を見ていきましょう。

■定款に不備があった場合のトラブル

事例:ある起業家が見本を参考にして定款を作成したものの、事業目的の記載が不適切であったため必要な許認可が取得できず、事業開始が大幅に遅れた。

原因:事業目的が曖昧すぎた、あるいは具体性を欠いていたなど

→特に建設業や飲食業など許認可が必要な業種では、事業目的の記載が適切でないと審査で弾かれます。

〈回避策〉

・必要な許認可がある場合、その業種特有の文言を正確に記載する。

・公証役場や専門家に定款の内容を事前確認してもらう。

■出資金払込の記録不備による申請却下

事例:発起人の友人名義の口座を使って出資金を振り込んだ結果、法務局で登記申請が受理されなかった。

原因:友人名義の口座を使ったこと

→出資金は発起人自身の口座に振り込む必要があります。他人名義の口座や法人名義の口座を利用すると、資本金の払込証明が認められません。

〈回避策〉

・必ず発起人名義の個人口座を使用し、通帳の該当ページを正確にコピーする。

・払込証明書の作成例を参考にして正しい形式で準備。

■商号(会社名)のトラブル

事例:設立後に、他社が商号をすでに使用していることが判明し、商標侵害で訴えられた。結果として会社名の変更を余儀なくされ、多額の費用と時間がかかった。

原因:商号調査が不十分だったこと

〈回避策〉

・事前に商号調査を行い、商標権や商号権の登録状況を確認する。

・特に広範な事業展開を予定している場合は、商標登録を視野に入れる。

※ 本記事は書籍の内容を抜粋・掲載したものであり、最新の法令・制度とは異なる場合があります。実務にあたっては必ず最新の情報をご確認ください。

加陽 麻里布
司法書士法人永田町事務所
代表司法書士