武者陵司「減税モードからステルス増税へのシフト」
●「社会保障と税の一体改革」が国民生活を痛めてきた元凶
しかし、国民世論に逆行する高負担・財政健全化路線は壁にぶつかる可能性が強い。第一に、「社会保障と税の一体改革」が国民生活を痛めてきた元凶であることがはっきりしていることである。
「一体改革」導入前の2011年の国民負担率(国民所得に対する租税と社会保険料負担率)は38.8%であったが、2022年には48.4%と世界にも例のない10年で10ポイントの急上昇となり、家計消費を直撃したのである。家計実質消費は2014年3月の消費税増税(5→8%)直前の2014年1~3月の310兆円がピークで、その後一度もそれを上回らず、現在でも依然として10年前のピークに比べ4%減の水準で低迷している。この間、企業利益は2.4倍、株式時価総額は3.2倍、一般会計税収は1.6倍になったわけで、家計がひとり犠牲にされてきたと言える。
●隠し切れなくなった税収増
第二に、増税とインフレにより税収が大きく上振れしている。政府は税収増を隠すかのように毎年定額減税や給付金で財政改善の実態をわかりにくくしているが、もはや隠し切れない規模に膨らんでいる。2023年度税収実績72兆円に対して2024年度は76兆円と当初予算を6兆円強上回った模様。2025年度には80兆円に達すると見られ、恒久減税の財源が十分であることは明らかであろう。
●日本の財政はどこから見ても健全
第三に、日本の財政はギリシャ以下との石破首相の発言が虚偽であることも隠せなくなっていくだろう。
財務省が示す政府総債務は1473兆円で、GDP比は237%と世界最悪だが、日本は他のどの国よりも多くの資産を持っている。外為会計による巨額の米国国債(141兆円)、巨額のGPIF運用益(246兆円)、高速道路など収益を生む固定資産(高速道路41兆円、新幹線7兆円、空港など国土省関連資産246兆円)、事業収入のある各種特殊法人への貸付等(159兆円)など、連結ベースで見れば1048兆円の資産を持っている。この資産を差し引いた連結ベースでみた政府の純債務は528兆円、対GDP比89%となり、G7の平均よりも良好である。
また、OECD(経済協力開発機構)は政府の純金融債務の対GDP比を発表しているが、日本は2020年の120%から90%へと大きく改善し、イタリアや米国より良好な数値になっている。さらにGDPに対する財政赤字比率は、2023年度は日本は2.7%と、カナダ、ドイツに次ぐ3位であったが、2024年度はカナダ、ドイツを抜いて最小赤字国になるかもしれない。

