“とにかく目立ちたい”小泉防衛相のSNSフライング投稿も…自衛隊員『国歌斉唱』で露呈した“止められない自民党”の危うさ
自民党大会に陸上自衛隊員が登壇し、国歌を歌った件。法律論にもなっているが(当然ながら)、その前に、なぜ誰も“これは論議になるぞ。まずいのでは”と思わなかったのか?という素朴な疑問がある。
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「知らなかった」には、他責モードも含まれている
高市早苗首相は「会場に着くまで知らなかった。法律的に問題はない」と述べている。鈴木俊一自民幹事長は党大会を企画した会社が自衛官個人に対してお願いをしたと説明。萩生田光一幹事長代行は防衛省も「問題ない」と回答したと説明している。これらの「知らなかった」には、“自分の責任ではない”という他責モードも含まれていることを味わいたい。
では真打の登場だ。防衛大臣の小泉進次郎氏である。この方は他の人が言う「知らなかった」とはちょっと趣が異なる。ジャンルが違うと言えばよいだろうか。質の違う「知らなかった」なのである。

小泉進次郎防衛相 ©時事通信社
小泉氏は「今回の歌唱に関し、私は事前に報告を受けていなかった」と主張。16日の国会では「幹部への報告や情報共有について反省すべき点があった」と述べた。この言い分だと、情報共有をしていたら事前に止めていたというニュアンスにもとれる。しかしすでに多くの方が知る通り、小泉氏は当日に当該の陸上自衛隊員と記念撮影し、Xにも投稿していたのだ(その後削除)。
周囲が他責を漂わせる意味合いで「知らなかった」と言っているなかで、小泉氏は防衛大臣なのに「何も知らなかった」「危うさを予測できなかった」ことがそのまま窺えるのである。
実は今回の件は、直近の小泉防衛相のやらかしと共通する部分があるのだ。「週刊文春」の複数の報道と答え合わせができる。
※例・小泉進次郎防衛相が勝手に「イラン派遣宣言」で怒られた!《SNSフライング投稿が波紋》《「目立ちたいだけでは?」と周囲は疑念を…》 (「週刊文春」編集部2026/03/11)
まず“イラン派遣宣言”だ。3月5日、小泉氏はXに〈邦人輸送のための自衛隊機の派遣準備に着手しました〉と投稿した。しかし邦人退避のための自衛隊機の派遣は、外相からの依頼で行うと自衛隊法84条の4で定められている。この発言で小泉氏は木原稔官房長官と茂木敏充外相から懸念を示されたという。ここでも防衛大臣自身が自衛隊法の運用をどこまで理解していたのかという疑問が浮かんでくるではないか。そしてSNSのフライング投稿問題も絡んでいる。
「見え方を気にしすぎでは」と身内から疑問の声も
まだある。小泉防衛相は3月28日、日米合同慰霊式に出席するため硫黄島を訪れたが、ここでも象徴的な出来事が起きた。予定になかった元米兵の摺鉢山訪問を急きょ指示し、秘書官に「写真を撮って」と頼んで記念撮影も行ったため、その後の行程が5分刻みになるなど現場が慌ただしくなったとされる。移動ルートの変更も重なり、「見え方を気にしすぎでは」と身内から疑問の声も出ているという。
とにかく目立ちたいという意気込みを感じる小泉防衛大臣のSNS投稿。今回の自衛隊員との記念撮影投稿もまったく同じ流れではないか。そこに、防衛大臣自身が自衛隊法の位置づけをどこまで理解していたのかという疑問まで重なってくる。「これをしたら論議になりそうだ」という危機管理までも含めて。
自民党ベテラン議員の言葉が印象的だった。
「大臣がわからなくとも、秘書官室や内局が止めるだろう。自民党も防衛省も極端にレベルが下がったとしか言いようがない。(略)戦前にもなかった政・軍一致だよ」(日刊スポーツ「政界地獄耳」)
「大臣がわからなくとも」という前提そのものがすでに哀しいが、それでも「戦前にもなかった政・軍一致」という言葉の重さは、今回の出来事の異様さをよく表している。
騒動が長引きそうになると木原官房長官は、自衛隊法で制限される「政治的行為」にあたらないとの認識を示した上で、「法律に違反することと、政治的に誤解を招くようなことがないかは別問題だ。その点はしっかりと反省すべきだと考えている」と述べた(15日の衆院内閣委員会)。
つまり、法律論とは別に国民からどう見られるかという「見られ方」の問題でもあると認めたのだ。新聞各紙でも専門家が「あたかも自衛隊が特定の政党のために職務を行っているかのように国民が見る恐れがある」など、「見られ方」への指摘は多い。
高市首相の発言に自民党内で戸惑いが広がっている
だがここまで報道を追うと気づくことがある。今回の件は自民党側からは「国民にどう見られるか」より「国民にどう見せたいか」が大きかったのではないか?という点だ。
あの日の党大会では何があったのか。読売新聞は『自民党大会 首相、改憲に強い意欲 次大会までに発議メド』と伝えた。つまり自衛隊員に国歌を歌わせたことは、改憲機運を盛り上げるための必然的な演出だったとも思えてくる。
一方で自民党内の温度差を伝えたのはこの記事だ。
『改憲踏み込み、戸惑う自民 独断即決「高市流」に不満 旧派閥、再結集の動きも』(朝日新聞)
高市首相の発言に自民党内で戸惑いが広がっているという。党幹部は「事前に聞いていなかった」と。「独断即決の高市流」への不信感が強まっており、「意に背けばクビが飛ぶ」との恐怖心を漏らす議員もいるという記事だ。
これを読むと、なぜ特定政党との距離の近さが問題になるかもしれないと、誰も事前に気付いていなかったのか?という素朴な疑問の見え方が違ってくるのだ。衆院選で自民党を大勝させ、強力な改憲派の高市首相がいよいよ張り切りそうなら、あの演出を事前に知りえた人々も、「論議になりそうだ」とは思っていても止めなかったのかもしれない。むしろ論議になる危険性も予感しながら黙認したのではないか。
しかしである。そうした空気の中、小泉防衛相がわざわざ自衛隊員と記念撮影をしてSNSにも投稿するという、度が過ぎる行為までは予測できなかったのだろう。もはや小泉防衛相そのものが危機管理の対象になりかねないレベルなのかも。
それにしても「会場に着くまで知らなかった。法律的に問題はない」というコメントは、本当に、高市首相らしさに包まれたコメントだったのではないだろうか。
(プチ鹿島)
