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刑務所で被告人との接見内容を録音したICレコーダーを職員に検査されたのは、秘密接見交通権の侵害にあたるなどとして、岡山市の弁護士が国に損害賠償を求めた訴訟の判決が4月15日、岡山地裁であった。

森實有紀裁判長は、録音の事後検査は刑事訴訟法違反と認定。一方で、通達に従って対応した刑務所職員の行為については国家賠償法上の違法性はないと判断し、原告の請求を棄却した。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●接見後、録音を2倍速で再生させられた

原告の小野智映子弁護士は2022年3月、ある刑事事件の国選弁護人に選任された。

小野弁護士は2023年7月18日、岡山刑務所に勾留されていた被告人と接見した際、持参したICレコーダーで接見内容を録音したいと刑務所の職員に申し入れた。

刑務所側は、機器の事前検査に加えて、接見後に録音を再生して内容を確認し、未決拘禁の目的に反する部分があれば消去することを条件として録音を認めた。

接見後、小野弁護士は職員の指示に従い、弁護人面会待合室で録音したデータを2倍速で再生し、内容のチェックを受けた。

こうした刑務所側の対応について、小野弁護士は、事前申告や事後検査によって、弁護人の秘密接見交通権や弁護活動の自由を侵害され、精神的苦痛を受けたとして、国に慰謝料など計100万円の損害賠償を求めて提訴した。

●争点「録音の事前申告・事後検査」の適法性

主な争点は、 ・録音の事前申告や事後検査が刑事訴訟法39条1項に違反するか ・刑務所の職員の行為が国家賠償法上、違法といえるか だった。

小野弁護士は、ICレコーダーによる録音は接見内容そのものであり、いかなる検査も入れる余地がないことを憲法が保障していると主張。

一方、国側は、録音には罪証隠滅などを目的とした不適切な情報が紛れ込むおそれがあり、メモなどの別の方法もあるため、秘密接見交通権の保障は及ばないと反論した。

●判決「事後検査は刑事訴訟法違反」

岡山地裁は「接見時のやり取り時においては、会話が次から次へと流れていくこともあり得るなかで、必ずしも筆記によるメモだけでは正確に記録化し切れないことも十分に想定される」と指摘。

ICレコーダーなどの録音機による記録化行為が「筆記によるメモの究極的な形態」であり、弁護士が第三者などに被告人の発言をそのまま再生して伝えることは「基本的には差し控えられるはず」などとして、接見交通権の保障の下にあると判断した。

そのうえで、事後検査について「職員が接見内容そのものを確認することとなり、接見そのものに立ち会ったのと実質的には同等のことがおこなわれたと評価せざるを得ない」として、刑訴法39条1項に違反すると認定した。

●国賠法上の違法性は否定

一方で、録音を事前に申告させる行為については、「事後におこなわれる検査とは異なり、原告と被告人との間でされた接見の内容そのものを確認するものではない」と違法性を否定した。

また、事後検査を実施した刑務所職員の行為は、法務省の通達に基づいておこなわれたものであると指摘。

当時、この通達に基づく事後検査が刑訴法に反するとした司法判断が出たことはなく、「通達の定めが明らかに法令の解釈を誤っているといえるだけの特段の事情も認めることはできない」とした。

そのうえで、事後検査をした職員について「職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさなかったということはできず、国賠法1条1項適用上の違法があると認めることはできない」として、原告の請求を棄却した。

●原告側「違和感は正しかった」

今回の判決について、小野弁護士は次のようにコメントした。

「接見の録音が秘密接見の対象になること、録音の検査が違法であると認定された点については満足しています。刑事弁護の現場で感じた違和感が正しいものと判断されたと思っています。ただ、請求としては棄却されておりますので、控訴については検討中です」