早く手を付けた方がいい課題やタスクを先送りにしたり、今日が締め切りの提出物があるのに部屋片付けをしてしまったりと、「先延ばし癖」に悩んでいる人は多いはず。約3000人の被験者を18年間にわたって追跡した新たな研究では、先延ばし癖は年齢を重ねるとともに減少する傾向があるものの、長期にわたって学業・収入・健康状態などに影響を与えることが示されました。

Once a procrastinator, always a procrastinator? Examining stability, change, and long-term correlates of procrastination during young adulthood.

https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fpspp0000591

Longitudinal study finds procrastination declines with age but still shapes major life outcomes over nearly two decades

https://www.psypost.org/longitudinal-study-finds-procrastination-declines-with-age-but-still-shapes-major-life-outcomes-over-nearly-two-decades/

以前から先延ばし癖に関する研究はありましたが、その多くは主に学生を対象とした短期的な行動に焦点が当てられていました。これらの研究は、人々が先延ばしをする原因やパフォーマンスへの影響を把握する上で役立ってきましたが、先延ばし癖が長期的なスパンで見て変化するのかどうかはよくわかっていません。

そこで、ドイツのテュービンゲン大学で先延ばし癖などについて研究している心理学者のリサ・ボールケ氏らの研究チームは、青年期後期から成人期にかけて先延ばし癖を調査することにしました。被験者を長期間追跡することで、先延ばし癖が時間経過に伴いどのように変化あるいは安定するのかや、教育段階から就労段階への移行が先延ばし癖に影響するのかどうか、人生におけるさまざまな結果に及ぼす影響などについて理解できるとのこと。

研究チームはドイツにある149の高校から募集した3023人の被験者を対象に、高校の最終学年から18年間にわたる追跡調査を行いました。被験者は2〜4年おきに先延ばし癖の度合いを測定する質問に回答したほか、誠実性や神経症傾向といった性格特性に関する検査を受け、学業・就業・両者の中間期といった生活状況についても報告しました。

また、被験者からは「大学を卒業したかどうか」「学業成績」「仕事で得た収入」「仕事の昇進」「パートナーとの交際状況」「子育て」「生活満足度」「COVID-19パンデミック中のメンタルヘルスとテクノロジーの利用状況」など、人生に関するさまざまな結果についてのデータも収集されました。これらの結果を分析することで、研究チームは高校最終年の先延ばし癖の傾向と、18年後の人生の状況を結びつけることができました。



分析の結果、調査の初期段階で先延ばし癖を持っていた人は、その後の人生でも先延ばし癖が強い傾向がみられました。その一方で、全体的な先延ばし癖のレベルは年齢とともに低下しており、次第に先延ばし癖は改善されていく傾向がありました。しかし、先延ばし癖の変化については個人差が大きく、改善度合いも人によって異なっていたとのことです。

また、時間経過とともに誠実性が増したり神経症傾向が軽減したりした人は、先延ばし癖が改善される傾向がありました。大学生から社会人への移行も同様に先延ばし癖の改善に関わっており、社会人になることでより構造化された環境に身を置き、責任が増すことが先延ばし癖の減少に役立つ可能性が示唆されています。

逆に、先延ばし癖のレベルが高いほど大学生から社会人への移行がうまくいかず、社会に出るのが遅れる傾向もみられたことから、生活環境と自己制御の間には相互関係があることが示されています。

先延ばし癖は人生の長期的な結果とも強く関連しており、高校最終年の先延ばし癖が強い人は数年後の学業成績の低下、収入や昇進機会の減少、人間関係や健康の問題といったさまざまな悪影響が生じる傾向がありました。これらの関連性は、COVID-19パンデミック中のメンタルヘルスやテクノロジーの利用状況にも及んでいたとのことです。



心理学系メディアのPsyPostは、「この研究は先延ばし癖が単なる短期的な習慣ではなく、約20年にわたる人生の様々な領域における人々のパフォーマンスを予測する上で、重要な指標であることを明らかにしています」と述べました。

なお、今回の研究に用いられたデータは自己申告に基づいたものであるため、無意識のバイアスが生じている可能性もあります。また、被験者はいずれもドイツの一部地域で収集されたため、その他の地域にも結果を一般化できるかどうかは今後の課題となっています。