武者陵司「減税モードからステルス増税へのシフト」
●隠し切れなくなった税収増
第二に、増税とインフレにより税収が大きく上振れしている。政府は税収増を隠すかのように毎年定額減税や給付金で財政改善の実態をわかりにくくしているが、もはや隠し切れない規模に膨らんでいる。2023年度税収実績72兆円に対して2024年度は76兆円と当初予算を6兆円強上回った模様。2025年度には80兆円に達すると見られ、恒久減税の財源が十分であることは明らかであろう。
●日本の財政はどこから見ても健全
第三に、日本の財政はギリシャ以下との石破首相の発言が虚偽であることも隠せなくなっていくだろう。
財務省が示す政府総債務は1473兆円で、GDP比は237%と世界最悪だが、日本は他のどの国よりも多くの資産を持っている。外為会計による巨額の米国国債(141兆円)、巨額のGPIF運用益(246兆円)、高速道路など収益を生む固定資産(高速道路41兆円、新幹線7兆円、空港など国土省関連資産246兆円)、事業収入のある各種特殊法人への貸付等(159兆円)など、連結ベースで見れば1048兆円の資産を持っている。この資産を差し引いた連結ベースでみた政府の純債務は528兆円、対GDP比89%となり、G7の平均よりも良好である。
また、OECD(経済協力開発機構)は政府の純金融債務の対GDP比を発表しているが、日本は2020年の120%から90%へと大きく改善し、イタリアや米国より良好な数値になっている。さらにGDPに対する財政赤字比率は、2023年度は日本は2.7%と、カナダ、ドイツに次ぐ3位であったが、2024年度はカナダ、ドイツを抜いて最小赤字国になるかもしれない。
より客観的な財政健全性指標である、政府の利払い費のGDPに対する割合は日本は0.5%とG7中最低水準である。巨額の政府保有金融資産が、利息収入をもたらし、利払いコストを緩和しているのである。日本の財政はどこから見ても危機とは程遠い良好な状態にあると言える。
●石破政権は国民の批判に耐えられないだろう
このように、1)増税と高社会保険料負担により、家計だけが犠牲になってきたこと、2)税収増により家計に対する財政援助の余力が高まっていること、3)日本の財政は世界の中でも健全であること、は明らかである。
この明白な事実を否定・隠蔽する財務省、大手メディア、アカデミズムの三位一体となった世論形成の誤りは、SNSなどインターネットメディアによって暴かれていくだろう。
財務省の振り付けによって減税を否定し、高負担路線に舵を切った石破自民党政権は選挙において厳しい審判を受ける可能性が高いのではないだろうか。
(2025年6月16日記 武者リサーチ「ストラテジーブレティン380号」を転載)
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