―石破政権、国民の批判に耐えられるか―

 国会会期末となり東京都議選、参議院選の争いの時期に突入したが、1カ月前には思ってもみなかった政治情勢の急変が起きている。二つの側面から事態が変化した。第一は、国民民主党の圧倒的人気が萎え、自民党の復調と内閣支持率が上昇したことである。国民民主党の人気急落は、SNS上で批判・拒否感が強かった山尾志桜里氏を公認候補に指名したことなど、オウンゴールという面が大きい。また、令和のコメ騒動が自民党に有利に作用している。登場した小泉新農相による随意契約での備蓄米放出、店頭価格の急低下が、自民党支持率の急回復に繋がった。

●減税からコメへ、政策争点のシフト

 第二のより重要な変化は、政策の争点が減税からずれてしまったことである。昨年の衆院選挙以来、国民民主党の手取りを増やす減税路線を軸に政策論争が展開されてきたが、コメの値上がりと小泉新農相による備蓄米放出で、減税に対する熱量が打ち消された。

 そればかりか、高負担路線がひそかに進行し始めている。今国会で突然成立した年金改革法は、高負担・財政健全化路線そのものと言える。具体的内容は、1)国民年金の不足(就職氷河期の人々に対する給付を保証するために)を厚生年金資金で補填、2)遺族年金の減額、3)パート労働者への厚生年金の適用(家計と企業負担増)など、負担増・給付減の法案であり、将来給付に欠損が生じた場合に消費税増税が正当化されることになる。

●進行するステルス増税、高負担路線に回帰

 また、少子化対策の一環として2026年4月からスタートする「子ども・子育て支援制度」も、保険料を引き上げるステルス増税とみられる。独身者に対する不公平感から「独身税」と俗称されている。年収に対して2028年度には平均で0.2%の社会保険負担増になるが、それは年間社会保険料の5%増額と計算されており、消費税0.8%増税に相当するとの指摘がある。

●「社会保障と税の一体改革」に政治生命かける野田党首

 このように国民世論の減税に対するこだわりが高まっているのに、増税、財政健全化路線が強まるとは驚きである。何が起きているのだろうか。キーワードは「社会保障と税の一体改革」、キーパーソンは「立憲民主党の野田党首」とみることで解釈ができるのではないか。

 「社会保障と税の一体改革とは、少子高齢化の進行とともに年金や社会保険の支出が高まる一方、働く人口は減っていく。したがって、十分な給付を続けるためには増税による財政基盤の強化が必要だ」、「景気変動に影響されない安定財源である消費税増税が不可欠(消費税の福祉目的化)」というもの。その大キャンペーンの仕掛け人が財務省、主唱者が2012年に法案を成立させた当時の野田首相、現立憲民主党党首であった。野田氏は3党合意をタテに消費税解散を遂行し(2012年)、安倍政権下での2度の消費税増税を約束させた。その野田氏が立憲民主党党首として返り咲き、石破政権と財政健全化路線で手を結び、野田氏の年金改革法に自民公明が共鳴する形で成立したというわけである。

●「社会保障と税の一体改革」が国民生活を痛めてきた元凶

 しかし、国民世論に逆行する高負担・財政健全化路線は壁にぶつかる可能性が強い。第一に、「社会保障と税の一体改革」が国民生活を痛めてきた元凶であることがはっきりしていることである。

 「一体改革」導入前の2011年の国民負担率(国民所得に対する租税と社会保険料負担率)は38.8%であったが、2022年には48.4%と世界にも例のない10年で10ポイントの急上昇となり、家計消費を直撃したのである。家計実質消費は2014年3月の消費税増税(5→8%)直前の2014年1~3月の310兆円がピークで、その後一度もそれを上回らず、現在でも依然として10年前のピークに比べ4%減の水準で低迷している。この間、企業利益は2.4倍、株式時価総額は3.2倍、一般会計税収は1.6倍になったわけで、家計がひとり犠牲にされてきたと言える。