紀子さま

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【全2回(前編/後編)の前編】

 各種世論調査で“皇室に親しみを感じる”との回答は7割前後。そんなロイヤルファミリーへの信頼感を利用して、悪だくみを練る者は後を絶たない。億単位の被害を訴えられた詐欺師も、秋篠宮妃紀子さま(59)の実弟で「未来の天皇の叔父」との関係を利用していた。

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【写真を見る】怪しいNPO法人の広告塔を務めたことも… 「紀子さまの実弟」川嶋舟氏

 古式ゆかしい「燕尾纓(えんびのえい)」の付いた冠をかぶった瞬間、未来の天皇は成年皇族の仲間入りを果たした。秋篠宮家の長男・悠仁さま(19)が昨年9月6日に臨まれた「成年式」のクライマックスといえる「加冠(かかん)の儀」の場面である。皇居・宮殿には、天皇皇后両陛下をはじめ、秋篠宮ご夫妻ならびに皇族の方々、三権の長が勢ぞろい。その際に撮影された写真は、悠仁さまと関係が深い「親族席」の様子を捉えた一枚である。

紀子さま

 最前列の左端には天皇家の長女・愛子さま(24)、その横には秋篠宮家の次女・佳子さま(31)はじめ女性皇族の方々がご列席。2列目へ目を移せば、左には天皇陛下と秋篠宮さまの妹である黒田清子さん(56)夫妻、右には秋篠宮妃紀子さまの実弟・川嶋舟(しゅう・52)夫妻が並んでいる。両夫妻は民間人ながら、ロイヤルファミリーに連なる親族として、悠仁さまのご成長を見届ける役割を果たしたのだ。

「“珍しい人を紹介する”と言われ……」

 悠仁さまの叔父で東京農大准教授の川嶋氏は、モーニングの正装に身を包み神妙な面持ちで式に臨んでいたが、こうした晴れ姿を苦々しい思いで見つめる人物がいた。

 都内で環境事業を営む会社の社長を務めていた80代の男性は、こう憤る。

「川嶋さんは紀子さまの実弟だから、まさか自分の立場をわきまえずデタラメを言うはずがない。そう思い込み、信じてしまった。川嶋さんイコール秋篠宮家という印象を持っていましたから。私からすれば秋篠宮家にだまされたようなモノですよ」

 いったい何があったのか。自らを「詐欺事件の被害者」だと訴えるこの男性は、手元の手帳をめくりながら、以下のように振り返る。

「川嶋さんと初めて会ったのは2010年4月のことでした。東京・築地の水産会社の社長と称する男から“珍しい人を紹介する”と言われたのです」

 この水産会社の男性社長、仮にA氏としよう。年齢は被害者男性と同じく現在80代で、その場で川嶋氏を「あの紀子さまの弟」だと紹介してきたという。

「今までの人生で皇族はもとより、皇室とゆかりのある人になんて会ったことありませんでしたからね。すごい人が出てきたと思った。川嶋さんは格幅が良く、その社長を“Aさん”と呼んで、親しげにしていたのが印象的でした」

「成功したら牧場がもらえる」と夢を語っていた舟氏

 この一件で、被害者男性はA氏に対して“すごい人物だ”との認識を持ってしまったそうだ。

「この場で私と川嶋さんはあいさつを交わす程度でしたが、Aは群馬県にある21万坪の土地を3億円で取得するみたいな話をしていた。そこに川嶋さんが絡んでいたかはよく分かりませんでしたが、私からすれば、Aは皇室にゆかりのある人物と仕事しているのだ、と信用してしまいました」

 それから10カ月後の11年2月、被害者男性は川嶋氏と再び会う機会を得た。

「築地本願寺の中にある日本料理店『紫水』で、Aと川嶋さんと三人で会食しました。そこで川嶋さんは“どうかAさんを手伝ってあげてください”と頼んできた。続けて“二本松プロジェクト(後述)の件で協力してくれているけど、ここはひとつ成功させてくださいよ。協力してください”と言って、“プロジェクトが成功したら牧場がもらえるのです。そこで馬を飼うつもりです”なんて夢まで語っていたのです」

 もらった名刺の肩書には「獣医師」とあり、被害者男性は川嶋氏が乗馬などを通じて心身を癒やす「ホースセラピー」の研究者だと知る。

「民間人からすれば皇室と聞くだけで絶大な信頼を抱く」

 川嶋氏の父で5年前に他界した辰彦氏は、学習院大学の教授時代、上皇さまも所属された馬術部部長だった。かような父の下で育った川嶋氏は、学習院高等科を卒業後、麻布大を経て東大大学院で獣医学の博士号を取得。東京農大で教鞭を執る傍ら、福島県相馬市内にある神社で禰宜(ねぎ)職を務める女性と06年に結婚した。12年に離婚するが、前妻との縁から野馬を放つ地元の伝統行事「相馬野馬追」にも関わってきた。

 そうした川嶋氏の人となりを知るほど、被害男性はA氏の話も信用するに至ってしまったという。

「われわれ民間人からすれば皇室と聞くだけで絶大な信頼を抱く。別格ですよ。それに関係する方が現れて“協力して”などと頼まれたら信じてしまう。もう決定的というか、特別な信用を与えてくれたように思えた」

 そもそも「二本松プロジェクト」とは、09年、A氏が被害者男性に持ちかけてきた儲け話である。

「Aが言うには、福島県二本松市にある約50万坪の土地を買収する大型開発事業だと。その土地に立つホテルやゴルフ場などを、Aの会社が一時的に保有して、韓国企業に転売すると説明されたのです」

「成功すればすぐに返済できると言われ……」

 A氏はスーツから靴まで全身エルメスで固め、趣味は貴金属と高級腕時計の収集。乗っていた車はメルセデス・ベンツの白いオープンカーで、夫人も赤いメルセデス・ベンツを乗り回していたそうだ。

「長身で端整な顔立ちのAは、身に着けているものや所作、話し方まで品があり聡明さを感じた。その彼から紹介されたのが、過去に高額納税者ベスト10にも入っていたと語る企業経営者でした。千葉県に本社を持ち大手食品メーカーと取引がある会社のトップで、会うと確かにA以上に上品な富裕層といった雰囲気。その経営者から二本松プロジェクトへの協力を請われたのです。Aの話では、プロジェクトはこの企業が実質的に進めていて、確実に10億円超の収益が望めるとそそのかされました」

 そうした甘言を繰り出すA氏は、被害者男性に資金提供するよう持ちかけてきた。

「プロジェクトを成功させるには、二本松市の助役や地主らを接待しながら土地の買収を進める必要がある。しかも交渉する地主は40名以上に及ぶので、接待経費が慢性的に不足している。成功すればすぐに返済できるので、資金を貸してほしいと頼まれたのです」

1億円を超える大金を貸した決め手は「川嶋さんの存在」

 当初、被害者男性は多くても1000万円から2000万円前後の金額を想定していたが、最終的には自分の妻と知人と合わせて1億円を超える大金を、A氏に貸したというのだ。

「私も会社経営に苦しんでいて、Aはプロジェクトが成功した暁には自分の会社と合弁して事業再生できると言ってきた。彼が金を所望する口実はさまざまでしたが、地主を温泉で接待するから100万円必要だとか、韓国企業とのやりとりで買収金額の支払いに不足があるから貸してくれとか……。私も現地に行き確かめればよかったんですが、それでもAを信じてしまったのは、彼から紹介された高額納税者の経営者と、皇室と縁の深い川嶋さんの存在が大きかったわけです」

 被害者男性が川嶋氏と初めて会ったのは、まさにA氏に金を貸し始めた頃だった。そして川嶋氏と再会した際の会食の席が設けられたのは、被害者男性がA氏への不信感を募らせていた時期にあたる。

「心配していた頃合いで、川嶋さんからプロジェクトへの協力を求められた」

「再びAが私と川嶋さんを引き合わせたのは、私どもを安心させるためだったと思います。なかなかプロジェクトが進まず、小口で貸していたお金の返済をAに求めても応じなかった。コチラが心配していた頃合いで、川嶋さんからプロジェクトへの協力を求められた流れです。同じくAに金を貸していた知人に川嶋さんと会った話を伝えたら、“そんな人が出てくるなら大丈夫”“どこにも逃げられない人がいるのだから、もうちょっと待ちましょう”となってしまいました」

 ところが、である。被害者男性と川嶋氏が会食した約1カ月後、東日本大震災が発生。A氏から二本松プロジェクトは頓挫したと伝えられてしまう。

 後編では、男性の主張に対するA氏や舟氏のコメントなどと併せて、金銭トラブルの内容について詳しく報じる。

「週刊新潮」2026年2月12日号 掲載